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コレットの書~勘違い・3~

「おーい、親父さんいるか?」


 すごい、武器防具がいっぱい並んでる。

 私の買った物とは大違い、鉄くずやゴミって言われたのがわかるわ……。


「お、グレイじゃねぇか。戻ったんだな、メンテナンスか?」


 またゴツイおじさんが出てきたんですけど!!


「ああ、今日戻ったんだ、メンテはまた後で頼む。コレット、この親父さんはこの店の主人で……」


「ブライアン・ストーンだ。よろしくな、譲ちゃん!」


「あ、私はコレットって言います」


「おう、よろしくな。で? グレイよーコレットはお前のこれか?」


 ブライアンさんが小指を上げたけど、何してるんだろう?

 なにかの合図なのかな?


「ちげぇよ、新米冒険者だ。でもただの新米じゃなけどな、コレットはホセさんの所の子供なんだ、んで冒険者になったのも俺と同じ目的だそうだ」


「ほう、コレットもケビンの奴を探してくれるのか」


「ブライアンさんもケビンさんを知っているんですか?」


「親父さんでいいよ、ここに来る奴みんなそう呼ぶからな。ケビンもこの店に来てたんだ、まったくせっかくいい青銅の鎧をこしらえてやったって言うのにその日に行方不明になりやがって……」


 親父さんの目が少し潤んでる。

 会った事はないけどケビンさんってすごくいい人だったんだろうな、グレイさんの行動や親父さんを見ればそんな気がする。


「ぼやいても仕方ないだろ? で、コレットの武具を揃えたいんだ。一応バザーで買ったのはあるがまともなのじゃないんだよ」


「なるほど、ぼられたってことか。それでどんなのがいいんだ?」


 どんなって言われても……。


「え~と……お金が厳しいので安いのがいいです……」


 お金が多少戻ってきたとはいえまだまだ厳しい……。


「あーそうか、さっき取り返したのは6万だし……それだけだと厳しいよな……」


「あう……ゴミを買ってしまった自分が情けないです……」


「ゴミ……そうだ! ――よっと、親父さん! この鎧とアーメットを溶かして素材を渡すからその分を差し引いて安くしてくれよ」


 グレイさん、さすがにそれは暴論すぎません!?


「またお前はそんな……ん? これは……チッあの元馬鹿弟子がやったのか……」


 え? 弟子?


「あのおじさんって親父さんの弟子だったんですか? というかわかるんですか!?」


「あ? それは俺も初耳だぜ?」


 親父さんとおじさん……なんというゴツイ師弟なんだろう。


「元な、元! あいつのクセを知っているからな見ればすぐわかる。後グレイも知らないで当たり前だ、裏の工房でずっと基礎練習をさせて店側に出してないから会った事はない。結局俺の扱きに耐えられなかったから逃げたんだがまったく何一つ成長してねぇな、なんだこの雑な仕事は。……はぁわかった、元とはいえ弟子のやった事だ、今回だけの特別割引だからな!」


「やったぜ、さすが親父さん! 話がわかる。さて防具は親父さんに任せるとして武器はどうするか、その腰に着けてるナイフとこん棒のどっちを使っているんだ?」


「あーナイフは兄弟達に貰った物で、こん棒は剣をとられた時に落ちてたのを拾ってスケルトンを殴り飛ばしてそのまま持ってる状態でして……ん~」


 ナイフは出切る限り使いたくないし、こん棒もこんなボロボロなのは駄目だよね。

 そうなるとやっぱり剣を買った方がいいかも。


「うん……剣にします。木刀で素振りを毎日してたんで剣の方が――って2人してどうしたんですか? 私の顔に何か付いてます?」


 2人が真顔ですごい見てくるけど、なんで?


「あーコレット、そこにある剣を使っていいからここで振ってみてくれ」


「あ、はい」


 この剣でいいかな、あっ結構重いなこれ。


「っえい! っえい! ふぅ……」


 結構疲れた……。

 あの時は鎧の重さやヘルムの視界の悪さで剣が振れてないと思ったけど剣振るだけでも結構大変だった、やっぱり木刀の素振りとは違うわね。


「「やっぱりな」」


「え゛!? なにがですか!?」


 何がやっぱりなの!?

 しかも2人口をそろえて!


「話に聞いたスケルトンの方が剣を使いこなしているみたいだな……」


「何だその話!? コレットはスケルトン以下ってか!」


 ガーン!! ス、スケルトン以下なんて……。


「どのくらい木刀で振ってたかわからんが適当に上下に振ってただけだろ? あと筋トレもしてないな」


 うっ……今の素振りだけでそこまで分かるんだ。


「なんでわかるんだって顔だな、素振りとはいえちゃんと型を付けていないと意味が無い、あと見た目通り非力だったんで剣の重さに体が持っていかれている。短剣でもいいが刃こぼれする刃物よりも、そのこん棒みたいに鈍器つまりメイスの方がいいんじゃないか?」


「メイス……ですか……」


「その方がいいかもな、コレット左の棚に置いてあるのがメイスだ。好きなのを選びな、俺はその間に防具を揃えてくる」


 選びなって……メイスって言っても結構あるんですけど。


「あの、グレイさん。どれがいいんでしょうか? 私にはさっぱりわからないです」


「んー俺もメイスは使っていないからな……モーニングスターは使うのが難しいって聞いた事があるし、柄が長いのも剣と同じで狭いところで振る場合壁や天井に当たるだろうし。ふむ、こっちのフランジメイスとかどうだ? 比較的軽いし威力もあるはずだぞ」


「フランジメイスですか……」


 へぇ~他のメイスは棒の先に鉄球が付いてるけど、これは棒の先に鉄の板が6枚、放射状に出っ張って付いてる。

 メイスって言っても色んなのがあるんだな~。


「ふん! なるほど、このこん棒より重いですけど振りやすいです! 私、これにします!」


「お、武器は決まったみたいだな。防具はこれでどうだ? 着てみな」


「あ、親父さん! ありがとうございます!」


 何だか今すごく冒険者って感じがする!

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