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石田三成だけど現代社会ふざけんな
実は犬です。
現代ファンタジー異能バトル
2024年10月03日
公開日
644,788文字
完結
 関ヶ原の戦いで徳川家康に敗れた石田三成。
 京都六条河原にて処刑された次の瞬間、彼は21世紀の日本に住む若い夫婦の子供になっていた。

 しかし、三成の第二の人生は波乱の幕開けである。

「是非に及ばず」

 転生して現代に生まれ出でた瞬間に、混乱極まって信長公の決め台詞をついつい口走ってしまった三成。
 結果、母親や助産師など分娩室にいた全員が悲鳴を上げ、挙句は世間すらも騒がせることとなった。

 そして、そんな事件から早5年――
 石田三成こと『石家光成』も無事に幼稚園児となっていた。

 右を見ても左を見ても、摩訶不思議なからくり道具がひしめく現代。
 それらに心ときめかせながら、また、現世における新しい家族や幼稚園で知り合った幼い友人らと親交を深めながら、光成は現代社会を必死に生きる。

 しかし、戦国の世とは違う現代の風習や人間関係の軋轢も甘くはない。
 現代社会における光成の平和な生活は次第に脅かされ、幼稚園の仲間も苦しい状況へと追い込まれる。
 大切な仲間を助けるため、そして大切な仲間との平和な生活を守るため。
 光成は戦国の世の忌むべき力と共に、闘うことを決意した。

400年ほど前



 慶長5年 大津城



 戦に負けた。

 今、目の前におるハゲたおっさんに負けた。


 いや、今は乱世だし、戦に負けるのも仕方なかろう。

 もちろん、わしも似たような髪型なのでハゲを責める気はない。


 だって蒸れるんじゃ。

 戦場だと興奮しっぱなしだし、兜なんて通気性は皆無だから、汗だらだらで本当に気持ち悪いんじゃ。

 だから勘違いはしてはならん。


 ちょんまげとは、実用性と身だしなみを備えた至極の髪型。

 ハゲ散らかしたおっさんがふさふさの若人に嫉妬して強要した髪型では決してない。

 意外とかっこいいし、威風堂々って感じだしな。

 あと、ぺしって叩くと気持ちいいのう。


 でも……戦に負けて……山ん中で捕まって……縄に縛られて……。

 敵の大将と、あと他の武将たちから見下ろされている。

 そんなわし。

 全然かっこよくないし、なんか腹立つわ。


 あぁッ! 本当に腹立つ!

 百歩譲って三河衆はどうでもいいわッ! やつらはがんばったから別にいいわッ!

 お前だ、お前! おい、秀秋! 小早川さんとこの秀秋!

 こっち見ろや! 目ぇ逸らすなや!

 お前が関白なりたいって言ったんちゃうんか!

 なぁ、おい!


 ……


 くっそ……無視しやがって……。


 あとアレじゃ。他にもいるんじゃろ、裏切り者。

 おう、そっちのやつら。お前らじゃ、お前ら。

 お前らも呪ってやるからこっち見ろ!

 おいッ! 下向くな!

 あぁッ!?


 ……


 くっそ……どいつもこいつも……。

 まぁいいや。

 裏切りも戦国の常じゃ。

 一番の問題はお前な、古ダヌキ。



 おうおう、天下統一目前で笑いがとまんないって感じじゃな、おい!

 太り過ぎじゃ、ばか!

 それのどこがタヌキなんじゃ!?

 いいか? タヌキさんって本当に可愛いんじゃぞッ!

 なぁーにぃが「わしってほら、たぬき系武将だし」だ、バカ!

 気持ち悪いんじゃ!

 あの時、お前以外の五大老全員ひいてたわッ!


 くそったれ!


 ……あっ、そういえばこいつ、本当にくそったれだった……まぁいいか。


 くっそ……。

 こいつぜってぇ幕府開く。

 足利さんとこみたいに幕府開くに決まっておる。


 おう、そこのバカども。

 特に長政と正則ぃ!?

 お前ら分かってんじゃろうなぁ?

 このくず、ぜってぇ豊臣家潰すからなぁ!

 そうなったとき、お前らあの世で殿下にどう落とし前つけんじゃあ!? あぁッ!?

 断言できるわ! 絶対断言できるわッ!!

 いや、わしもそのつもりだったけどぉッ! 石田幕府開くつもりだったけどもッ!


 ふーう……ふーう……。


 落ち着け、わし。

 そもそも、どうしてこうなった……?


 家康? お前、わしに

「豊臣家も安定し、これからは安寧の時代。わしらのような戦うことしかできない野蛮な武将どもより、おぬしのような政治に長けたものが豊臣家を支えるべき」

 って言ってたよなぁ……?

 お前がそう言うからわし頑張ったんじゃぞ!


 あぁ、言いたい。今ここで全員に暴露したい。

 この戦いそのものが家康とわしのやらせだったこと……。


 家康に

「でも一応大きな武勲も必要だから、わしと軽く殺り合わぬか? ほら、一応わし野戦は強いって言われてるし。

 そんなわしに引き分けとあらば、おぬしの名声も轟くし。

 あっ、わしの評価が下がるのも嫌じゃから、わしにも善戦させよ。おぬしが先に好きな布陣して、代わりにわしは不利な戦況でおぬしと互角に戦う。みたいな。

 おぬしの評価も上がるし、わしも面目が立つ。どうじゃ?」

 ってそそのかされたこと、すごく言いたい。



 でも、そんなこと言おうもんなら、暴露してる最中に即刻首切られるんじゃろうな。

 ……それは嫌じゃ……。

 くっそ……腹減った……柿食べたい……みずみずしいやつ……。


「のう?」


 その時、目の前に座るクズタヌキがなまったるい声で話しかけてきやがった。


「三成はさすがに大将の道を知るものだ。平宗盛などとは大いに異なる」


 おい! そう思うんならわしのこと、少しは丁重に扱えや!

 さっきお前の部下がわしの処刑に使う刀を見せてくれたぞ! なんじゃあのなまくら刀はッ!?

 絶対痛いじゃろッ! のこぎりで首切られるようなもんじゃ!

 なんでそういう姑息な嫌がらせすんねんッ! おい、にやつくなッ!

 お前、伊賀衆飼ってんちゃうんか!? だったらやつらに薬調合させろやッ! 痛みとるやつか、眠くなるやつ! それでわしを静かに眠らせろぉッ!



 10日後、わしは処刑された。


 そんで次に目が覚めた時、わしは400年後の日本に生まれておった。



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