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コレットの書~勘違い・2~

 本当にバザーに来ちゃった。

 何か買うのかな?


「さてと。コレット、この武具一式を売りつけた奴の顔を覚えてるか?」


 あの時のおじさんの事かな?

 なんでまたそんな事を。


「あ~はい、特徴的だったんで覚えてます。……え~っと……あ! あの人です」


 あの冒険者の様なゴツイおじさんはこのザバーの中でも目立つな~。


「はぁやっぱりあいつだったか……」


 やっぱりって、グレイさんとあのおじさんと知り合いなの?


「グレイさんのお知り合いの方なんですか?」


「あーちょっとな。――おい、少しいいか?」


「へいらっしゃ……ってグ、グレイさん!? いっいつこの町に戻ってたんです!?」


 おじさんがグレイさんの顔見るなり腰抜かしちゃったけど、この2人に一体何が……。


「今日だよ。それよりお前、また新米の冒険者からぼったくったようだな」


「え? な、何の事ですかね? お、俺にはさっぱりわかりませんよ! ハッハッハッハッハ!」


 おじさんの目がものすごい勢いで泳いでる……。


「はぁ……よいしょっと。――これは譲ちゃんがお前から買った防具一式だ、見覚えあるよな?」


 あ、おじさんが目を思いっきり逸らした。


「な、なにを言っているんですか? 俺は知りませんよ! そのお嬢さんの間違い、そう! 人間違いですよ! 困るなー本当!」


 は!? 何言ってるのこの親父は!


「たった二日でおじさんの顔を間違えろって言うのが無理ですよ!」


「ハハハハ! そりゃ言えてる。それにな、こんな雑なやり方はお前くらいしかいないんだよ。まったく1ゴールドもならねぇ鉄くずを新米に15万ゴールドで売りやがって」


 え!? 鉄くず!?

 この15万ゴールドもした鎧が!?


「なっ!? 待って下さいよ! ひどいですよ、鉄くずって――あっ!」


 おじさんがしまったって顔して手を口を押さえたけどもう遅いって……。

 いやいやいや、それより鉄くずってどいう事なの!?


「やっと認めたな、まぁそれはもういい。しかしだな、ただでさえ視界が悪いアーメットの視界をさらに狭くしたあげく、鎧の方も余計なツギハギのせいで重くなっている始末。こんな物まだゴミと言わないだけマシと思え、まったく」


 え!? ゴミ!?

 ゴミに15万ゴールドも……嘘でしょ……。


「いやいやいや、待って下さいよ! ちゃんと修理しての代金なんですよ、それに剣も他のオマケも付けまして……」


「修理の代金だ!? これの! どこが! ちゃんとした! 修理なんだよ! たとえ剣がまともな物だとしてもこんな物を売りつけるのはおかしいだろうが! らちがあかん、ちょっとこい!」


「ちょっグレイさん!? 放して下さいよ! どっどこに連れて行くんですか!?」


 すごい、あんなガタイのいいおじさんを簡単に持ち上げて路地裏に連れて行っちゃった……。



 あれから10分くらい経つけどどうなっちゃったんだろ。


「――たく、一度ギルドにあいつの事を言った方がいいかもしれんな……」


 あ、グレイさんが戻ってきた。

 でもあのおじさんはいないようだけど、どうなっちゃったんだろ。


「ほらよ、コレット」


「え? わっとと……」


 袋を投げ渡されたけど、なんだろ?


「なんですかこれ……ってえ!? お金じゃないですか!」


 それも結構な額あるみたいだし!


「ああ、それはお前の金だ。本当は全額取り返そうとしたんだがな……使い込んでたらしくて残ってたのはその6万ゴールドだけだった」


 6万ゴールドも!


「いいえ! これだけでもありがたいです! ありがとうございます! ……あの一つ聞いてもいいですか?」


「ん? なんだ?」


「グレイさんもあのおじさんの事を知っていたみたいですけど、どうしてなんですか?」


「ああ、その事か。俺はギルドの自警団にも入っているんだ、このバザーも見回っているんだが……これほど広くて人が多いとどうしてもその目を掻い潜って新米の冒険者をカモにする馬鹿が出て来るんだよ。あいつもその馬鹿のその一人で何回も注意してるんだがな……」


 なるほど、それであのおじさんの顔を知っているわけだ。

 でも怖いな~もうバザーで買い物なんてできないよ。


「ん? もうここに買い物なんて来たくないって面してるな」


「あ、え~と……はい……」


 またゴミを売りつけられるなんてごめんだよ!


「まぁそうだわな……よし、コレット。まだ時間はあるか?」


「はい、私は別に時間に問題はないですから」


 むしろギルドでやり取りしないといけないグレイさんの方が時間を考えないといけないような。


「そうか、じゃあもうちょっと俺に付き合ってくれ」


「あ、はい。わかりました」


 今度はどこに行くんだろう?



 バザーの賑わいから一転、薄暗い路地裏に来たけど……。

 薄暗い路地裏……路地裏? え? もしかして私ピンチなんじゃ!?


「あああああの! ここここんなとこで何を――」


「さぁ着いたぞ」


 着いた?

 ってここ鍛冶屋さん?


「あの、ここって……」


「俺の行きつけの鍛冶屋だ。武器防具両方取り扱ってるし、これから装備を買うならここにするといい」


 行きつけのお店に連れて来てくれたんだ……変にグレイさんを疑っちゃった、なんか悪い事しちゃったな。


「ん? どうした? 入るぞ」


「あ……はい」


 お金も取り返してもらっちゃってるのに疑うなんて私の馬鹿!

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