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遠征の壱


「んじゃ、僕は午後にもう1つ講義受けるから。光君、また後でね!」

「うん、それじゃ!」


 勇殿との昼食を終え、こんな会話を済ませつつ勇殿と別れたわしは、大学の敷地の外へと向かう。

 これから日本の政治の中枢ともいえる内閣官邸の総理大臣執務室へと向かうことになっておるのじゃ。

 というか信長様から政権を受け継いた前田利家殿から、官邸への招集を受けておるのじゃ。


 まぁ、内閣総理大臣からの招集と言えば聞こえはいいが、

「三成ぃ……ちょっと手伝ってくれぇ……来年度の予算作成がぁぁあぁぁ……上手くできねぇんだよぅ……」

 という情けない声色の電話が2日ほど前にあったから、それを手伝いに行くだけなんだけどな。


 とはいえそこまで疲弊しきった利家殿も、わしの迎えの手配は完璧。

 というか大学から首相官邸までの移動はなぜか頼光殿の車によるものであった。


「お久しぶりです、三成様?」

「おぉ、迎えって頼光殿だったのか? っていうかわざわざ頼光殿自ら? 忙しいじゃろうに。しかも警護もつけずに?」

「えぇ。ちょこっと外回りしたかったのでお迎えに。でも別に警護はいらないかと。特に我々2人なら……?」


 そう。あの頃よりさらに武威や法威の技術を向上させたわしと、そもそも伝説級の強さを持つ源頼光殿。

 わしら2人をどうにかしようとする輩がいたとしても、そう簡単に手出しできないコンビが今のわしらじゃ。


「そうじゃな。それでは世話になる」

「えぇ、どうぞ車に」


 なので、わしは慣れた動きで頼光殿の手招きする車の助手席へと座る。

 すぐさま車が動き出し、頼光殿が話しかけてきた。



「お久しぶりですね。2週間ぶり……ぐらいですか?」

「そうじゃな。前の訓練がそれぐらいだったはず。それにしても各々忙しくなって、なかなか訓練が……」

「ふふふ。それは仕方ありません。三成様は今をときめく大学生。それこそ訓練は抑えめにするぐらいがちょうどいいのでは?

 代わりに勉学に励んでもらわないと! それが学生の本分ですからね」

「ふむ。今日も午前に政治系の講義を受けてきた。改めて学ぶと実感するわ。この時代の政治や経済がなかなかに複雑で……」

「まぁ、そうでしょうね。私はすでに出来上がった警察関係の法律しか把握しておりませんが、政治や法律そのものを造り、運用するのが政治家というもの。なのでそういうのは避けて通れないかと。しかもこの時代の法律や行政の仕組みはつぎはぎにつぎはぎを重ねて、もはや解読不能な暗号文のように……」

「ふっ。そうじゃな。でも学生のうちはそれを改善することができん。前・後期の期末試験の時に、事前にそれらを必死に覚えるだけじゃ」

「でもこれからそれを改善しに行くのでは?」

「いや、今日は違うな。予算の方をちょっといじる感じじゃ」

「ふっふっふ。それはそれは……私はそういう計算が苦手でして」

「わしは得意だからな。利家殿にも恩があるし、そこらへんは前向きに協力したいんじゃ」

「相変わらず義理堅い。ではがんばってください」

「うむ、がんばろうと思う。利家殿の……予算の作成具合によるけど……」


 などなど、久しぶりに頼光殿に会ったので車内であれこれ会話をしつつ、かつ移動先である首相官邸では綱殿たちにも会えるっぽいので、それぞれの修行の進捗具合など聞こうとか思っておったら、車はすぐに首相官邸へと到着した。

 いくつかのセキュリティを頼光殿の顔パスで通過し、テレビの政治系ニュースなどでよく見るあの建築物へと侵入する。

 この建物は信長様が総理大臣だったころから幾度となく訪れていたので、特に緊張することもない。

 唯一わしは一応この建物に侵入するためのIDカードを持っておるし、それを今も首から下げておるのじゃが、誰もそれを確認せずに頼光殿の顔パスのみで――いや、たまに警備の兵がわしにもにこやかな顔であいさつなどしてくるので、わしも顔パスで警備を潜り抜けてしまうのが若干不安じゃ。


 とはいえここは警視庁の警備課の精鋭が守りを固める城じゃ。

 武威センサーを広げれば、そこら中から頼光殿に匹敵する程の激しい武威と、それを完璧に制御しておる法威の気配が感じ取れるので、警備の強固さはこの国のトップレベルのそれとなる。


 でも今日は昔から利家殿と懇意の関係にあるわしの来訪ということで、やはり警備の警戒心はわしには向けられておらん。

 わしも特に警戒などせず、いつものようにすたすたと利家殿の執務室へと向かった。


「では、私はひとまずここで」

「うむ。ここまでありがとう。また近いうちに訓練しようぞ」

「あっ、いえ。この会合が終わったら三成様をサッカーの壮行会会場へとお送りしますけど?」

「え? そうなのか? それは……助かるけど、頼光殿? 本当にそっちのスケジュール大丈夫か? わしの運転手などしてる立場でもなかろうに?」

「いえ。今日は綱もここの警備担当でして。今はこの建物のどこかにいますけど、後で2人で三成様を護送しようかと」


 “護送”って言うなや。

 でもまぁ、頼光殿がそう言ってくれるならば、それに甘える他ない。

 なーんかこう、なんというか……変な違和感がわしの脳裏に生まれ始めたけど、まぁ気のせいじゃろう。


「ならそのようにお願いいたす。わしも綱殿に会っておきたいしな」

「えぇ、総理を待たせてもアレですので、これにて」

「うむ。ではでは……」


 こんな感じで頼光殿と別れ、わしは内閣総理大臣執務室のドアを開ける。

 予想通り、そこには机にうなだれて生気を失っている感じの利家殿がいた。


「三成ぃ……よく来てくれたぁ……助かるぅ……これで……これで……」


 なんという情けない姿じゃ。とてもじゃないが、これが豊臣政権の五大老に名を連ねたあの利家殿とは――いや、まだあの頃の記憶は戻っていないか。

 それにしても利家殿を始めとして、この部屋には他にも数人の閣僚や事務方の職員殿がおられるが、全員がこんな感じなのが酷い。


 ちなみにそれらのスタッフは利家殿の前世の家臣や、本能寺の変の後に各勢力に別れた旧織田家家臣団の若手たちから構成されておる。つまり彼らもそれなりに頭の切れる人物たちじゃ。

 とくに柴田の親父殿の家臣や丹羽殿の家臣、そして佐々殿の家臣だった者たちなどが現政権の要職に採用されているのが非常に興味深い。

 あと、わしの勢力――と言ってもいいのかわからんけど、上杉や武田、後北条などの戦国勢力。そして源平や西国勢力からも人材を登用されておる。

 もうさ。そこまで陣容を整えたなら、内閣総理大臣たる利家殿はずしっと構えて、下から上がってくる書類にサインするだけでいいと思うんじゃ。


 だけどそれを許せないのが利家殿という人物の性格なのじゃろうな。

 細かいところまで自分の目で確かめ、納得のいく予算案を作る。それが利家殿のあるべき総理大臣像なのじゃろう。

 それゆえのこの状況。切れ者ぞろいの部下たちも、なかなかに疲労困憊じゃ。


「はい。お久しぶりですじゃ。それにしても……なんという」


 なのでわしはそこら辺については言及せず、唯一、軽く挨拶をこなしながらも部屋のカーテンをシャーって勢いよく開けた。


「うぅ、まぶしい……」

「まぶしい……じゃなくて! なんですか、このどんよりとした空気は!? カーテンも閉めて、明かりも薄暗い!

 こんな空気じゃまともに仕事ができるわけないでしょう!?」

「うぅ、すまねぇ……」


 あっ、だめだこりゃ。もうこの部屋におる全員が精神に異常をきたし、多分今が昼か夜かもわかっておらん。


「まぁ、よいです。それで……予算案の作成と聞いてきたのですが、利家殿? この時期に予算案?」

「あぁ、正確には今年度の補正予算の作成な。んでもって来年度の予算。

 補正予算の方はだいぶ片付いたんだけど、その後の来年度予算が……つながりが上手くいかねぇんだ……」

「ほう。補正予算から来年度へのつながり……それはなかなか……」


 ちなみにこんな会話をしている間も利家殿は机にうなだれたまま。どんだけ疲れてんねん、と。

 あと、どうやら国家予算の作成というのは単年度ごとに考えるのではなく、補正予算と重ねて数年単位で連続した予算計画を作るのがいいらしい。

 まぁ、これまでの歴代総理大臣と閣僚がどのようにその点を考えておったのかはわからんが、少なくとも利家殿の考えはそういうものなのじゃろう。


 んで問題はわしが呼ばれた理由じゃ。


「そこにいろいろと書類がある。三成ぃ……それちょっと確認してくれぇ。あっ、何か飲み物いるか?」

「んじゃ、コーヒーをお願いしますじゃ」

「りょうかーい。おい、誰か三成にコーヒーを!」

「はっ!」


 ちなみに本来の利家殿はいろいろと気が利くタイプなので、わしの飲み物などの準備は即座にしてくれる。

 あと利家殿が指さした席には、座り心地のよさそうなワークチェア。そして机の上にはわしが確認しやすいようにと書類の類が綺麗に用意されておった。


 こういうところは本当に目下のものに対する配慮が素晴らしい方じゃ。

 素晴らしい方なんだけど……


「利家殿ぉ! なんじゃこの予算は!?」

「えっ? えっ!? どどど、どうした? 三成?」

「どうもこうもありませぬ。 いきなり来年度の予算が40パーセントの減額!? しかも国債発行も半分以下ッ!? マジでこれを議会に通すつもりですか!?」

「えっ? いや、そのつもりだが?」

「無理でしょう! なんでこんな……削減案にも限度ってものがァ!」

「え? え? え? だって国の借金がこれ以上増えるの嫌じゃんよ。ここは一度国の行政サービスを縮小し……」

「それにしても各所の予算をバッサバサ切りすぎですじゃ! 必要不必要を吟味して不必要なところは徐々に予算を縮小して!」

「いや、でもさ。いらないところはいらないじゃん」

「そそそ、そりゃそうですけども! 部署ごと一気に廃止するなど!」


 もうここからはお互いの政治信条に関するバトルな。

 利家殿はずっと机にうなだれたままなので、激しい口調で攻めるわしとしては、暖簾(のれん)を一生懸命ぶん殴っているような無意味感にもとらわれたけど。


 いや、利家殿のいう予算の削減案もわかるっちゃわかる。

 この国の行政は肥大しすぎてそれにかかる費用が増大。結果、国民が重税で苦しんでおる。

 だけど……削減にも限度ってものがあって、それは行政サービスの縮小とそれによる国民への影響を――そういうのを上手くバランスを取りながらじゃな!


「ちっ、わかりもうした。わしが少し手を加えて……」

「いや、でも三成ぃ? 予算を増やすと国民が……」

「それはわかっております。でもこの国も業績を著しく伸ばしている分野もあります。そこから少し力を貸してもらう感じで」

「それはもしや?」

「えぇ、相甲駿の三国同盟。源平同盟。わしが繋げてきたこれらの同盟に加え、その他大小さまざまな経済同盟にも声をかけて、少しばかり税収を上げさてもらえれば!」

「おぉッ! さすが三成だな!」


 そして突如として息を吹き返す利家殿。顔はげっそりしてるけど、やっと顔を上げてわしを見てきた。

 あっ、てゆうか今気づいた。

 わしが呼ばれた理由。もしかしてこれか?


 でも、うーん。この国の民が豊かに暮らす。

 これについては妥協はできん。さすれば……


「信長様ががんばって国産兵器の開発と海外への輸出事業に尽力なされてきました。

 あのアメリカとバッチバチに議論するぐらいに。

 でもそのおかげでそっちの分野の貿易は結構な黒字になっております」

「くっ、この国を武器商人のような戦争国家に……!」

「いえ、何もこの国が戦争をするわけじゃないので、それは絶対に守るべき一線として堅持していただければ」

「うーむ、そういうものかぁ……」

「そうですじゃ。ではそのようにすこし補正予算の方をいじくりますぞ?」

「おーぅ、頼むぅ……」


 まぁ、このやり取りは平和主義者が聞いたら発狂しそうだし、実際に政界ではそういう動きもあるけども、わしら戦国時代の申し子だもん。仕方あるまいて。

 武器商人改め、死の商人……いや、『死の国家』とでも言おうか。大いに結構じゃ。


 しかし、30分ほど周囲の職員さんとあれやこれやと数字をいじくっておったら、利家殿が無事に復活した。


「ふーぅ。やっと頭がすっきりしてきた。おぅ、三成! 来てくれてありがとうな!」


 なんで今になって、そんな挨拶すんのじゃ!? それほどまでに追い詰められておったのか?

 なんかさっきまでの利家殿が別人過ぎて、わし別の人格と話しておったと錯覚するぐらいの変わりようじゃ! 怖いわ!


「いえいえ。この国のためならば」


 だけど強く言えないわし! もちろん前世における利家殿はわしにとって目上であり、受けた恩も決して小さくはないからな。

 とはいえ予算の作成は別の話。

 と思って地道に2時間ほど作業をしていたら、休憩がてら窓の外を眺めておった利家殿が口を開いた。


「イメージ的にはお前が保守派で、俺が革新派。そういう議論を予想してたんだが、ただの予算作成作業の場になっている。

 どうだ? ここで1つ、三成なりの保守的な意見などくれないか? たとえば……2度目の大東亜戦争など……?」


 なんでやねん! 絶対にやばいじゃろ! 総理大臣がそんな発言すんなや!

 あと、それは保守的な意見か!?

 戦後の政治的価値観と戦前のそれが逆で、それを分ける保守派と革新派の概念がごっちゃになってて、最近はそんな戦後の価値観からの脱却も試みる思想が生まれ始めているから、もうどっちが保守派でどっちが革新派なのかわからんのじゃ!


「そういうのはやめましょうぞ。いや、それは今後二度と口に出さないでください。マジでお願いですじゃ」


 ここはできるだけ迫力を込めて。

 武威も放出し、声変わりの終えたわしの低い声でちゃんと威嚇しておいた。


「うーむ。そうかぁ。

 この世界はいつも戦争。紛争や内戦など、戦の流血は今もそこら中に起きている。

 これはいつの時代も変わらない。人間のサガとも言えよう」

「そうですじゃ。でもわしらは少なくともこの国の民が平和に暮らせるように。

 それが最低限の役割であり、最重要項目でもありまする。今のわしらにできるのはあくまでそれだけ」

「そうだなぁ。信長様が言っておられた。

 右も左も、その他の細かい政治思想なども関係ない。この国を愛する民を守り、この国の民を苦しめようとする勢力は断固として排除すればいいだけ。

 根本はそこなのかもしれんなぁ……」

「そうですね。信長様らしい迷いを捨てたシンプルなお考えで。わしらも迷ったらそのように物事を考えましょうぞ」

「そうだな」


 そしてわしもワークチェアに座ったまま窓の外を眺める。

 周りにいた閣僚やスタッフさんたちも同時に外を眺め、全員が少しだけ感傷に浸った。


 だけどこの国の明るい未来を全員で願う素敵な時間は一瞬じゃった。

 その他にいくつかの話し合いを行ったんだけど、わしの意見は復活した利家殿にバッサバッサと却下された。


 特に地方創生と消滅可能性都市の話では、田舎のじっちゃんばっちゃんの生活品質の向上を図るため、交通網の充実と自動運転の規制緩和を打診しつつ、ついでに――いや、本当はこっちが狙いだったのじゃが、タイヤにやさしい新種のアスファルトをこの国の道路という道路に敷き詰めまくる政策を強く推したんだけど、やっぱりダメじゃった。


「油断するとすぐその話にするな、お前は……」


 てゆーか利家殿はわしがタイヤマニアだと知っておるので、わしがそういう話をしようとすると警戒心を強めるんじゃ。

 こんちくしょう。

 やはりわしが将来利家殿のいるその立場に立ち、この政策を強引に進めるしかあるまい。


「ちっ……」


 わしが短く舌打ちし、それを笑いながらも利家殿が他の分野について話題を変える。

 特にIT関係の話など――なんでも父上の会社がAI技術やそのサービスを駆使して、やばいぐらいに発展しておる。

 それは総理大臣たる利家殿の耳にも届き始め、というか父上が何やら政界に手を伸ばそうとしているらしい。

 利家殿からすれば、その勢いが若干怖いとのことじゃ。


「お前の父親、転生者の可能性は?」


 利家殿がそう問うて来たけど、父上はわしの武威センサーには引っかからないし、そもそも父上はわしの父上なので、悪く言うことなどできようもない。


「いえ、まったく……」

「そうか」

「えぇ。でもこの国は資源に乏しい。逆にそういう技術に富んだ企業が発展すれば、それはそれで国としても喜ばしいこと。

 何かあったらわしの方から連絡いたしますゆえ、ご安心を」

「うむ。頼む」


 などと会話をしつつ、そろそろ時間が来たという事でわしは部屋を後にすることにした。

 補正予算と来年度の予算についてはだいぶ修正できたし、後はここにおる閣僚殿やスタッフさんたちが上手くまとめてくれるはず。

 それにわしは夕方から別の予定が入っておるので、長居できないのじゃ。


「ふーぅ。では予算の編成はこれぐらいで。後は任せます」

「おぉ、ありがとうな。どうだ? この後、少し飲んでいくか? お前、20になったんだろ?」

「いえ、申し訳ありませぬ。これからさらにほかの予定が……我が友人たちがサッカーのU-22に選ばれておりまして、オリンピックの予選のために中東に行くのです。その壮行会パーティーに顔を出さなくては」

「そうか。それじゃ仕方ない」

「えぇ、かたじけない」


 そしてわしは軽く背伸びをした後、執務室の出入り口で一度振り返り、利家殿に頭を下げる。

 利家殿も軽く手を上げ、わしは執務室を後にした。


 と思ったんだけどさ!


「あっ、三成?」

「はい?」

「早くこっちにこい。政治の世界に」

「いえ、まだ大学生でして。というか、まだ被選挙権を持っておりませんので」

「いや、閣僚や我が党の事務次官など、若くてもつける役職はいくらでもある。もう今からでもどうだ? アルバイト感覚でもかまわないが?」

「いえいえ、まずは大学にて勉学に励まないと。今、現代の政治と経済についていろはから学んでおる立場ゆえ」

「お前なら大丈夫だって。今すぐにでも我が党の戦力になれる。むしろ中枢に入ってもらって……」

「いえいえ……」

「まぁまぁ、そういわずに……アルバイトと言っても、報酬ははずむから! 官房機密費をなめるなよ」

「いえいえ……お金も大丈夫ですので……」

「じゃあ、次世代を担う若手政治家として党の顔になったり?」

「いやいや……それも結構ですので……」

「じゃあ、やっぱいっそのこと財務大臣になっちゃうか? または総務大臣でも? 防衛大臣や外務大臣もいいぞ?」

「突発過ぎます! 他の党所属議員の顔も立ててあげてください!」

「でも……それじゃあ……」


 しつこいな、おい!


 その後、30分ぐらいねちねちと勧誘を受けることになったけどそれも何とか断り続け、わしは官邸の総理大臣執務室を後にした。



 あっ。プロ野球のスカウトの件を利家殿にお願いするの忘れたわ。

 でもいいや。なんかもう、この執務室にもう一回入るのは嫌じゃ。

 NPBへの圧力は弁護士たる三原にでもお願いしておこうぞ。



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