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鍛錬場の壱


 3日後。わしらは例の倉庫に集まっていた。


 この3日間わしは後北条さん、今川さん、そして武田さんと連絡をとり、甲相駿三国同盟の締結日を調整する作業をしておったとこじゃ。

 そのおかげである程度の日取りは決まったんじゃが、そんな仕事をしつつもないがしろにしてはいけないことがある。


 訓練じゃ。


 わしらはあくまで武威使い。

 それは歳を重ねても変わらず、むしろ歳を追うごとに鍛錬は厳しいものとなる。

 これは武威使いとして避けては通れない運命なのじゃ。


 というわけで今日は夕方に皆々が倉庫に集まり、それぞれが腕を競うという週一のイベント日じゃ。


「三原よ。全員集まったぞ?」


 勇殿に農業三騎衆、そして最後に冥界四天王の面々が姿を現したところで、わしは三原に話しかける。

 対する三原は武威を念入りに練りながら短く答えた。


「あぁ、わかった」


 わっぱ相手にそんなにマジな準備をするなよ。

 といいたくなるのも無理はないけど、わしらわっぱ勢はすでに15。武威や法威は割と早い段階で前世のそれに近づいておったのじゃが、成長期を迎え、ここにきて身体能力も格段に成長しておる。


 ゆえにわしらの訓練の相手をしてくれる三原も相応の準備をしなくてはいけないのじゃ。


 いや、三原だけではない。


 ライオンさんのような殺気を放つ三原から少し離れたところ、これまたすさまじい武威と法威を放っておる人物が5人。頼光殿と、彼の部下たちもマジな感じで臨戦態勢を整えておる。

 特にわしが“スタッドレス武威”を伝授しておる綱殿あたりの意気込みがすごい。やつだけ向上心バリバリでこの場に立っておる感じじゃな。


 そんな綱殿も含め、おぬしらそれでも大人か? と。

 しかしそれだけわしらわっぱ勢の成長が著しいのも事実。といったところじゃな。


 んで、何はともあれそんな感じで三原が短く答え、訓練は開始される。

 最初は冥界四天王対三原。

 冥界四天王は武威残しではないので、4人まとめて三原に襲い掛かるルールとなっておる。

 とはいっても冥界四天王はかの有名な徳川四天王。

 あの乱世を勝ち残ったほどの実力を持つ4人ゆえ、その個々の実力もわしらと大差ない。


「三原コーチ! いっくよーッ!」

「こい、ガキども!」


 いや、ガキどもって……。

 三原もちょっと暴力的になっておるのかな? まぁよかろう。


 こんな感じでジャッカル殿が軽いノリで三原に声をかけ、乱戦が始まった。

 もちろんジャッカル殿たちは4人によるフォーメーション。三原を四方から囲み……いや、最近はそんな単純なフォーメーションばかりではない。

 前後に2人ずつ別れたり、3方向から囲みつつ残りの1人が上から襲い掛かったり。

 サッカーのように4人の呼吸を合わせつつ、しかしながらたまにわざとお互いの呼吸を乱すことで三原の予測を裏切る動きをしてみたり。


 などと冥界四天王の名に恥じぬ……じゃなかった。“徳川四天王”の名に恥じぬ戦いを見せておる。


 しかもじゃ。これだけの動きで三原を追い詰めておきながら、ジャッカル殿たちは本気を出してはおらん。

 これは訓練だから。と言い出したらそれまでじゃが、そういうことではなく――うーん。なんというか、そういうことではないのじゃ。


 何を隠そう、この4人の中には間違いなく“本多忠勝”がおる。

 戦国最強の武将と名高いあの忠勝じゃ。そんな奴がおるならば、その力は他の3人を凌駕するもの。

 しかし、わしの目をしても誰が本多忠勝か特定できん。

 それはつまり本多忠勝である人物がその武力をセーブしておるということじゃ。

 他の3人に合わせるためじゃろうか? 自身が本多忠勝であるとバレないためじゃろうか?


 そういうカモフラージュをしっかりとしつつ、この訓練をこなしておるのが1人おる。

 なんにしてもそういう視点から見てみると、その格闘センスたるやいと侮り難し。


「みんな、すごいねェ」


 勇殿がわしの隣で感心したようにつぶやく。もちろんわしも同意見じゃ。

 しかし相手はあの三原。

 およそ15分の乱戦の後、冥界四天王は揃って地べたに倒れこんだ。


「はぁはぁはぁはぁ……ふーう」


 もちろんその中心に立つのは三原じゃ。

 少し呼吸を整えた後、涼しげに軽く息を吐きながら三原は乱れた髪をかき上げつつ言った。


「よし。次! 明兼と清美! かかってこい!」


 そして少しの休憩も挟まずに、三原が次戦の開始を告げる。

 と同時にわしの背後からわしらを飛び越える感じで、あかねっち殿とよみよみ殿が動き出した。


「せい!」

「とう!」


 今度はこの2人じゃ。

 あかねっち殿は竹刀、よみよみ殿は両のこぶしにメリケンサックのようなものを付け、嵐のような猛攻を始めた。

 2人とも武道を習っているだけあって、2人だけで三原と互角の戦いをしておるが、わしからすると左近と兼続がコンビを組んでおるようで少し興味深い。

 いや、この2人だからじゃろう。前世でコンビを組んだことのないあかねっち殿とよみよみ殿はこれといったコンビネーションは見せん。


 あかねっち殿対三原。そしてよみよみ殿対三原。


 この2つの戦いが瞬間瞬間で切り替わって行われておるような感じじゃ。

 しかしこの2人もやはり戦国の世に名高い武将。

 猛将の類に分類される島左近たるよみよみ殿は空手の技術を存分に発揮し、四肢を駆使した攻撃。

 対称的に知将に分類される直江兼続たるあかねっち殿は、そんなよみよみ殿の猛攻の隙間を縫うように、三原の急所を狙っておる。

 2人は疲労の見え始めた三原を容赦なく攻め、およそ10分の死闘へと至る。


 しかしながらこの2人をもってしても三原をギブアップさせるまでにはいかん。


「はぁはぁはぁはぁ……」

「げほ……くっ……また、またしても……」


 先に2人が力尽き、またしても三原の勝ちじゃ。


「ふーう……はぁはぁ……いや、今日のお前らはなかなかよかったぞ」

「ほ……ほんとう? はぁはぁ」

「あぁ、もうお前ら2人の個々の技術は十分だな。さすが剣道と空手をやっているだけはある。

 しかしコンビネーションがまだ甘い。そこをもっと突き詰めるんだ。なんだったらジャッカルたちのように……。

 そうだな。今後はあの4人のコンビネーションを注意深く観察するようにしろ」

「わか、わかりました……三原コーチ……はぁはぁはぁ……いこ、よみよみ」

「う、うん。はぁはぁはぁ……」


 三原とあかねっち殿がこんな感じの会話を交わし、会話の最後にあかねっち殿が疲労で立ち上がれないよみよみ殿の腕をつかんで倉庫の端へと避ける。


 んでここからはわしの番じゃ。

 武威は中の下もいいところ。しかしながらそれを制御する法威の技術は三原も舌を巻くほど。

 そんなわしは、2戦を終えて疲労状態となっている今の三原とならいい感じに戦えるんじゃ。


「次は……光成だな?」

「おうよ!」


 まぁ、せめて三原の息が整うまでは待ってやろう。

 とわしはゆっくりと前に進み出で、ニコニコしながら三原を見つめる。

 それにしてもあの三原をここまで消耗させるとは、冥界四天王、そしてあかねっち殿・よみよみ殿コンビもだいぶ成長したな。


 まぁ、法威を覚え、そしてスタッドレス武威も極めたわしの成長速度には勝てんがな!


「はぁはぁはぁ……よし……いいぞ」

「ふっふっふ。では行くぞ!」


 わしはそう言いながら一度体の筋肉を緩めつつ、そして再度力を込める。

 これは昔から行っておるわしのルーティンみたいなものなのじゃが、それをし終えると同時にわしは武威と法威を発動させた。

 んでもってF1カーのウイングのような武威の羽根を背中から生やし、スタッドレス武威へと移行。わしは武器となる金属バットを構えながらもその羽根を駆使しつつ、三原を足元から攻め立てる。


 三原もこの頃にはマジになり、わしに対する攻撃も激しさを増してきた。

 飛び膝蹴りに代表されるように、足技に定評のある三原。そして地面を這うような動きを得意とするわし。

 わしら2人はある意味、とても相性のいい訓練相手になるんじゃ。


「くっ! ふん!」

「とう! やぁ!」


 三原の攻撃とわしの攻撃が低い位置でぶつかり合い、火花のようなものが四散する。

 ちなみに地を這う時の機動力を下げないようにするため、わしは蹴りの類を放つようなことはせん。

 両脚はあくまで移動のため。んでもって攻撃は金属バットのみ。

 その金属バットと三原の蹴りが衝突する瞬間に火花が散っておるわけじゃが、ゴキブリのように地を這うわしの攻撃が徐々に三原を押し始める。

 しかしながら三原の動きが鈍ってきたところでわしの腕力にも限界が訪れ、バットを握れなくなった。


「はぁはぁはぁ……今日は……はぁはぁ……これぐらいにしておこうか……光成?」

「はぁはぁ……げほっ……うん。そうじゃな。わしらの相手をしてくれてありがとう、三原よ」

「気にすんな……はぁはぁ」


 最後に三原にお礼の気持ちを伝え、これにて三原の役目は終わり。

 そしてここからこの訓練はクライマックスへと向かうんじゃ。


 まずは頼光殿対勇殿。

 片や平安の超有名武将。対する勇殿もその内に秘めたるは戦国有数の武将。

 まぁ、ネームバリュー的には吉継たる勇殿の方が少し劣る気もするけど、武威と記憶の“2つ残し”である勇殿――かつそんな勇殿が法威も操っておるとなると、さすがに連戦で消耗した三原では太刀打ちできん。


 だからこそここで教官役が三原から頼光殿に変わる感じじゃ。

 そもそもこの男、今や出雲勢力を束ねる重要な立場なのに、こういう時は楽しそうに訓練に参加してくれるんじゃ。

 やはり好戦的な男なのかもしれん。


 んで時間を置かずに頼光殿と勇殿の戦いが始まる。というか、頼光殿と“吉継”との戦いが始まった。

 頼光殿はいとかっこいい形のサバイバルナイフを両の手に持ち、対する吉継は勇殿の意見を尊重し、両手にプラスとマイナスのドライバーじゃ。

 わしと三原のような打点の低い特殊な戦いではなく、こちらは至極まっとうな格闘戦が繰り広げられることとなる。


 しかし、およそ10分が過ぎたあたりで勇殿の動きが鈍り始める。

 頼光殿に向かって全力攻撃を続け、そして頼光殿の鋭い攻撃を防御し続ける。

 そうなるとやっぱり10分ぐらいで吉継の限界が来るんじゃ。


「はぁはぁはぁはぁ……まいった……」


 膝をつきながら吉継が負けを認め、これにて勝負あり。

 流石の吉継も妖怪退治のプロフェッショナルとして名を馳せた頼光殿には勝てん。わしより大分いい動きしておるんだけどな。


「勇君、吉継……歩ける? ほら、僕の肩に捕まって」

「うぅ……ありがとう、光君……ふっ……すまぬ、三成よ。肩を借りるぞ? はぁはぁはぁ」


 ふらふらになった吉継――つまりは勇殿なんじゃが、この2人が意識を切り替えながらわしの言に答える。

 プルプル震えておるその体をわしが支えると、倉庫の端へと移動した。

 対する頼光殿もそれなりに体力を消耗しておるので、ここでお役御免じゃ。


 いや、お役御免というか……その、あの……。

 こっからじゃ。ここからこのイベントのフィナーレが始まるんじゃ。


 まだ訓練をしておらん人物。華殿。

 相手は頼光殿の部下である綱殿、卜部殿。そして坂田金時殿、碓井貞光殿。

 実のところ、彼らを相手に華殿はたった1人で戦い続けるという規格外な強さを手に入れたんじゃ。


 うーむ。


 むしろ“それほどの武威使いに育ってしまった”というべきじゃろうか。

 当の本人は“天下統一”や“第六天魔王”といった夢も持たず、転生者としてこれといった活動はしておらん。

 いや、華殿はあくまでわしらの仲間。と考えると彼女はある意味わしの夢のためだけにこれまでいろんな活動に身を投じてきたわけじゃが、“緩い天下統一”を願うそんなわしにとっても、逸材過ぎる戦士となっておる。


 もうさ、ここまで強くなると、華殿が天下を狙えよ。とも言いたくなる。

 でも華殿が本気で天下を狙いだしたら、この国は華殿の武力による恐怖支配の国家になりかねん。


 なので今のところ華殿がわしらの仲間であることがある意味不幸中の幸いなのじゃが――うーん。まぁ、幼馴染のわしにそんな恐怖を抱かせるほど、華殿は別格の強さを持つようになってしまったということじゃ。


「ぬごえひけおいぎふぁけおじょいじおげおがああぁあぁぁああっぁ!!」


 まずは華殿の呪いのようなわけのわからん叫び。それとともに華殿が武威を開放する。

 と同時に地が唸り天が割れるほどの畏怖が周囲へと広がった。


 この時点で東京都23区内の野鳥さんは逃げ始め、わんわんは遠吠えを始めてしまう。

 その他多くの野生動物にも恐怖を与え、なんだったら天高く上昇する華殿の武威のせいで、少しだけ都内の気圧が低くなってしまった。

 結果、晴れ渡っていた空に暗雲がたちこめ、倉庫の屋根にぱらぱらと雨音が響き始める。


 これはもはや天変地異の一種じゃ。


 しかしそれに怯えるどころか、立ち向かおうとする勇者が4人。

 さっきも言ったけど、頼光四天王じゃ。


「武威の開放、終わったよ! ほれ、いつでもこーい! わっしょーい!」


「相変わらず……この子の武威の量にはあきれる……」

「なんという武威……くそ、震えが止まらん」

「いいか? 絶対に致命傷は受けるなよ。マジで死ぬぞ?」

「脅かさないでよ、綱。この子の蹴り、まともに食らったら胴体に風穴が開くっつーの」


 いや、綱殿たちもいつも以上にビビっておるわ。

 あれかな? 今日の華殿はいつもより激しい武威を放出しておるのかな?


 などとわしが観客気分の軽いノリで見学しておると、早速戦闘が始まった。


「とーう! えい! やぁ! わっしょーい! もういっちょうッ……わっしょーい!」


 殴打、刺突、斬撃……その他ありとあらゆる破壊の衝撃が火花とともに広がる空間。

 綱殿たちの猛攻撃により、華殿の周囲半径4メートル以内にはそのような空間が出来上がる。


 しかしそんな破壊の空間においても、華殿のわけわからん掛け声は止まらん。

 つーか華殿の掛け声が若干楽しそうに聞こえるあたり、やつは本当にこの訓練を楽しんでおるのかもしれん。


「これはもう……私1人では敵いませんね」


 その時、口を開けてのんきに訓練を見学しておるわしの脇に頼光殿が近づいてきた。


「むう。なんだったら頼光殿と三原……2人で立ち向かっても華殿には勝てないかもしれんな」


 頼光殿の言にわしが答え、と思ったら反対側にはいつの間にか三原も来ていた。


「かもな……。しかし光成よ? お前、華代をあんな風に育て上げて将来どうするつもりだ?

 世界征服でも狙ってみるか?」


 べ、別にわしが華殿を育てたわけじゃないんだけど。


 でも1人の大人として、この華殿の強さは大きな魅力がある。と同時にとんでもない恐怖も感じるのも確かじゃが。


「おい、やめろ三原。華殿は華殿じゃ。とてもいい子に育っておる」


 なんてことを試しに言ってみたものの、その夢は捨てきれん。


 ――なんちゃって。

 世界征服とか、そういう大それたことは……うん。ひとかけらも思っておらんぞ。


「まぁ、お前にしてみりゃ“いい子”だろうがよ。光成の言うことは割とよく聞くし……でも、我々からすると……」

「えぇ、とてつもなく……不安です……」


 おっと。

 めずらしくあの三原と頼光殿が不安がっておる。

 かっかっか! そうか。華殿はもはやそういう目で見られるようになってきたのじゃな!


 ――じゃなくて。

 なんじゃその言い方は? それじゃまるで華殿が悪魔の申し子みたいな扱いになっておるやんけ!


「いや、わしも大人じゃ。大人だからわしも華殿に不安を感じておる」


 わしらより少し離れたところで、無邪気に華殿の応援をしておる勇殿たち。

 そんな勇殿たちとは違い、やはりわしも華殿の強さに不安も感じる時もあるんじゃ。


 だけどじゃ。


「ふっ。じゃあ光成? お前がちゃんと華代の手綱を握っておけよ?」


 言い方がちょっとあれだけど、三原の持つ不安も至極当然。

 わしが……そしてこれから大人になる勇殿たちがわしとともに力を合わせ、華殿が間違った道に入るのを防がねばならん。

 それはわかっておる。

 そして、わしらならばそれが可能であることも十分承知なのじゃ。


「頼みますよ、三成様」

「ふっ。安心して見ておけ。華殿をこの国の伝説に仕上げてやるわ」

「伝説とはこれまた大それた……くっくっく」

「ふっふっふ」


 頼光殿からそんなふうに言われ、わしもそんな感じで答える。

 んでこんな会話をしておるうちに、目の前の戦闘が徐々に収まっていった。


「ふーう! 全員やっつけたよ!」


 華殿が一仕事終えたような感じでそう叫ぶ。

 きれいな汗をぬぐいながらも、その周りには4つの死体……いや、綱殿たちは死んではおらんのだけどな。

 そう思わせるほどに激しい戦いの跡が広がっており、でもやっぱりその中心に立つのは華殿じゃ。


 うむ。はっきりいってもはや華殿の実力はこの中で1番じゃ。

 それは誰もが認めることで、華殿に応援ソングを送っていた勇殿たちもこれと言って驚くこともせず、いつもの感じで華殿を迎えておった。


「お疲れー!」

「いえーい! 華ちゃん、ナンバーワン!」

「おーいえー! 私、ナンバーワン!」

「華ちゃん、怪我は?」

「ないよー!」


 ほら、いつもの感じじゃ。

 んでもって頼光殿が倒れている4人を介抱するために歩き始め、皆との挨拶が終わった華殿が代わりにわしのもとに駆け寄ってきた。


「みーつくーん!? どうだった? 私の戦い?」

「うん。“これぞ最強”って感じ!」

「よし! 私最強ッ!」


 ほら、このノリはあくまで普通のわっぱじゃ。

 三原もそんなわしらのやり取りを見て、少し安堵したようににやりと笑っておった。


 華殿はあくまでわしらの仲間。

 わしもそう確信し、んでこれで訓練は終わりじゃ。


 でもじゃ。皆の興奮が収まり、わしが訓練の終了を告げようとしたその時じゃ。


「では我々はこれにて」


 頼光殿が短くそう言い、呼吸の整った部下たちを連れてひゅんって消えやがった。

 普通に倉庫の入り口から歩いて出ていけばいいのに、そういうとこもかっこいいなこんちくしょう。





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