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ケビンの書~うぬぼれ・1~

 ◇◆アース歴200年 6月13日・朝◇◆


 まさかスケルトンになって夢を見るとは……。

 ああ、コレット……とっさとはいえ突き飛ばしてしまったが怪我をしないで無事に帰れたのだろうか。


『そういえばあのナイフは……んー辺りには見当たらないな。コレットが持ち帰ったと考えても良いかな』


 だとすれば無事に帰れたんだろう、よかった。

 しかし、この罠に気が付かず安易に入ってしまうとは新米冒険者とはいえ問題だよな。

 さっきみたいに助けられる保障はないからな、常に入り口を見張ってコレットが来たと同時に後をつけて助けるのは容易だが落とし穴や爆発する罠だと助けようがない……。

 彼女も冒険者なのだから覚悟は出来ているだろうが、俺個人としてはやはり好いた女性には傷ついてほしくない。


『うーむ、どうにか出来ない物か……』


 罠の手前で声をかける? いや駄目だ、この姿じゃ勘繰られて逆効果でむしろ罠にはまる可能性が高い。

 だとすると――。


『――あ、この手があるじゃないか!』



『――これでよしっと』


 【この先、落とし穴の罠あり。壁際を歩くべし】


 我ながらいい考えを思いついたものだ。

 声をかけれないのであれば、こうやって壁にメッセージを書いて注意を促せばいい。

 ふむ、どうせなら俺の名前も刻んでおくか。


『しかし、この体で細かい作業に書く物がなかったからコレットの剣の先で壁を削って文字を書くというのはこれほど難しいものだとは』


 そのせいでだいぶかくついた文字になってるが、まぁ俺も読めるし問題はないだろう。

 後はコレットがどこを通っていくかわからないから手当たり次第書いて回るだけだな。



『――これで最後だな』


 この遺跡はそこまで罠はないからな。

 結構早く作業が終わったがどうするか、また入り口でコレットが来るのを見張るか。


『ん? 入り口……そうじゃん! 何も罠の前だけにメッセージを残すだけじゃなくてもいいじゃないか!』


 そう! それも危険を教える為だけじゃなくてもいい。

 そうとなればコレットが来る前に急いで入り口に行かないと!


 【はじめましてコレット、俺はケビン・パーカーと言います。信じられないかもしれないが、今までスケルトンで出会っていたのは俺なんだ、今まで怖い思いをさせて申し訳ない。何故このような体になってしまったのかはわからないが、決して君に害する気持ちは一切ない、俺を信じてほしい。後この先には罠がたくさんあるがその前に注意書きを書いておいた、気を付けて進んでくれ。 ケビン・パーカー】


 こんなもんかな。

 このメッセージにコレットが気が付いてくれたらいいが……そしてこのスケルトンになった話も信じてくれるといいが……。




 ◇◆アース歴200年 6月13日・昼◇◆


「よし、今日もがんばるぞ! ファイト私!」


 お、コレットの声が聞こえたぞ。

 今日はえらく声が透って聞こえたな、っとメッセージを残したとはいえ信じてくれるかわからないから隠れとかないと。


「大丈夫そう、ね」


 コレットが入って……きたああああああああああああああああああああ!?

 うおおおおおおおおおお! 装備が軽装になっててコレットの顔を最初から見ることが出来た! 何て素晴らしいいいいいいいいいい!


『ハッ』


 ――っと落ち着け、落ち着くんだケビン……。

 今はそれよりメッセージに気が付いてもらえるかどうかが重要だろ。


「え~と、まずは……」


 ん? 何か、紙みたいなのを取り出したが……あれはこの遺跡の見取り図か?

 装備の変更に見取り図、どうやらギルドか他の冒険者にアドバイスを受けたようだな。

 よかった、あのままでは危険の可能性があったからな。本来ならば俺がアドバイスをする役目のはずだったのに……。


「……ん?」


 あれ? コレットが辺りをキョロキョロと見渡し始めたけど、どうしたんだ。

 何かを探しているような感じだが、一体何を?


「う~ん――あ、この壁……」


 よし! 壁のメッセージに気が付いてくれたぞ!


「……これってもしかして……文字? なの……かな?」


 そう! 俺が書いた君へのメッセージさ!


「…………」


 すごいガン見して読んでいる。

 どうだ!? 伝わったか俺のメッセージを想いを!


「…………」


『…………』


 ……なんか考え事をしているようだがどうしたんだろう。

 あ、羽ペンを取り出して見取り図にメッセージを写し始めた。

 え? え? どう言う事?


「――これでよしっと」


『……いやいやいや! これでよしって何が!?』


 俺のメッセージを写しとって先に進み始めた……。

 あの行動は一体何だ? そういえば写す前にメッセージを見て考え事をしていたな。


『……ハッ! そうか、わかったぞ!』


 俺のメッセージを書き写してアドバイスを受けたギルドか他の冒険者に俺がスケルトンになってしまったことを伝えようとしてくれたんだ。

 何てやさしい娘なんだ、ますます惚れたぜ!

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