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第22話 先輩、大型コラボする③

早速コーディの武器を使って貰ったところ。


『切れ味はいいけど、センパイのアメーバ君と比べたら3点』

『俺に大剣は向かんと言うことがよくわかる。取り回しの問題もあるが、振動が強すぎてな。やっぱりこれガイウス向けだな。切れ味は文句ないので3点』

『論外、0点』


と言う結果が出た。トールに関しては自分のスタイルを嫌でも崩したくないらしい。世界最高峰の武器屋にケチつけるのお前くらいだぞ、きっと!


「コーディさんは6点ですね。お疲れ様です」

「おかしい、俺の最高傑作だぞ? 祖国では切れすぎて怖いって言われるほどなんだぞ? それが6点だと!?」


<コメント>

:普通だったら同情コメントが流れるけど……

:虐待可哀想

:いいぞ、もっとやれ

:ガンドルフよりは4点高いんだしいいだろ

:先輩に先攻取らせたのが敗因だろ

:後攻取らせても無双しそうなのが先輩

:それなー


「現場は自分のスタイル崩せるほど甘くないって事だね。それじゃあ早速要望を聞こうか? 改善次第で点数アップも見込めるよ?」

「これを更に? まぁいいだろう。本当は壊したくはないが、君に任せると大変なことになる」


<コメント>

:先輩、警戒されてて草

:さっきのガンドルフの尊厳が破壊された顔見てないんか?

:最高に興奮しました

:これは後輩ちゃんの技術が光る

:側を美少女にするだけでここまで捗るとはな!

:中身おっさんだぞ! 良いのかそれで

:俺が捕まることはない!

:おっさんだから良いんだろ?

:ガチ恋はし辛いからな


改良案は、一貫して手ブレ補正の修正だった。切れ味の点は問題ないとのことで、僕から提案を授けようとしたところでウサギ博士に待ったをかけられた。


「先輩、それ以上若者を虐めてはいけないよ?」

「あの、多分同年代ですよ。ローディック師を除けば」

「Vとしての年季は君の方が上だ」

「そんなもんですかね?」

「そんなものさ」


何が言いたいのだろうか? 僕は提案を制止されてちょっとモヤモヤした気持ちになる。

そこへウサギ博士からの提案は、せっかく素晴らしい転送陣があるんだから単独での勝負ではなく、コラボ商品で競い合ったらどうかと言う提案だった。


どうやら日本の錬金術師&鍛治師。海外の魔導具師&鍛治師で勝負を挑む、そう言う形に持っていきたいようだ。

ガンドルフの負けが見えてるから、と言うつもりではない。

どうせ遊びなんだし、個人技を見せつけあっても仕方ないと言ってるのだ。


「コラボならではのタッグですか。つまり罰ゲームもタッグで受けると?」


後輩の声はウッキウキだ。その発想はなかった! と大喜びである。

なんとしても僕のグッズを売り出したかったのだろう。僕は巻き添えを食った形だ。くそう。


「異論はない」

「ちょ、俺は異論ありありだぞ!」

「馬鹿者め、先輩に単独で立ち向かって勝てるなどと本気で思っているわけではあるまい? あやつはフォースジョブに届いた男だぞ?」

「くっ、確かにそうだ。俺たちは所詮セカンド止まり」

「一緒にせんでくれんか? 私はサードジョブ持ちじゃ」

「このジジイ!」


<コメント>

:さぁ、面白くなってまいりました!

:日本VS海外勢か!

:先輩の所属は米国だけどな


「俺も日本から脱却しようとしてるから、どうしたもんかな」

「え、ガンドルフ日本発つの?」

「政府がタダ働きさせようとしてくる場所で自由に金槌振れっかよ」

「はぇー大変だねぇ」

「どの口がほざくんだか」

「この口だが?」


<コメント>

:じゃあ日本人VS海外勢やな

:先輩って日本人なんですか。

:黒髪だから日本人やろ

:Vだから実際どうなんだ?

:早速仲良しなのが微笑ましいですね

:喧嘩口調に煽りかえしてる様にしか見えん

:大丈夫、お前の目は正常だよ


「大丈夫ですよ、先輩は生まれも育ちも日本です。日本酒と煮卵が至高というくらいには日本大好きです」


<コメント>

:え、飲酒して良いの?

:中身おっさんだから

:そうじゃん

:社会に10年出てたんだぞ?

:薬品会社ってだけで大学卒業してるし

:自称じゃなくて真っ当に32歳なんよな

:合法ロリやぞ

:女装ショタが正しい

:猫耳合法女装ショタおじさん!? 業が深すぎるだろ


「はいはい。じゃあ急遽という感じで納得いかないけどここからはコラボで行くということで良いんだな? それじゃあ僕たちのコラボ品の点数もつくわけだ? そこんところどうなの後輩?」


先ほどトールから出た20点は有効か?

それを尋ねる。


「特例ですが、許可しましょう! 先輩チームは合計14点に32点(ガンドルフ2点+コラボ5・5・20点)を追加して、46点となります!」

「おぉい! おかしいだろ! 5点満点じゃないのかよ!」


後輩の配慮にコーディさんが食いついた。

芸術点はプライスレスとして現場に任せた。

これからは現場の発言が重要になるとアメリアさんやキングも察したようだ。


「それで良い。その代わりじゃが、私のポイントにコラボのポイントも追加でつけてくれるんじゃろ?」

「良いのかよ、ジイさん!」

「勿論です。個人技の後にコラボの商品で採点いたしますよ。罰ゲームも個人とタッグで別々にご用意いたします」

「そこまで気を回さんで良い」

「え、無理です。もう作っちゃいましたし」

「先輩、この子はいつもこうなのか?」

「平常運転ですね。なお、僕の要望が通ってたんなら女装なんて拒否してますって」

「それもそうか。ならば覚悟を決めるしかないようじゃな。ほれ、先に私のアイテムを採点せぬか」


ローディック師は後輩の狡猾さに恐怖を感じながらも条件を飲み、どうすれば点を取れるかを思案した。


超強力接着剤については、評価『3、2、0』という酷評を頂いたが、それぞれの武器に合わせて作り直せば『5・5・5』という最高評価を叩き出していた。

さすが魔導具技師の最高峰。年の功もあり現場の人間をよく分かってる。


アメリアさんには接着性の弱いポーションとして飲ませて壁の上を走れるアイテムに。制御用バングルで吸着体質の強弱を変えれると聞いてウキウキとしていた。今までは飛び回っていた壁と天井に任意に貼り付けられるのだ。アメリアからしてみたらこれは神アイテム、勿論絶賛していた。

SSランクともなると安全な足場がとにかく少ないとかなんとか。これならもっと奥に進めると喜んだ。


キングには吸着のオン/オフを自在にした魔導具として持たせた。敵の攻撃を全部盾で塞いで、その上で相手の次の攻撃を塞ぐというものだ。

爪を立てればくっつき、食い付けば更にくっつく。その隙に仲間に攻撃させるのだ。これの評価はすこぶる高かった。


トールには接着弾として贈呈。天井や壁に色付きの弾丸を展開して、ハエトリ棒の様にくっつける。

バレット式なので攻撃かサポートかはトールの気分次第。戦略の幅が広がったと大絶賛されていた。

この時点で6点+15点で21点。あとはコラボだが……


「先輩のレシピ集の6巻は私の手元にある。これで面白いものが作れたよ」

「6巻かー、となるとあれかな?」

「心当たりがある様で嬉しいよ。ちょうど魔道具に関しての考察だったのは僥倖だ」


これは遊びどころではなくなってきたぞ。

だが同時に、そうこなくちゃ! という期待が高まる。

ソロでだったら味わえないこのライブ感。

これがコラボの醍醐味だと後輩は宣う。


「そして私のチームのコラボ品はこれじゃな」

「それは?」


腕時計の様な腕輪型。銀盤の上には立体魔法陣。

小型のブラックホールが展開して、そこから伸びる光の矢。

それは射出が可能だった。

緊急時に作動させて崖に引っ掛けたりできる様に先端が鍵爪の様になっている。

長く伸ばすことも、それを巻き上げるのも自在だ。

戦闘にも命綱にも使える。

そしてサポートにも使える万能マジックブレスレットだと言う。


この人早速僕の転送システムを真似て来た!

そこに魔道具技師としてのアイディア、武器職人のコーディさんの単分子ブレードの殺傷性能まで合わせた究極キメラを持ってくる。


だが評価は……


『面白いな、けどアタシはそんなにあれこれ使わないし、6点』

『腕輪型の十特ナイフか。面白い、しかし機能を詰めすぎて用途が思いつかんな。俺たち特化型のSランクより、集団行動のAランク向けだな、5点』

『こういうの待ってた! でもマジックバッグもどきが普及されると困るのはウチなんで10点っすかねー。いやー、社員に持たせるのには良いっすよね、これ』


合計で21点だ。

あれこれ詰め込みすぎた結果といえばそれまで。

一芸特化のSランクよりAランク向けとまで言われて呆然自失としていたのはローディック師の方だ。

手応えがあったのだろう。もしトールがマジックバッグを持ってなかったら評価は大きく変わったかもしれない。

けどこれは所詮ゲームに反映するアイテムの募集だよ?

勝ちに拘って大きく目的を見失っってしまったんだろうね。


<コメント>

:うぉおおおおおおおお!

:すっげぇ激戦だ!

:それ俺にくれ!

:カニ爪キャノンより断然有能だろそいつ!

:なんで点数低いんだ?

:それ欲しい!!

:くれーーーーーー!!


コメントの方はすこぶる盛況。

そうなんだよね、一般ウケはいいんだ。

なんせ欲しいものの欲張りセット。

世論調査だったら納得の満点評価。

けど一芸特化の人達には微妙に刺さらなかったね。


「一戦目から早くもヒートアップ! ネコさんチーム46点、ウサギさんチーム42点! その差はなんと4点しかありません! これは一体どうなってしまうのか!? 二戦目が早くも期待されますね!」


<コメント>

:おい!

:チーム名それでいいんか?

:草

:まぁチームリーダーの特徴は捉えてる

:画面はみんな真剣な表情なのに可愛さが映える

:背後に炎が舞い上がってても可愛さが目立つの草

:内容は非常に高度かつ難解なアイテム合戦なのに子供向け番組の様だ

:絵面だけなら子供向け

:こんな性癖のごった煮みたいな番組子供に見せらんねぇよ!


何やらコメント欄でいろんな憶測が飛んでいるが、無視して二戦目へと司会を進行する。

次に遭遇したのはリザードマンだ。

先ほどのグレーターセンチピードに比べたら取るに足らない相手。


問題はその数か。

ゴブリンやオークより俊敏で、膂力はミノタウロスに匹敵。

群れで移動し、ぬかるみでも移動速度の落ちない水性系。

炎や氷のブレスを吐き、その皮膚はそれらを通さない強度を持つ。

小型のドラゴンといったところだが、思考は人に近い。


人間とは相容れない残虐な性格をしてるので敵対関係だ。

それを見つけて躍り出るのがアメリアさん。第一戦目に配ったアイテムで無双し始めた時はびっくりした。

あの、その子達二戦目の課題なんで無双しすぎない様にして……?

無理だったので見なかったことにした。


「えー、一戦目のアイテムが早くも大活躍してる様ですね! リザードマンは二戦目の課題だった気がしましたが、どうやら勘違いだったようです。もっと奥にいたかな?」


<コメント>

:草

:草

:草

:草

:そら一戦目が個体上位なら群れなんかで来たってお払い箱よ

:与えた武器が強力すぎましたね

:一回戦から出すアイテムじゃねーしな、あれ

:カニ爪キャノンTUEEEEE!!

:天井張り付きバングルやばすぎ、アメリアちゃんに誰も追いつけねーじゃん!

:アメーバブレードの切れ味やべー、リザードマンがなます斬りにされたぞ!

:リザードマンってAランクでも苦戦する相手じゃないっけ?

:色が違うからきっと特殊個体、だと思うんだけどな、ちょっと自信ないわ

:肌が赤いのはドラゴンに近い種族、炎のブレスが強力だ

:普通はミスリル武器でも通用しないんだが……

:杞憂でしたね

:粘着バレットで足止めされてカニ爪キャノンで一掃されてんの草

:このメンツの提供アイテムが頭おかしいのがよく分かる

:点数で競い合っていいもんじゃねーだろ!


全くもってその通り。

ただ予想外なのは、それで無双されてしまう点だ。

多少の無双は想定してた。なんせゲームアイテムとして世に出すのだ。

それなりに効果が望めねば意味がない。

素材の安全入手は二の次だった。

現実の利益なんて知ったこっちゃねーんだよ!


「えーっとお次の相手はバトルシップタランチュラですか。これは苦戦しますよ」


するよね? いい加減するよね?


「バトルシップタランチュラ。戦艦の名を冠する大型の蜘蛛で、小蜘蛛が大砲さながらに発射されることから名付けられた様ですけど……特に大した脅威ではありませんでしたね」


<コメント>

:瞬殺で草

:アメリアちゃんに壁歩ける魔導具与えたの誰だよ!

:ここでもアメーバブレードが大活躍でしたね!

:グレーターセンチピードの足や胴体が切れるんならいけるでしょ

:トールもノリノリで小蜘蛛処理してたし

:キングが落ちて来た親蜘蛛を処理してんのには冷や汗かいたが

:無傷だったよな案外

:頭部以外のダメージはなかった!

:頭部は元から更地だったろ! いい加減にしろ!

:先輩はいい加減毛生え薬をグッズ販売に戻すべき


え、嫌だよ。

それはあいつが好き好んで使ってるだけであって僕は関係ないぞ?

その一点特化で引く手数多になったのは事実だが、それを了承したのはキングなんだから僕は知ったこっちゃない!

ないったらない!


先行パーティはダンジョンを進む、ズンズン進む。

以前攻略しに来た時よりも早いペースでモンスターを駆逐していった。

この分だと二戦目の課題は中層のボスになりそうだ。

なお、上層のボスはさっきの戦艦蜘蛛ね? 道中のモンスターはサーチアンドデストロイだったもんね!


<コメント>

:あれ? もう敵いなくね?

:上層から中層にかけて敵なし

:そりゃ(無償で専用装備作ってもらったら)そうよ

:これってそのまま配給されるの?


「されるよ。じゃなきゃ危険を犯して参加してもらった意味ないし、ゲームでも彼らと同じ装備やアイテムが実装されるからそっちでも人気が出るかなって目論見」


<コメント>

:あれ、これトールの一人勝ちでは?

:サポーターの癖してそれなりに戦える武器の提供

:サポーターの役割を奪いかねないアイテムへの酷評も可能、と

:おい、こいつ審査員から下せ

:万能魔道具が実装されるかどうかトールの匙加減ひとつじゃねーか!

:これ絶対実装されない流れだぞ

:実装されたとして買えるか?

:ちなみに実装されたらおいくら万円になりそうですか?


「そうだねぇ、先輩のブラックボックスのレシピ集は1億での入手。そこに素材費、諸々の制作費用を込めてざっと500億って所じゃろうな」


<コメント>

:金持ちの道楽じゃねーか!

:先輩のレシピ億行ったのか!

:額に負けて随分と手放した人多そうだな

:一生後悔するやつだろ

:自分で作れないなら売るのもアリ

:問題は生産ラインに乗るかだろうな

:それ、まず量産の見込みはないよ

:そういえば先輩、さっきアイテムを分裂させる薬品使ってなかった?

:それだ!


「制作難易度280の奴? 素材費込みで800億は行くんじゃない? 知らんけど」


<コメント>

:おい!

:エリクサーより高くて草

:先輩の薬の方が高いのよ

:逆に考えるんだ! 800億で1000億分の収益が出せると考えれば!

:まずそんな金がなくてですね

:四桁下げろ、話はそれからだ


「じゃあ君たちの今までの手取りを四桁下げてもいいの? その交渉はそういう意味だぞ?」


<コメント>

:それは死んじゃうからやめて!

:いってることは正しいのよ

:四桁値下げは先輩たちが死んじゃう!

:素材費用がクソ高いんだろ?

:ちなみにその素材とかは?


「素材にエリクサーが使われてるよ。あ、でも模造品の方ね? それでも280なのはお察し」


<コメント>

:エリクサーを無駄遣いすんな!

:エリクサーって素材にするもんなの?

:なんでこんな奴が錬金術師名乗ってんだ!

:この錬金術師を今すぐ止めろ!

:一体先輩の手によっていくつものエリクサーが素材として費やされて来たのか……


「数えてないなぁ、まぁ蘇生はしない方の模造品ならそれこそ数え切れないくらい消えてるよね。そっちでは分裂液は作れてないからお察しだけど」

「聞いてるだけで頭痛くなってくるな。国に提供したらそれだけで国宝のように扱われるだろ?」

「なんで好き好んでモルモットにならなくちゃいけないのさ。それはそうとアメリアさん達が中層のボスに突入したようだね。さぁ、第二戦の課題が発表されるよ!」


隣でぼやくガンドルフに画面に意識を向けるように促す。

そこに現れたのは見上げるほどの身の丈を持つミノタウロス。

思いの外苦戦したのでようやく第二戦を始められることになった。

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