◇◆アース歴200年 6月14日・朝◇◆
いつもの如く眠れなくて、朝早くにギルドに来ちゃった。
この時間でもグレイさんは来てるかな?
《ワイワイ、ガヤガヤ》
へぇまだ朝早いのに結構人がギルドに来てるんだ。
え~と……グレイさんは……あ、いたいた、良かった来てた。
「グレイさ~ん!」
「ん? お、コレットか。今日はえらい早くギルドに来たんだな」
そりゃ昨日の事があって、また寝付けず早朝に目が覚めちゃったからね……。
「まぁ……色々な事情がありまして……」
「色々な事情? 昨日は白竜の遺跡に行っただけだろ?」
行っただけなんだけど、それが大問題だったわけで……。
「あ~……その事情が遺跡内に詰まっているんですよ……」
それはもうたくさん、ね。
「あん? どういうことだ?」
そりゃ不思議な顔もするわよね。
探索され尽くしてるはずのそれも低級モンスターが多い遺跡なんだから。
「昨日あった事を順番に説明しますね。――まずはこれを見てください」
「白竜の遺跡の見取り図だな……ん? なんだ、この罠の前に書きまくってある落書きは?」
やっぱりグレイさんもこの文字(?)の事は知らないみたいね。
「私もこれがなんなのか分からなかったんです。この文字(?)みたいなのは罠の前には必ずありましたし、入り口にはもっと長いのが書かれてました……なので一応メモをしてきたんです」
「いや待て! 俺もかなりの数あの遺跡に潜ったがこんなものは一切なかったぞ!? あー、とは言っても最近だと一ヶ月ほど前に入ったからその間に書かれてたのか?」
「いいえ、それはないです。私はこの町に来て毎日遺跡に行ってましたけど、こんなものははありませんでした。ですから2日前に私が戻った後の夜に書かれた物としか……」
「その夜の間に書かれた文字らしきもの……何だか不気味だな……」
私なんて直に見たから余計そう思ったよ!
正直、今でもこの文字(?)を見ると寒気がするくらいなのに。
「……ん? んん~? ……あれ? これって……」
グレイさんが何かに気が付いたみたい。
「グレイさん、どうかしましたか?」
「俺この文字(?)を……何処かで見たような気がする……」
「えっ!? 本当ですか?」
だとすればすぐにこのモヤモヤな気分が晴れるかも!
「どこだったかなー……うーん……あ! そうだ! 思い出した!」
グレイさんナイス!
「そっそれは何処ですか!?」
「これは……古代文字だ」
へ? 古代文字?
「古代、文字?」
「ああ、はるか昔に使われてた文字だ。どこの遺跡で見たか思いだせんが、これによく似たのを見た気がする」
なるほど。昔使われてた文字か……それなら全然わからなかったはずだわ。
「ただ俺もこういったものはよくわからんから後でギルドに話してみよう。そういった古代文字の研究もしてるしな」
へぇ~そうなんだ。
「はい、わかりました。後はですね――」
ってこんな事言っても信じてもらえるのかな。
鱗、翼、尻尾が生えてるちっちゃい女の子の姿をしたモンスターがいた事を……。
「どうしたんだ? 話の途中でやめられるときになってしょうがねぇじゃないか」
そう言われると……。
いや言いかけたのは私だからしょうがないか。
「……信じてもらえるかわからないんですけど……」
「信じる信じないは内容によるな」
ですよね。
「えと、竜の巣の手前辺りで一部が鱗で翼と尻尾が生えてるちっちゃい女の子の姿をしたモンスターと出会ったんですが……」
「はっ?」
グレイさんが目をまんまるにしてる。
そうだよね、やっぱり信じな――。
「確認するが……全身鱗じゃなくて一部が鱗だったんだよな?」
「え? はい、そうです……が……」
「トカゲのような姿じゃなかったんだよな!?」
「あいた!?」
何!? 急にグレイさんが私の肩を掴んできたんですけど!?
「えと、トカゲじゃなかったです。ちっちゃい女の子の、人の姿をしてました……よ!?」
「それは本当か!? 本当の話なのか!?」
グレイさんの力で体を前後に振られるのはやばい!
くっ首の骨が折れる!!
「はいいいいい! 本当ですうううううけどおおおおお! だからあああああ! 体を揺らさないでええええええ!!」
死ぬ! このままじゃ死んじゃう!!
「うそだろ……まじかよおおおおおおおおおおおおお!!」
「――ど、どう……したん……ですか……? あたたた……首が……」
放してくれたと思ったら、今度は自分の頭を両手で押さえて前後左右に振り出しちゃったけど何がどうなってるの?
「あのトカゲとは?」
あ、止まった。
「トカゲのような姿ならリザードマンという中位モンスターなんだが、人の姿をしてるとなると……」
「人の姿だと問題があるんですか?」
「そいつはドラゴニュート……最上位モンスターだ……」
最上位モンスター!?
なんであんな所にそんなモンスターがいるの!?