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第13話 先輩、コラボする③

救助した四人組は無事入り口まで送られた。

こういう意味でもパーティをしょっちゅう分散させるのもあって複数パーティを組んでるのだそうだ。


「それにしてもあれだね、アメリアさんの武器でも傷をつけられない敵が出てくるのって結構やばいんじゃないの?」


<コメント>

:そういえばそうじゃん!

:先輩何かいいアイディアないの?


「そこは僕の出る幕じゃないと思うんだが。鍛治の人、居ませんか〜?」


<コメント>

ガンドルフ:最新作なんだが、相性の問題もあるな

:いっそ炸裂玉先端につけるとか

:おいぃいいい!?

:使用者も死ぬだろそれ!

アメリア:物理ダメージは一切効いてない感じはしたな壁殴ってるみたい

ガンドルフ:物理無効?

:そこで壁を吹っ飛ばす炸裂玉の登場ですよ

:近距離武器に持たせる威力じゃねーぞ?

:じゃあトールさんにグレネード持たせるとか?

トール:身の危険は変わんないんすよね

:先輩、なんかアイディアない? 武器の強化以外で


「君達、僕が何でもかんでも知ってると思ったら大間違いだよ?」

「そうですよ。壁に穴を開けるならドリルだ! とか言い出すに決まってます!」

「そりゃ言うだろう? 鑿岩機か。ちょっと待ってて、確かここら辺に……あった。後輩、テロップ出せる?」

「どんなのです?」

「こんなの」


<コメント>

:この人ら、アドリブで生きてんのか?

:無茶振りしてんのに対応してくんのは流石に草

:しかしドリルかぁ

:錬金術のレシピでいいやつあるの?


「錬金術というよりは魔導具の一種なんだけど、こういう構造で……ここにとある薬品を混ぜるとこうなる」


探索中のダンジョンの画面が少し小さくなって右端へ。

僕の手元には扇風機の羽根があり。そこへ薬品を垂らすとその場でくるくると勢いよく回った。


<コメント>

:なんだそれ!

:羽根以外ないのになんでその場で空飛んでるの?

:そのレシピなんだ?

:先輩がまた変なの作ってる!


「変なの言うな。まぁ僕も使い道に困っていた物なんだ。ただドリルの機構に組み込むならダンジョン内でも使えると思って。どうかな?」


<コメント>

:肝心の出力がわからない以上、ただ回るだけは少し心許ないな

ローディック:いや、十分だ。これは自転し続けるのか?

:ローディック師が食いついた!

:急に天才同士にしかわからない会話になったぞ


「ええ。なので電池代わりに使えないかって。ダンジョン内では発電が出来ませんよね? ですがこれを使えば電力に置き換えられたらいいなって。これはほんの思いつきなんですけど」


<コメント>

ローディック:レシピの公開を頼んでもいいかな?


まぁどうせ僕の手元にあっても使わないので公開する。

制作難易度は30だが、素材の入手の方が大変だ。


<コメント>

:キングフロッグの舌www

:マーマインの肝www

:超濃縮目薬www

:お前ら素材に草生やすな

:これ絶対素材が目を回して自転してるだろ!

:ガンギマリポーションの素材がここで出るかー

:でも制作難易度30なのは優しくね?

:素材がCランクの中層レベルだし、普通に見向きもされないゴミだから

:まぁ使い道もないしなwww

:いや、これダンジョン内で発電できるかもだから需要来るかもだぞ?

:ローディック師次第か!

ローディック:ふむ、面白い

:おつくりになられましたか?

:そんなすぐできるわけないやろ! 素材すらないんやぞ!?

ローディック:いいや、出来た。すぐに現場に届けよう

キング:実は今回ローディック師の参加はトールの協力のもと実現した

トール:まさか配信に割って入るとは思ってなかったっすけど

ローディック:こんな面白い試み、置いてけぼりにされては敵わぬからな

:まさかの出来レースだった!?

:なんで出来レースだよ、サプライズだろ?

:出来レースだったら行方不明者込みで仕込みだからな

:それは不謹慎すぐる

ガンドルフ:俺も参加したいが、用事があって行けないのが惜しまれる

キング:武器屋は現場で自作品が活躍するのを見守るしかねーよ

ガンドルフ:どちらかと言えば俺の作品以外が目立ってる気がするが

トール:言えてるっすね!

アメリア:アタシも先輩の武器欲しい!


なんか知らないけど僕の方に矛先が飛んできた。

僕ただの錬金術師だよ?


「で、トールのところでドリルっぽいのは用意できるの?」

「あの会社ならすぐにご用意できるでしょうが、武器に取り付けるとなると専用の工具が必要になるかと」

「え、カチカチスライム君でつければ良くない?」


<コメント>

:それだ!

:それだ!

:いやいやいや、ドリルの振動に耐えられんの?


「何言ってんの? 耐えられるに決まってるじゃない。僕が配送の緩衝材に使ったのは粉戦地帯やダンジョン内でも破損しないように配慮したおかげなんだから。もちろん炸裂玉にもね。あ、でも熟練度50以上は保証できないかな? 後輩の炸裂玉でしか検証してないから」


<コメント>

:おいソレ……

:さっき魔法陣吹っ飛ばした熟練度幾つだっけ?

:熟練度30だな

:で、50までは耐えられる?

:おいおいおいおいおい!

:カチカチスライム君を先端につけてその中で熟練度30の炸裂だ!

:天才か?

:天災の間違いだろ

:あのさぁ、現場の人のこともっと考えてあげて


『面白い! アタシの武器はそれでいい。投擲槍でどうだ?』


<コメント>

:アメリアちゃん乗ったーー!!

:もうカチカチスライム君で盾作ろうぜ

:人の体で耐えられんのかよ、ソレ

:キングは耐えてるだろ?

:あたおかの盾を持ってるから耐えられてるんやで?

:先輩の作品だもんな、そう言えば

:ハゲる呪いが仕込まれてるやつ

:もうやめてぇ! キングのライフはとっくにゼロよ!

:次回、キング死す!

:勝手に殺すな

:キングなら頭部の毛根を犠牲にして生き残るだろ?

:それな


僕ですらそこまでいじらないのに、この人達命が惜しくないのかな?

相手は仮にもSランクなのにさ。匿名ってこうまで強気になれるから怖いよね。

命がかかってないから言いたい放題っていうか。

まぁ僕も似た様なもんか。


で、ローディック師の手によって小型の発電機がダンジョンに送り込まれる。

アメリアさんの武器はどうみても物騒なチェーンソーとなっていた。

魔導具らしく、魔力を込めると勝手に自転し充電。エネルギーマックスで回せばブォオンと轟音を撒き散らして大木とか切断しそうだ。

それで岩が切れるかは知らないけど、いざとなったら炸裂玉で吹っ飛ばせばいいんじゃないの? 現場はそんな空気に包まれていた。


トールに送ったレシピで大量生産されたのか、ポーチからいくつもカチカチスライム君が補充される。イヤホン型通信機でやりとりしてるのか、探索は補充がある程度揃ってから進んだ。


モンスターとの接敵で分かったのは、どいつもこいつもSランクダンジョンではみたことないタイプ。

腕が四本あったり、首が二本あったり、肌が鋼のように固かったりと特殊個体と呼ぶに相応しいモンスターが揃い踏みした。


これはSSランクダンジョンではないか? という見立てが考察される。

今回は僕以外にも何人かの専門家がチャンネルを閲覧していたこともあり、リスナーそっちのけで考察が捗っていた。


本当ならもっと手に汗握る配信のはずだが、要所要所で僕に話題が振られ、答えることで道が開ける。救助も成功して余力も残し奥へ奥へと進んでいく。

順風満帆という言葉がこれほど似合う配信もないだろう。


「いやぁ、お見事」


コアはレベル90の炸裂玉で部屋ごと爆破した。命あっての物種だ。

帰るまでが遠足というのもあり、一人の怪我人も出さずに帰還するには致し方ない事だったのだ。


「最後は力技でしたねぇ」


道中は徒歩である。

普通ならここで罵詈雑言とか飛んできてもおかしくないのだが、中にいたモンスターの様子が明らかにおかしかったので部屋ごと爆殺するのに全員からの同意を得た上での爆殺だ。


実際に倒せるかどうかは賭けだったが、あらかじめ扉にカチカチスライム君をコーティング、ボーリングの要領で30個の炸裂玉を部屋に転がし、トールがトドメの炸裂玉をグレネードよろしく発射してすぐに部屋の扉を閉めて凝結。

あとはダッシュで逃げた。


<コメント>

:ドラゴンとか初めてみたぞ?

:しかも首が8本あった

:あれ絶対ラスボスとかそういう類だろ!

:ていうかあれで死ぬのか?

:炸裂玉君強すぎぃ!

:首ごとに色も違ってたし、きっと再生持ち

:普通に炸裂玉で死ぬのギャグだろ

:最後の断末魔は笑ったわ

:ギョエエエエ×8

:ボスでもダンジョンの壁は壊せないって分かったのは特ダネだわwww

:もうこれからダンジョンの攻略は炸裂玉でいいんじゃね?


『それでタダ働きとか政府以前に俺らが骨折り損のくたびれ儲けだわ』


キングがぼやく。前回の富士の樹海ダンジョンで稼げなかった時のことをいまだに恨んでいる様だ。

いや、力と引き換えに毛髪を失ったことへの恨みか?

生きてるだけで丸儲けだろうに。図体はでかいくせに器の小さい男だ。


<コメント>

:ボス素材は高価ですもんねwww

:じゃあ今回は結構な損害だった?

:損害よりこの戦力失う方が怖いわ

:普通ならSランクってもっと緊迫する場面が多いんよ

:先輩のおかげで道中ギャグになったよな

:オチまでギャグじゃねぇか! 良い加減にしろ!

:なぁあれ、試練系のボスとかじゃねぇの?

:倒せば固有スキル貰える的な?

:絶対何人か死ぬやつじゃん

:人命救助がメインの探索で挑む相手じゃねぇ!

:ほんそれ


『でもさ、今日の探索は先輩と一緒だったからずっと安心できた。またコラボして良いか?』

「僕なんかでよければいつでもどうぞ」

『じゃ、明日!』


<コメント>

:いや草

:性急すぎんだろ

:スタミナまで化け物か?


「まぁ、無事に帰ってきたらオフ会しましょう」

『絶対だぞ!』


そんなこんなで帰宅までしっかり配信後、向こう側の通信が切れる。


「いやぁ、現場の迫力は映像越しでも大興奮でしたね。先輩」

「ねー。柄にもなく手に汗握ったよ」


<コメント>

:嘘つけ

:画面の中でアイス食ってたろ?

:テレビの向こう側の話だったろ?

:俺らもそうだが

:Sランクダンジョン配信はキングもそうだが、普通は政府から許可降りないからな

:そう言えばそうじゃん。先輩はどうやって日本政府を躱したの?


あ、そこからか。

僕は、うーんと考えて、口を開く。


「なんで私達が日本政府如きに命令されなきゃいけないんですか?」


はい、後輩そのコメントはアウトです。


<コメント>

:おい、日本国民!

:国籍日本でしょ、このチャンネルも日本人向け放送だし


「あー、なんというかな。僕たちはいろんな場所に国籍を持っている。で、今はハワイにいるわけだが。かれこれ数週間、日本に帰ってない。どうせ特定班が僕の住所暴いて晒すだろうと予測してるから帰ってないわけだが」


<コメント>

:あー、むくみ取りポーション関連か!

:そういえばハッカーたちが騒いでたな

:本名公開はされてたっぽいけど、ご本人?


「それを認知するつもりはないとだけ。というか、レシピ公開したのにまだ騒ぐ人がいるんですか? 随分と暇なんですね」

「後輩、お口悪いよ?」

「反省してまーす」


<コメント>

:絶対反省してなくて草

:謝る気ゼロだよこの子

:まぁ実際先輩達はなんも悪くないし

:全ては転売厨と便乗商法が悪いから

:先輩達は値段に関与してないもんね

:あれって後輩ちゃんが煽ったのが始まりじゃなかったっけ?


「よく覚えていないんですが、私はありのままの事実を語っただけです。ちなみに、むくみが取れるのは品質Bからで、肌のケアができるのは品質Aから。肌のダメージ全回復は品質Sからです♡ それ以外はニッガイだけのポーションなのでせいぜい足掻いてくださいね!」


<コメント>

:嘘は言ってないけど、今その情報出すかぁ?

:草

:品質縛りかぁ

:実際Sを確実に入手するにはこのチャンネルの当選を祈るしかないじゃんか!

:あの、当選者数を増やす予定は?


「ないでぇす!」


<コメント>

:満面の笑みである

:ムカつく顔してるわ〜〜

:守りたい、この笑顔

:まぁ実際手間だし、レシピの解禁してるしで欲しけりゃ自作しろって言えるし

:先輩、チャンネル登録者数7000万人達成おめでとう御座います!

:伸びがやばい

:アメリアファンからの流入が多いみたい

:実際にアメリアを無事に帰還させた実績もあるしな

:道中の安全確保も先輩のアドバイスあってのモンだしな

:何よりアメリアからの信頼が高かった

:ほぼ姉妹だもんな

:炸裂玉がトレンドに乗ってるんだがwww

:アレは出禁待ったなしだろwww

:あれ、実は先輩ってすごい?


「凄くないよ? 普通、普通。どこにでも居るおじさんだから」


<コメント>

:おじさんはドレス着て寛がないんだよなぁ

:先輩、ドレス似合ってますね?

:¥100,000/衣装代

:¥100,000/7,000万人達成記念

:もっと気前よく7000万出せ!

:お前が出せよ、貧乏人

:実際、一人一円出せば実現可能なのがね

:誰か俺にくれないかなぁ?

:自分でチャンネル開設しろ!

:乞食醜いよ?


結局配信を終了までこんなノリで。

終了間際は文句言いながらも自作を楽しみに待っているというコメントが多かった。特にキングの主張が強かったので、次の配信は二ヶ月後にでもしようかな?


別に毎日配信するなんて言ってないしね。



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