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ケビンの書~出会い・3~

 はぁ……迂闊だった、外に出れば何とかなると思ってたが出れないんじゃ意味がない。

 どうしたものか……また脆い壁を崩すか? いやそれは無理そうだ、俺が落ちていた部屋の壁と違ってこの辺りの壁は明らかに頑丈に作られてる。

 仕方ないあの大きい縦穴まで戻るか? あの時は進めなかったが今なら進めるかもしれんし――。


 ――キンッ


『ん? 何か音がしたような……』


 ――キンッ


 やっぱりした、これは金属音?

 何だろう。ふむ……気になるし行ってみるか。



 やっぱりいた。


『……アア……』


 こん棒を持ったゾンビと……。


《ハァ……ハァ……くっ》


 戦ってるのはアーメットに鉄の鎧とえらくフル装備の騎士、いやプレートが見えるから冒険者か。

 あれ? そういえばここまで来るまで一人も冒険者と出会ってなかったな、どうしてなんだろう?


《このっ!》


 ――キンッ


《つ~!》


『……ア……ウ』


 あーあれは駄目だ、アーメットで視界が悪い上に明らかに鉄の鎧の重みで剣がまともに振れていない、そのせいで床に剣を打ち付けてる……そりゃ手が痛いわな。

 ふむ、プレートを見たところ一つ星の新米か……通りで戦い慣れてない訳だ。


『しょうがない、先輩冒険者として俺が助太刀をする……か……』


 ――ってちょっと待てよ、よく考えたらこの姿で出て行ったらあのゾンビの仲間と思われるんじゃないか?

 そうだよ! 物凄い危ない事を俺はしかけていた事に今気が付いた! もしあの時、外に出ていたら今頃は憲兵か冒険者に討伐されていた可能性があったじゃないか!!

 ……おお、怖……あの結界のおかげで助かった……。


『そう考えると助けるのはリスクが高いな……』


 申し訳ないが助ける事はできない、何とか自力でがんばってもらうしかない。

 まぁあの装備だから一つ星の新米でもそう簡単にやられは――。


『…………ガッ!』


「キャッ!!」


 って簡単に吹っ飛ばされてるじゃないか!

 あーあ、アーメットも外れてちゃって。


「いった~……」


 外れたアーメットの中からピンク色の長い髪が出てきた、頭の上には二本のくせっ毛が触覚みたいに生えている。


『あの新米は女だったの……かっ!!』


 ――っ!? なっなんだ! 今全身に雷魔法を食らったかのように電流が流れて……え? ないはずの心臓がドキドキしてる……これはもしかして――。


『ガア!』


 まずい! ゾンビがこん棒を振り上げてる!

 あの体勢だと彼女の可愛い顔に傷が付いてしまう!


「――ッ!」


『危ない!! ――とうっ!』


『ウガア!?』


 ゾンビに渾身の蹴りを食らわせてやったがどうだ?


『……ガア!』


 うーん、やはり骨だけの蹴りでは腐ってても肉がある分威力がなくて倒せないか……打撃が無理となると。

 お? 足元に剣が落ちてる、この娘が持っていた剣か。


『この剣借りるぞ! ――おりゃ!』


『グッ!』


 突きがきいて怯んだ。

 このまま一気に斬り倒す!


『トドメだ! オリャアアアアアア!』


『グガアアアアアッ』


 ふぅ、自分で言うのもなんだが綺麗に真っ二つに斬り倒せたな。

 さてと後は倒れてる彼女に手を伸ばして一言かければ……。


『ゴホン、ううん! アーアー』


 よし、喉の調子もいいぞ。


『……君、大丈夫だったかい? 間一髪だったな』


 フッ、かっこよく決まっ――。 


「こないでええええええええええええええええ!」


『え? ――ブッ!!』


 え? え? 彼女に何かで殴られたぞ。

 手に持っているのは……あのゾンビが持っていたこん棒か?

 どうして俺があれで殴られないといけないんだ? ……俺の体がバラバラになって宙を舞っている……。 

 ……意識が飛ぶ……目の前が……真っ暗に……。



『……う、うーん』


 ……あれ? 俺は何を……そうだ、俺はあの娘にこん棒で殴られてバラバラになって……でも手がくっ付いてる、足もくっ付いてる、全身が元に戻ってる。


『……どうしてだ? ……殴られたのは気のせいだったのか? それとも夢を見ていた……?』


『……アア……』


『ん? うおっさっきのゾンビがもがいてる!』


 真っ二つになってるからさっき俺が斬った奴だな、まだ生きてたとは。いやゾンビだから生きてるというのはおかしいか。

 しかし往生際が悪いな、もがいたとこでどうしようもないのに……いや、違う、もがいてるんじゃなくて斬った部分が吸い寄せられてもがいてる様に見えたんだ。

 ……嘘だろ、斬った部分が繋がってまた動き出したぞ。


『何だったんだ今の……』


 ゾンビのくせに再生したと言う事か? ……もしかして俺もあいつ同様に再生をした?

 そういえば前々から遺跡内のモンスターって倒しても倒しても減らずどこから沸いているんだとは思っていたが、そうかこうやって再生してたのか……通りで減らない訳だ。

 しかし外のモンスターは普通に倒されるよな、という事は白の遺跡の魔力か何かの力が動いているのだろうか。


『ハッ! そういえばあの娘は!? ……辺りにはいないな。脱出したのか?』


 ――ん? あそこに何か落ちてる、これはナイフだな、あの娘が落としたのか?

 柄の部分に文字が彫ってある。


『えーと、コ・レ・ッ・ト』


 これは名前だな……そうか、あの娘の名前だ。

 ……コレット……いい名前だ……そして、ぱっちりした大きな目に丸顔ですごく可愛い……まさに俺好みでドストライク!

 ……俺は……あの娘に……コレットに――。


『ああ……また来ないかな……コレット……君に会いたい……』


 一目ぼれをしてしまった!!

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