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コレットの書~遭遇・3~

 ◇◆アース歴200年 6月11日・夕◇◆


《ゼ~ハ~ゼ~ハ~……やっやっと、着いた……白竜の遺跡……》


 勢いでこの装備のまま白竜の遺跡まで来ちゃったけど。

 このアーメットって視界が悪いし、この鉄の鎧は重いしでここまで来るのだけですごい疲れた……。


《ふぅ……少し休んだから白竜の遺跡の探索を始めないとね》


 ただこの鎧を着たままでの探索は駄目な気がする。


《でもな~この装備は15万ゴールドで買っちゃったから使っていかないと勿体無いよね》


 ……ぼやいててもしかたないか、買っちゃったもんはしょうがないし。

 さて、あと数刻もすれば夜になっちゃうから白竜の遺跡の中に行きますか。


《よし! もう一息がんばるぞ~! ファイト私!》



《きゃっ! ――うぎゃっ!》


 いたた……また床の出っ張りで転んじゃった。

 外では道が手入れされてて転ぶ事はなったけど、遺跡の中だと視界の悪さで床の状態がわからないよ……。

 遺跡内にほんのりと光を出すヒカリゴケがあちこちに生えていて、タイマツみたいな明かりがいらなかった事が唯一の救いだよ。


《このヒカリゴケがなかったら今頃タイマツを取りに歩いて町に戻ってた頃だわ、それを考えると……まさに地獄……》


 あの後、自分でも転送石は絶対必要なのがわかったから道具屋で値段を確認したら高くも安くもない1000ゴールド、だからといって消耗品だから安易に使えない。

 自分でもケチくさいと思うけど、今の私の全財産は残り5万ゴールド……少しでも節約していかないとリリクスで滞在していくのは難しい――。


 ――ドンッ


《――きゃっ! ごっごめんなさい》


 誰かとぶつかっちゃった、遺跡に入ってた人かな?


《視界が悪い上、考え事をして……まし……て?》


『……アウ』


 確かに人の形はしているけど【人】じゃない、これは……。


《ゾゾゾゾゾンビ!?》


 なんでこんな所にゾンビが……ってそうだよ、受付嬢さんが遺跡にはゾンビとかスケルトンとかモンスターがいるって話してたじゃん! いるのは当たり前!

 とっとにかく戦わなくちゃ、剣! 剣!


《くっ来るなら来い!》


 でもできる限り襲ってこないでほしいな、あの手に持ってるこん棒で叩かれたら痛そうだし……。


『……アア!』


 そうだよね、そりゃ襲ってくるよね……。

 だったら覚悟を決めるしかない、これでも教会にいた時は毎日素振りをして稽古してたんだから。

 食らえ! 私の渾身の一撃を!


《ええいっ! ――え?》


 あれ? ゾンビが視界から消えた?


 ――キンッ


《あだっ!?》


 ゾンビを斬れずに床を叩いちゃったみたい。

 う~その衝撃で手が痺れる。


『……アア』


 アーメットの視界の悪さがここにも影響しちゃうなんて……。



《ハァ……ハァ……くっ》


 アーメットもだけど鎧も重くてまともに動けない……。

 失敗だ、この装備は間違いなく失敗だ!


『……アア……』


 けど、こんな所でやられるわけはいかないの!


《このっ!》


 ――キンッ


《つ~!》


 また床を叩いちゃった……。


『……ア……ウ』


 これじゃこのゾンビを倒せないよ。

 一体どうし――。


『…………ガッ!』


 ゾンビがこん棒を振りかぶった!

 っまずい! 避け……たいけど鎧の重さと疲れで体が動かない!


 ――ゴッ!


「キャッ!! いった~……」


 やっぱりこん棒に当たると痛かった……その勢いでアーメットも外れちゃったし。


『ガア!』


 あ、ゾンビがまたこん棒を振り上げる。

 あのまま振り下ろされたら、私の頭なんて……。


「――ッ!」


 神父様、シスター、みんな……ごめんなさい、私はここまでのようです。


『カタカタカタ!! ――カタッ!』


 え? ゾンビが何かに吹っ飛ばされた?


『……ガア!?』


 あれは……スケルトン? なんでスケルトンがゾンビを攻撃したんだろう。

 ちょっ、スケルトンが私の剣を拾っちゃった!


『カタカタカタカタ! ――カタ!』


 え? スケルトンって剣で突くって行動が出来るの?


『グッ!』


 ゾンビが怯んだけどあれじゃ倒せそうにも――。


『カタカタ!』


『グガアアアアアッ』


 うそ!? ゾンビが真っ二つに斬り倒された!

 ……もしかしてこのスケルトン、私を助け――。


『カタン、カタカタ!』


 ――違う、私を見ながらカタカタと歯を鳴らして狙ってる。

 たまたま先にゾンビを狙っただけで私も襲う気なんだ、結局さっきと状況が変わってない。

 どうしよう、剣はあのスケルトンに取られちゃったし……あっそうだ、ゾンビが持っていたこん棒が――あった!


『……カタ、カタカタカタカタ? カタカタカタ』


 まだ死ぬわけにはいかないの! だからこっちに――。


「こないでええええええええええええええええ!」


『カタ? ――ガッ!!』


 よし! 骨だから簡単に吹っ飛ばせた!

 バラバラに分解したし、さすがにもう襲ってくる事はないよね。


「はぁ……はぁ……早く町に帰ろう……おっと、アーメットと剣を忘れるとこだった……」


 って剣の方はスケルトンの手にガッチリ掴まれてて取れない! こんな骨の手が付いた剣を持って帰りたくないし……しょうがない剣は諦めるしかないか。うう、勿体無いな~。


「――転送石起動!」




 ◇◆アース歴200年 6月11日・夜◇◆


「あ~帰ってきた~! 生きてるって素晴らしい!」


 あ、こん棒を持ったままだった、とっさとはいえ使える武器だなこれ。

 そういえば武器といえばあの子達にもらったナイフがあったんだった、まぁスケルトン相手にナイフはあまり効果はない……けど……って……あれ?


「ない!? ベルトに挟んであったのに!」


 やっぱりどこにもない! もしかして落としちゃった!?

 考えられるのはゾンビに殴り飛ばされたあの時しか……。


「…………うそでしょ」


 馬鹿、馬鹿、大事なナイフを落とすなんて! 私って本当に大馬鹿!!

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