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第11話 先輩、コラボする その1

「え、コラボ?」


後輩が意外なところから仕事を持ってきた。

相手は現役Sランク探索者のアメリア・カスターさん。

米国首相の遠縁の孫で、登録者数もウチと同等で、年も近いから良い相手だと紹介される。


年齢とかは関係なくない?

お見合いじゃないんだからさ。

とまぁ、余計なことを考えたところで実際に会話してみなきゃわからない。

そこで電話を通じて話してみたら意気投合。

探索者だけど僕達の配信を見て錬金術に興味を持ってくれたみたい。


最初こそは相手が女性だし、美肌効果のあるポーション関連だろうなと落胆してたのだけど、興味を持ってくれたのが全く別の快癒湿布や眼精疲労ポーションだったのがツボって。

もうね、発想というか想像力が僕なんかの使用方法を大きく上回る子だったので、これは僕にも成長の余地があるかもとコラボを引き受けさせてもらった次第である。


配信者にとって、登録者数はステータス。

僕達が6000万なのに対し、相手が100万だと萎縮してしまうが。

今回コラボしてくれるアメリアさんは6700万と僕達より格上。

ある意味でちょうど良い相手とも言えた。


「こんにちわ。今日はなんとコラボ配信! 初コラボなので緊張して二時間しか眠れなかった先輩と」

「普段から寝てない先輩に眠剤を投与する機会を伺う後輩の錬金チャンネル、始まりますよー」


<コメント>

:やんや、やんや

:寝てないアピールは草

:普段は徹夜なのどうして?

:社畜根性が行き渡ってる


「え? 錬金術が楽しくて気がついたら日を跨いでたなんてしょっちゅうでしょ?」

「先輩は普段からこうです。また倒れますよ、って言ってもまるで聞く耳持ってくれないんです。誰か睡眠薬開発してくれませんか? 超強力な」


<コメント>

:自分で作れ定期

:コラボ相手誰ー?

:もう日本にコラボできる相手なんていないだろ常考

:企業はやめてよ?

:企業とか、お願いする側だろ


『へロー、聞こえる? ナイストゥミーチュー、アメリアよー?』

「大丈夫です。バッチリ聞こえてますよー」

『今日はよろしくお願いねー』


画面中央にはどこかのダンジョンが映し出される。

以前ガイウスやキング達の配信みたいにアーカイブ化したものを再生したのではない事は今のでご理解いただけた事だろう。

何せ僕の対応に逐一返事が返ってくるからだ。


<コメント>

:アメリア!? もしかしてアメリア・カスター!?

:エッッッッッッ

:じゃあここカリフォルニア州の大規模ダンジョンか!

:フォロワー6700万の大御所じゃん!

:先輩達もなんだかんだ6000万あるからな

:じゃあちょうど良いか


「いつの間に増えたの!?」


3000万からそう簡単に増えないでよ! 僕がびっくりするから。


<コメント>

:¥50,000/なんで本人が驚いてるんですかねぇ?

:¥100,000/衣装代

:¥100,000/衣装代

:高額スパチャニキチィィーッス

:伝統芸

:もっと課金させろ

:グッズ枠もっと増やしてこ? 再販募集

キング:毛生え薬再販希望

:キング! あの盾愛用してるのか?

:散々産廃だって言ってたのに!


「え、やだ。あとでレシピ配るからお抱えの錬金術師に作らせなよ」


<コメント>

:草

キング:誰がお前のレシピを作れるって話しだよ!

:キング、その髪型似合ってるぞ?

:髪がないんですがそれは……

:やめて差し上げろ

:OH、プリティガール

:キングイズデストローイ、ワオ!

:英国ニキ達おっすおっす

:同時翻訳実装は草

:翻訳精度低くない?


「プリティガールはそっち」

「しかしそこには誰もいなかった!」


僕は後輩がいた場所の壁を指す。

今や後輩は壁と同化し、天の声と化した。

画面には僕だけがいれば良いと、そう主張する。

やだよ。

一緒にいてよ。


「どうも、後輩こと天の声です。私は先輩を見守られたらそれで良いので、存在を消しました。私のことは気にせず、先輩を愛でていってくださいね!」


<コメント>

:タイトル詐欺してて草

:後輩ちゃん、消えてしまうの?


「代わりにゲストのアメリアさんを私の場所に置いておきますね。先輩もこれなら寂しくないでしょう?」


いや、そういう問題ではない。

連絡を取り付けたのはたったの3日前。

一体どこでそんなデータ揃えていたのやら。

睡眠してないのは君も一緒じゃないの。

さては眼精疲労ポーションを服用してるな?

どうりで僕と同じように眼光がぎらついてると思った。


<コメント>

:あらかわいい

:喋ってることがログに残されててかわいいね

:こうやって先輩と並べると姉妹みたいだねー


「誰が女の子か! それにアメリアさんは27歳。立派な大人の女性だからあまり揶揄いすぎないように。このチャンネルの品位は君たちのコメントひとつで失いかねないんだからね?」

「だから問題になりそうな発言を見つけ次第、徹底的に削除しますし、開示請求もしますので、震えて待て!」


<コメント>

:こわ

:後輩ちゃんならやりそう

:わかる。威圧すごいもんな

:壁になる前はニコニコ気を遣ってたのに

:壁になってからはっちゃけ始めたもんな

:わかる

:わかる


めちゃくちゃ怖がられてて草。

まぁ後輩はやる時は徹底してやるタチだからね。

有無を言わせない威圧が僕以外にも襲いかかるのはドンマイ、て感じだ。

手綱を握ってろって? 無理無理。

僕のいうこと聞かないから、彼女。

言うこと聞いてくれる子だったら、今頃僕はこんな格好で配信してないもん。

圧に負けたのか、みんな素直なコメントを発信した。


<コメント>

:はーい

:はーい

:実際に配達員無視して直接荷物が届くもんな

:謎の技術

:↑↑それまじ?

:草

:先輩、自分はいいんだ?

:先輩はもうそれが定着しちゃってるもんな


してないが? 

僕だって恥ずかしいんだぞ。

なるべく気にしないようにしてるだけだ。


<コメント>

:32歳成人男性の姿か、これが?

:社畜卒業してないのに、それ以上に残業もらってそうな面構えなの草なんよ

:¥50,000/餌代


『そろそろ始めて大丈夫? こっちの様子とか教えなくても平気?』

「うちの天の声がバッチリフォローしてくれるので大丈夫です。始めちゃってください」

『それじゃあしゅっぱーつ』


<コメント>

:かわいい

:かわいい

:27歳児かわいい

:32歳児も可愛いだろ?


「今回赴いてる先はカリフォルニア州にある大規模Sランク複合ダンジョンとなってます。アメリアさん率いる『デスパレード』の他にもトールさん率いる『バウンティ』、ハg……キングさん率いる『アデランス』も参入してますね」


<コメント>

キング:おい!

:今ハゲって言おうとしたぞ、後輩ちゃん

:パーティ名も間違ってます!

:アビスランスだから、アデランスじゃないから!

:ニアミスみたいなもんだろ

:今後アデランスって言われそう

:もうアデランスと提携しちゃえよ、かつらのお世話になってんだろ?


「さぁ、ダンジョンの一層などはまるで赤子の手をひねるが如く進んでいきます!」


<コメント>

:ダンジョンマップ自作できてえらい

:複合ダンジョンって何?

:入り口が複数あるダンジョン

:BやAのゴールがSの中層とくっついてるやつ

:ランク違いのやつが迷子になって行方不明者続出の魔境だな

:最近Sランクの入り口が見つかったことでも有名

:あざっすあざっす

:トールさんの銃撃カッケーっすわ

:ハゲも活躍してんだろ?

キング:ハゲ言うな。コメント読み上げ機能で聞こえてるから


「私が説明する手間が省けて助かります。絵で紹介するとこんな感じですね。複合というだけあって広大で、今回見つかった入り口からアタックを仕掛けています。早速先輩の遊びで作ったグッズが作戦に投入されてますね。先輩、何か感想はありますか?」

「え、マジで? っていう気分以外の何者でもない」


<コメント>

:草

:草

:当事者がついていけてないのは草なんよ

:またしても何も知らない先輩(32)


いや、本当。

なんでここで快癒湿布や眼精疲労ポーション、満腹ポーションが出てきてるのか全く謎だもん。

え、これ僕が悪いの? 錬金術師用だって言ったじゃん!


<コメント>

トール:水鉄砲、めちゃくちゃ便利っす! 再販希望っす!

:モンスターが生きたまま剥製にされるのは草

:あんな扱い想定してた?

:早速悪用されてますやーん

:めちゃくちゃ極悪な性能してるやん

:これを水鉄砲で売るのは草なんよ

:お値段がなんと¥2,500

:安い! 俺にもくれ!

:残念、売り切れでーす

:ぐわああああああ!


そこではトールによるモンスター剥製ショーが行われている。

カチカチスライム君をそうやって使うのかー。

ちょっと星砂入れてアクセサリー作ったり、そういうのを想定してたのに。


「あとでレシピ送るから、勝手に作って」


<コメント>

トール:ヒャッホー、言ってみるもんすね!

:ずるいぞ

:いや犯罪に扱われる可能性があるから当たり前

:ちなみに製作難易度は?


「135。まぁ快癒湿布作れたんなら大丈夫でしょ」


<コメント>

:アホみたいに高くて草

:そんなものを、¥2,500で、売るな!

:エクスポーションより高いのか

トール:まだ100しか居ないっすよ、うちの錬金術師

:100超えてる時点でバケモンなんよ

:さすが大手企業社長! 100超え錬金術師雇ってるとは

:先輩はその3倍なわけだが

:草

:そういえば先輩、熟練度320じゃんwww

:なんかそう思うと普通に思えてきたな、熟練度100

:あれ、実はそんなにすごくない……案外普通なのか、熟練度100

:正気に戻れ! 熟練度100は天文学的数字だからな!?

:世界に数人しかいないけどな、100以上は

:ちなみに配信内容は50までしか発表されてない

:その上に燦然と輝くエリクサー【製作難易度250】

:中間レシピ、誰か中間レシピをくれ!


「いやいや、製作難易度が高くてもさ、正直僕が作った中では使い道がなかったんだよ。プレゼント企画をやって、ようやく緩衝材に使えるかなって、そう思ったんだ。だからこんなに再販を希望されるのは想定外で」


<コメント>

:案外販売したのは正解だった?

:一人で考え込むよりは用途の幅は増えるし

:世にヤバいものが広まった、の間違いだろ

:実際にやばくて草

:なんで塩振ると元に戻るかの謎も判明されてないんだろ?

:そこは先輩しか分かんないから

:ちなみに毛生え薬は?


「それは次の通常配信でお披露目するから、再販はしないよ」


<コメント>

キング:早く! 早く!

:キング戦闘に集中して

:キングよそ見すんな!

:大丈夫、毛生え薬依存症になってない?

:かつてこれほどまでに通常配信を切望されるVが居ただろうか?

:次ってことは50の上か

:実際むくみ取りポーション作れたやついんの?

:どこかの大手が作れるって大口叩いてたけど

:名前出しちゃってるんだよなぁ

:隠せてなくて草

:あれガセだろ? すぐに声聞かなくなったし

:どうせ目の前の大金に釣られて飛びついたんだろ

:ありえる

:↑ここまでコラボ相手の画像に一切興味なし

:草

:まぁ、サクサク進んで見応えないというのはあるからな

:身内の珍プレーを途中途中で挟むからどうしてもそっちが気になる定期


「アメリアさん自身が強いからね。危なげなく進んでるから雑談が弾むんだ」


<コメント>

:キングがやらかさないかだけが心配

:それな

:探索中なのに緊張感ないもんなこいつら

:なんかこのチャンネルでだけキングさんの扱い低くない?

:愛されハゲだから

:他のチャンネルだと雲の上の扱いなのにな

:草

:そういえばこいつ日本が誇るSランクだった

:最近惨めな姿しか見せてないから忘れてた


「キングは昔からお調子者だったからね。見てて心配なのは非常にわかるよ。僕も探索者時代によく衝突したよ。お前らのせいで資源が消えたってね!」


<コメント>

キング:主原因は炸裂玉だろ、ボマー!

:え、ボマーって先輩の事だったのか!

:草

:でも二人組じゃなかったっけ?

:もしかして、もう一人って後輩ちゃん!?


「はい。モンスターは私の炸裂玉で消し飛ばしてました。先輩のはちょっとダンジョンの方が危ないので」

「それなー。お陰でダンジョン協会に出禁を言い渡されたよ。お偉いさんから直々にもう二度とダンジョンに来るなってこっぴどく怒られたよね?」

「本当ですよ。ちょっとコア消し飛ばしたくらいで大人気ない」


<コメント>

:コア消し飛ばしたのは草

アメリア:kwsk

:ご本人きちゃ

:誰も画面に集中しないからだろ

:アメリアのリスナーがキレてるけど後輩ちゃんフィルターが全部弾いてる

:みよ、我々の鉄壁ガードを!

:多分めちゃくちゃ低評価押されてる

:それで挫けるメンタルしてないだろ、先輩は

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