「もしもし、アカリちゃん? 今お時間大丈夫」
「あれ、望月先輩ですか? わー、久しぶりです。意中の相手を射止める計画は上手くいったんですか?」
「アカリちゃんのお陰で計画は上々よ」
「それは良かったです。それで今日はどんなご用事ですか?」
美作アカリは電話口の知り合いの言葉にただ世間話だけをしにきたのではないと察しつつ、言葉を待った。
望月ヒカリ。
美作の二つ上で大手製薬の広報部。
いわば会社の顔をしていた女性。
もう30を超えたというのに、未だに肌の衰えを知らない美魔女であることは美作に限らず弊社の女性研究員の全てが知っている。
そんな望月が独立をすると聞いて喜び半分、もう半分安堵した女性研究員は多いだろう。
何せ全ての男性研究員の視線を奪っておきながら誰ともお付き合いしない鉄面皮っぷりだ。
嫉妬にかられる同性が多かった。
それもそのはず、彼女には思いを寄せている相手がいて、その恋を実らせる為に美作は協力していた。
その結果、望月ヒカリが今世間を賑わせている配信チャンネルの後輩こと『壁の人』である事は二人の中で共通認識になっている。
当時の知り合いだからこそ、美作の手に錬金窯は渡るべくして渡っていた。
しかし先輩の出自だけはいまだに伝えずにいる。それを知られるのは困るとばかりに望月は予防線を張り巡らせていた。
「実はね、むくみ取りポーションの品質C以下を買い取りたいの」
「……ウチの部署としては助かりますけど。例のマスコミ関連ですか?」
「今はまだ秘密かな。でも概ね正解と言ってもいいわね。先輩を悪様に扱うだなんて信じられない。一体誰のおかげで米国と対等に渡り合える機会を得られたと思っているのでしょう」
こうやって、知り合いとの通話でも感情を抑えきれない部分が出る。
特に今回の状態は本題に入る前から怒りが漏れ出ている。
これは相当な爆弾を抱え込んでいるだろうと美作は予見する。
「ですがタダでお渡しする訳にはいきませんよ? こちらもそれなりのコストを用いていますので」
「超濃縮ポーションの品質Sを50本でどう?」
美作は思わず即答しそうになる。
正直言って喉から手が出るほど欲しい。
いくらポーションの品質向上を図っていても、大量生産を謳えばどうしても品質は均一化する。
そんな均一化したポーションで超濃縮ポーションを作ったところで品質の向上なんて見込めるわけもなかった。
「痛いところを突いてきますね」
「交渉相手の懐具合は把握してるわよ。今現在大手製薬の事業は右肩下がり。成功は欲しくない?」
「こっちだって錬金術師。意地ってものがあります。なので品質Sのむくみ取りポーションも一本つけてください」
「別にそれくらいいいけど。大手には一本支給されてなかったかしら?」
「専任が価値も詳しく知らずに使い果たしましたよ!」
美作の怒りは電話口の望月にまで届く位によく響いた。
あまりの叫びに望月も大目玉である。
しかし専任が誰かを思い出して納得もしていた。
先輩を虐めていた張本人である。
今は会社をクビになって家庭を失ったと聞く。
末路を知って良い気味だと薄笑いしつつも美作を同情した。
望月にとってもむくみ取りポーションは思い出深いものだ。
大学時代に先輩から教わり、夢中になって研究した。
まさに当時の悩みの集大成を見事なまでに解決してくれた薬品の一つである。
錬金術バカな望月にとって徹夜などは日常茶飯事。テンションはハイになれど、どうしてもむくみは身体中に出た。
それを消してくれるなんて願ってもない。
が、それを使い続けるウチに全く別の効果を知る。
それが美肌効果だった。
むくみ取りポーションの研究は品質にまで至り、ついには解明される。
先に先に進む先輩は過去のレシピに興味を示さない節がある事を望月は知っていた。それを取り上げて世に発信するのは自分の役目だ。
いつの間にか憧れが野心に変わり、望月の中で燻り続ける。
それと同時に美作も感化されていた。
配信上でとても簡単に作り上げる先輩の凄さは、実際に同じ錬金術師として美作にプレッシャーを与えていた。
望月をして神のように讃える相手だ。
かわいいだけの相手ではない事を配信を通じて見知っている。
良い加減誰かを教えて欲しいし、直々にご指導を承りたいものだが、それはいまだに叶わずにいた。
「それは御愁傷様。ついでに毛生え薬のレシピとむくみ取りポーション以外の素材も送っておく?」
「それをしていただけるのはありがたいんですが、先輩に借りを作るのすごい怖いんですが」
何を要求されるのか、まだ交渉が纏まり切ってもないのに安請け合いできないと身構える。
「あら酷いわ。同じ志を持つ者としての親切心なのに」
「望月先輩、たまに思ってもないことを平気で口にしますから。まぁいいですよ、私は何をすれば良いんですか?」
「大手製薬で管理してるレシピを調べて欲しいの」
「社外秘ですよ? それを知ってどうするつもりなんです?」
「実はいくつか泡銭が手に入る予定なのだけど、それで御社の株を買おうと思ってるのよ。35%くらい」
会社の3割を買い占める。そう宣う望月ヒカリに会社を乗っ取られるのではという考えを想起させる美作。
だとしても自分の損益は少ない。
否、なんだったら今すぐに社長の首をすげ替えてもらっても問題ないくらいだ。
安全神話の上に胡座を描いた研究員はクビになった3人以外にもまだまだ沢山いる。
のらりくらりと社長の追求を交わして自分の地位を守る奴らが。
その首がすげ変わるのならいっそ清々しいとも言える。
「それは僥倖ですね。ウチにそこまでの価値があるとは思えませんけど」
正直大手企業だったのは数ヶ月以上前んでのこと。
今や落ち目で株価も随分と下がった。買い取ったところで損切りされる未来だって見える。
「価値なんていくらだって作れるわ。先輩のね、研究室として扱っても良いの。その際必要ない人は解雇しちゃうけど。アカリちゃんは残してあげるわね?」
それは悪魔との契約のようであった。
昔であれば一介の研究員、雇われの身である美作は一、二にもなく飛びついたであろう。
しかし今は人の上に立つ立場を得ている。
育てている後輩を切ると言われて首を縦に振れる美作ではない。
「残念ですが、人を育てる側に立ったので了承できかねます」
「それは残念ね。では古巣は手を出さずにすることにするわ」
「ならレシピの写しを送れば交渉は成立でしょうか?」
「送らなくて良いわ。私が直接受け取りに行くから」
「え、先輩外出できるんですか?」
「出来るわよ? じゃないと先輩のお洋服の買い出しにも行けないじゃない」
「え、だってマスコミや報道関係者が見張ってるって話じゃ?」
「これは貴女にだから言うのだけど。実は人体を直接転送する実験は既に最終フェーズに入っているの」
「学会に発表したら大騒ぎですよ!?」
「それをするメリットが私達にないのよね。それでアカリちゃん、配送については今後私たちの場所へ直接転送して欲しいの。それを起動させるためのアイテムも持っていくわ。それまでに写しを終わらせておいてくれる?」
アイテムの転送なんてまだ世界でどこも発表してない超技術だ。
かろうじてダンジョンが全く別のダンジョンに送る転移陣が先んじて発表されたくらいで、それを人為的に再現できたなんて……
いいや、実際に先輩はマジックポーチを完成させているのだ。
それは世界に向けて発表したのと同意ではないのか?
美作は考えを巡らせ、望月との再会を待ち望んだ。
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一方その頃、アメリアは。
祖父に何度目かの嘆願に来ていた。身内とは言え超VIP同士。
面会が許されるのはその肩書きも大きく影響する。
ただのロリではない。
実力派の合法ロリとして広く認知されているアメリアである。その顔の広さという意味でもワシントンD.C.でも人気は知れ渡っていた。
歴代大統領と言えどもお引き取り願う事は許されないくらいには機嫌を損ねたら国民から総スカンを喰らうのだ。次の選挙に勝ち残るためにも無碍にはできずにいた。
「じぃじ、センパイはアメリカに住んでくれるかなぁ?」
「それはまだわからんぞ? 彼の境遇は我々の国で扱い切れるものではない。世界中の人々が欲するものだ」
大統領クリム=カスターは孫のお願いをシワの刻まれた笑顔で受け止める。
歳は70を少し越えたぐらいだが、頭部はまだまだ若さを保っていた。
先輩の作った毛生え薬はクリムもまた愛用していたのだ。
女性が肌の手入れを嗜むのと同様に、男性も若かりし頃の頭髪を追い求める。
クリムも随分と抜け落ちた頭髪を固めて整えてなんとか誤魔化してきたが、ついにはまとめていた部分が抜け落ちた。
ストレスによるものだと胃痛とともに知らせてくれる。
だが困窮していたクリムの前に新たに希望が舞い降りた。
それが孫のアメリアと同じくSランク探索者のキングが手に入れた盾。
毛根の成長を犠牲に圧倒的なタフネスをその場に展開する。
彼が存在することによって常に死傷者の数に目を瞑ってきたSランクダンジョンの安定した探索と資源の供給がもたらされたのだ。
クリム以上に激しく散らしていたキングが、いつの日か何事もなかったようにフサフサになっているのを知ったクリムは先輩の毛生え薬を知り、今も愛用していた。
妻や娘たちも夢中になる。孫も欲しいとねだる。家族になるのならくれてやっても良いくらいには凄腕だと見つめている。
年齢は32歳と27歳。
見た目の問題に目を詰めれば結婚は遅いくらいだ。
あのままダンジョンと結婚するのではないかと恐れていた孫娘が、女の顔をしながら紹介してきた相手だ。
クリムも覚悟は決めていた。
「首相、安倍川総理が訪問しにいらしました」
「今行く」
毛が増えたことにより、いつもより漲る活力を身体中で感じ取る。
相手国の管理不行き届きによる弁解なんて聞く耳を持つ必要がない。
孫の相手一つ奪い取れずしてアメリカの首相などやれん。
クリムは迷い込んだ蚊を追い払う姿勢で会談に臨んだ。
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「あれ? 今日どこか出かけるの?」
後輩が普段以上にめかし込んでいる。
普段着というよりは随分とパリッとしている仕事着だ。
僕の服は全部
「実はトールさんといくつか契約を進めてまして。主に先輩の扱えるダンジョン素材や、その見返りのレシピなんかの契約ですね。面白かったらBWに反映されるみたいです。ゲームで用途をバッチリ広めてからダンジョンでも活用するみたいですね」
「へぇ、考えてるじゃん。それで、その素材はいつ届くの?」
「食料や水分と一緒に。赤い箱に入れられてるのがあったらそれです。自由に使ってくださいね」
「はーい。それで今日の帰りは遅くなる?」
「そうですね。夕方には帰りますけど。何かご予定でも?」
「ううん、帰ってくるならそれで良いや。いってらっしゃい」
「いってまいります」
なんか今生の分かれみたいな悲壮感を全身から匂わせてるから何事かと思ったよ。
何にもないなら良いか。
さーて早速転送品の受け取りに行く。
これかな? ヒートホークの肝。
新しい素材だ。
Aランクダンジョンの狡猾なモンスターで、この状態で手に入れられたのはカチカチスライム君のおかげだとも添付されている。
見た目がアレだったから極悪非道かと思ったけど、こう言った素材が届くんなら得だよね。
あ、もしかしてアレの代用品になるかな? 早速実験だ!
ワクワクが止まらない。
だってこれ、エリクサーの素材の一つである、フェニックスの肝と似たような性質を持っているんだもの。
もしかしたら代替え品で蘇生効果までついたエリクサーもどきが作れるかもしれないぞ!
そんな興奮が僕の中で暴れ回った。
あー、公開する日が楽しみだなぁ!
流石に制作難易度は180以上になるから相当後回しにされるけど、後輩に伝えたらきっと飛び上がって喜ぶに違いない。
普段サプライズされっぱなしの僕が逆にサプライズしてやるのだ。
ふふふ、楽しみだなぁ。
きっといっぱい撫でてくれるだろう。
って、僕は撫でられる事は別に全然嬉しくないけどね?
なんか子供扱いされててムカつくし。
まぁ後輩からされる分には構わないと、そういう事だ。
それはそうと筋肉ムキムキポーションと。
身長伸び伸びポーションの研究も続けなきゃ。
あと一歩のところで何故か失敗するんだよなぁ?
放置時間が長いのが問題か。
まさか後輩が意図的に失敗させてるんじゃという気もしないでもないけど。
まぁこればかりは仕方ないか。
『ハロハローセンパイ。今暇〜?』
悩んでいたところにアメリアさんから電話をもらう。
何事かと思ったら、オフでゲームしないかってBWのお誘いが来た。
ちょうど研究もひと段落したし、息抜きにちょうど良いか。
『暇じゃないけど、一息つくところ』
『ちょうど良かった! 実はハードで詰まっててさぁ、センパイの力がどうしても必要なんだ〜』
なんでこの人ソロでハードを遊んでるの?
誘うにしたってもっともらしい言い訳あるでしょ? と思いつつも実際にウェーブ3まで行ったと聞いて人外を極めてきてるなと痛感する。
これがSランクか、と世界の広さを思い知ったよね。
『これは配信しなくても良いの?』
『普通に遊びのお誘い。ダメ?』
『ダメじゃない、やろう』
『やったー』
僕は束の間のひととき、アメリアと一緒にBWで遊んだ。
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【新アイテム】バトルウェーブ公式雑談板【続々】
001.ナナシのエクスプローラー
ここでは最近イベント中のBWことバトルウェーブについて語っていくところです。とある配信者の参戦によって非常に幅広い戦略が取れるようになった本作。実際にダンジョン内で扱える装備も充実したとのことで、ゲーム内外で早くもざわついてるご様子。
生産プレイヤーが喉から手が出る時短レシピなども公開中
どう考えてもゴミみたいな売却必須アイテムから出来上がる殺戮兵器をご堪能あれ!
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072.ナナシのエクスプローラー
誰か〜生産2、戦闘4でパーティ組みませんか?
@戦闘2募集
073.ナナシのエクスプローラー
生産系の応募が間に合わねぇ!
求む、生産!
074.ナナシのエクスプローラー
今のイベントにおける生産の重要性は爆伸びだからな
075.ナナシのエクスプローラー
生産なんて誰でもできるだろ?
076.ナナシのエクスプローラー
実際にレシピ覚えてるだけで良いしな
077.ナナシのエクスプローラー
そのレシピが多岐に渡るから暴れたい系か戦略系かで戦闘組と揉めるんだよ
ドロップは共通だしな
人手が増えても生産同士でどっちの方向で行くかも揉めるし
そもそも例の配信者クラスを求められたら誰も敵わない件
078.ナナシのエクスプローラー
アレは戦闘も含めて頭おかしいから
079.ナナシのエクスプローラー
アメリアちゃん、ノーマルどころかハードも無双してたしな
080.ナナシのエクスプローラー
あれ、先輩を煽っての自滅だから煽らなきゃひっくり返されてたぞ?
081.ナナシのエクスプローラー
あの時のリスナーのマナーは酷かったからな
082.ナナシのエクスプローラー
後輩ちゃんのフィルター、先輩を煽てる系のコメントはガバガバだもんな
悪口は徹底的に排除されるけど
083.ナナシのエクスプローラー
わかる
084.ナナシのエクスプローラー
【悲報】アメリア&先輩タッグ、ハードモードの一位に名を連ねる
クリアタイム00:05:00とか正気か?
085.ナナシのエクスプローラー
オフコラボかな?
086.ナナシのエクスプローラー
リスナー無視したらそれくらいが妥当じゃね?
どっちも専門分野だし
087.ナナシのエクスプローラー
専門分野だろうと、数こなす前提量を計算して扱える人が一体どれだけいるんだ?
088.ナナシのエクスプローラー
先輩は企業にいたわけだし、大量生産もお手のものってだけだろ?
4日で2万本のポーションだっけ?
作れる人ってそれなりにいるんじゃね?
知らんけど
089.ナナシのエクスプローラー
あれさ、正直裏技的なことやってて
ポーションじゃないものをポーションと偽ってて出してたらしいんだよね
090.ナナシのエクスプローラー
聞いた聞いた
超薄めたエリクサーをポーションとして誤魔化したって聞いて
脳がバグったのを覚えてる
091.ナナシのエクスプローラー
>>89 わかる
>>90 どういうこと!?
092.ナナシのエクスプローラー
普通はそうなるよ
もどきとは言えエリクサー作ってたって発言したからな
あいにくと蘇生効果ないって聞いて
まぁ効果が高いだけのポーションならええやろぐらいに留めてる人居たし
093.ナナシのエクスプローラー
まず薄めたエリクサーがどの程度の効果持ってたかってことだよ
094.ナナシのエクスプローラー
通常ポーション品質C:回復量10% 苦い
通常ポーション品質B:回復量13% お、味変わった?
通常ポーション品質A:回復量15% ミントティー
模倣エリクサー品質C:回復量25% オレンジジュース
模倣エリクサー品質B:回復量28% グレープジュース
模倣エリクサー品質A:回復量30% ミックスジュース
095.ナナシのエクスプローラー
>>94
これマジ?
096.ナナシのエクスプローラー
一時期某メーカーのポーション、回復量が高いことでもてはやされてた時なかった?
097.ナナシのエクスプローラー
あのフルーティポーションの制作者、先輩だったのか!
駆け出し時代にめっちゃお世話になりました!
098.ナナシのエクスプローラー
現役探索者さんオッスオッス
>>94
ハイポーションの回復量超えんな!
これでポーションとして偽るのは無理でしょ!
099.ナナシのエクスプローラー
これが罷り通ってた時代の探索者裏山
今は品質Aポーションすらお目にかかれないからな
だから探索者の先輩達が過去を羨ましがってたのか
100.ナナシのエクスプローラー
それな
ゲームでも早くそれ使わせてくれー
101.ナナシのエクスプローラー
相当終盤、デスマーチクラスじゃなきゃ解禁されなくね?
102.ナナシのエクスプローラー
デスマーチだと出番もなく終了やろ
攻撃喰らったら即死だからな
回復量云々の話じゃない
103.ナナシのエクスプローラー
デスマーチにもなればカチカチスライム君からの炸裂玉コンボがハマれば資金美味そう
104.ナナシのエクスプローラー
実際にそれで例のタッグが上位に食い込んでるからな
圧倒的な戦力で草が枯れる勢いだよwww
105.ナナシのエクスプローラー
もう出禁にしろ、その二人!
106.ナナシのエクスプローラー
出禁にしたところでお前の腕前が上がるわけじゃないけどな
107.ナナシのエクスプローラー
真のプレイヤーなら参考にすべき
タッグに負けてる時点で見直す点が多いってことよ
108.ナナシのエクスプローラー
無理www
通話でやりとりしてるとは言え、あの二人は状況見ながら次に欲しいものが阿吽の呼吸でやり取りできてるよ
まるで実際にタッグ組んでダンジョン潜ってるかのような通じっぷりだよ
え、ゲームブランクあるんだよね?
109.ナナシのエクスプローラー
好きなものだからコツを掴んだら早かっただけ
110.ナナシのエクスプローラー
そっかー
111.ナナシのエクスプローラー
草
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一方その頃、望月は待ち合わせのポーション部署の倉庫で再び美作と見合っていた。足元には転送陣。入り口と出口では違う転送陣が敷かれている。
「お久しぶり」
「さっき電話で話したばかりですよ?」
「でもこうして会うのは本当に久しぶりでしょ?」
「ええ、そうですね。先輩は……またお綺麗になられました?」
「煽てても何も出ないわよ?」
美作はべっと舌を出す。気をよくしてもう一本むくみ取りポーションを弾んでもらおうとする計画は座礁した。
「こちら、例のレシピの写しとなります」
ありがとう、と受け取りながら流し読む。お目当てのレシピは無かったのか、すぐに美作へとレシピを渡した。
「必要となるものは見つからなかったですか?」
「ええ、こちらとしてはあるはずべきのものがない、と言ったところかしら」
「あるはずべきの物が? それは一体……」
「もうここまで協力してくれてるのなら隠し通すのは無理ね。アカリちゃん、槍込聖という研究員をご存知?」
「確か先輩が辞めるのと同じタイミングで辞めたポーション部署の専任……もしかして?」
「ええ、先輩はその人よ。その人曰く、熟練度100以上で発見したレシピはとある人物を経由して会社に登録されてるはずなの」
「その人物とは?」
「あなたのよく知る人物。元上司の大塚晃」
「大塚主任が!?」
「ええ、それと鷹取主任、富野主任は結託して先輩に結構な無茶を通してたみたいなの。本人は気にも止めてなかったようだけど、私としては歯痒かったわ。週のノルマ二万なんてのはそれぞれの部署のノルマを一人でやり遂げた物なのよ。あなた、確かハイポーションの部署にいたわよね? その時週のノルマは幾つだったかしら?」
「それは……」
週5000個を20人で一人250個。
普通に考えればそれぐらいが妥当だが、大塚主任が劇的な生成法を見つけたとして一人当たりのノルマは週50とされていた。元の数値で1/5だ。
特にそのことに疑問を覚えなかった美作であるが、確かに今思えばおかしな事ばかりである。
まさかそんな不正をしていたなんて思いもしなかった。
「その、槍込さんは……?」
「私が社長に掛け合ってクビにしてもらったの。もうこれ以上搾取される場面を見たく無かったから」
「それで大塚主任は焦っていたんですね」
「例の三馬鹿はとことん追い詰めるつもりで居たけど……」
憤る望月に対し、美作は首を横に振った。
「もう既に責任を問われて会社をクビに」
「錬金術師としてはまだ生きてるのが厄介よね。そして例のレシピはその馬鹿たちが握ってる」
「握っていたとして、作れますか?」
「作れないでしょうね。でも作れる人に売ればお金は手に入る。それを元手に企業する可能性はあるわね」
「情報を手に入れたら連絡します」
「良いの? もう顔も見たくないでしょ?」
「良いんです。先輩がトドメを刺すのをお手伝いするくらいはさせてください。知らなかったとは言え、先輩の苦行に加担していた罪滅ぼしみたいな物ですから」
望月は内心で同罪だと怒り心頭だったが、それでもまだ話が通じる相手として怒りを収める。
「まぁ良いわ。そういうことにしておきます。けどガンガン仕事は振るのでそのつもりで」
「その際はお手柔らかに」
「それとこれも渡しておくわね」
手渡したのは腕時計型のコンソールだ。
手本を見せてやり、転送陣の起動チェックと転送方法、転送品の受け取りを習った。
今度からその力を自分が扱えることと知りテンションが上がる。
「これからはやりとりはこれで済ますわ。電話やメールだと記録に残っちゃうでしょ?」
「なんか悪い事してるみたいですね」
「人によっては不都合なこともこれから起こるわ。その際に巻き込みたくないの」
「先輩……今はそう思っておきますね」
先ほどと同様に丸め込むのを失敗した望月はべっと舌を出した。
二人はなんだかんだで似た者同士である。
お互いに腹の探り合いは得意ではなかった。