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決戦の後


 5年後。都内某所。


「お前様ァ! 起きてー! 朝だよーう。起きる時間だよーう」


 キッチンという昔の土間のような部屋から妻の声が聞こえ、わしは眠い眼をこすりながら体を起こした。


「早く起き……あ、起きた?」

「華ちゃん……おはよう……」

「また寝ぼけてる。2人の時は“うた”でしょ?」

「はッ!」

「いいから早く朝ご飯食べて」



 この体に生まれ出でて早20年。

 わしはこの時代に相応な言葉使いになるよう、日々気をつけておる。


 とはいうものの、寝起きの時はどうも気が緩みがちじゃ。

 特に5年前のあの戦いを夢見た時はその傾向が強い。


 でも、昔の話はもういい。

 京の都を舞台とした壮大な戦いに、壮絶なちゅっちゅ。

 忘れようぞ。


「おいしょ……っと」


 体を起こし、わしはリビングという現代の居間へと向かう。


「お前様? 今日の予定は?」

「華ちゃ……うたよ。そうじゃな。確か午前に講義が2コマ。その後、ちょっと首相官邸の方に行って……あと……そうそう。ジャッカル殿たちがU-22のオリンピック予選をしにドバイの方に遠征するから、その壮行会パーティーに顔出してくる。うたよ? うたも壮行会に行くか?」

「そうね。じゃあ行くわ。みんなに会うのも久しぶりだし。あかねっちとよみよみにも声かけておくね」

「うむ。頼む。わしは勇殿に声がけしておくわ」

「でも、首相官邸って……何しに行くの?」

「いや、大したことじゃないんだけど、利家殿が来年度予算の作成にてこずってるらしくて、わしもそれを手伝いに行く。うたも来るか?」

「いえ。そっちは私パスで……頭使うのは面倒だし、私午後に土いじりの実習があるから」

「土いじりって……ちゃんと農学部の実習って言おうぞ」

「どっちも変わんないわよ。ふーう。今日もいい天気ねぇ。さぁ、朝ご飯できてるから、早く食べて」


 会話の最後に妻が窓の外を眺め、わしも視線をそちらに移す。

 そこにはかつての時代と同じ空が広がっていた。



 おわり




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