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第6話 先輩、記念配信をする

「皆さん、こんにちは。えー10万人登録達成配信をする前に750万人登録達成配信をする事になりそうな先輩と」

「昨日は回らないお寿司を食べにいった後輩の錬金チャンネル、始まりまーす」


<コメント>

:やんや やんや

:登録者750万人おめでとう!

:早すぎる達成

:おめでとうございます先輩!

:僕も回らないお寿司食べたーい

:まだスパチャ許可降りないんですか?

:チャンネル登録して一ヶ月の縛りなかった?

:まだ一週間経ってないの草なんよ

:初回から頭おかしかったからな

:後輩ちゃん、おめでとー!


「ありがとうございます。そんなわけで今日はレシピの公開ではなく、ちょっとした雑談とプレゼントの企画を考えているよ!」

「先輩の無茶振りは今に始まった事ではありませんが、今回は出血大サービスの品々になる事だけはお約束します。詳しい説明は後回しにしますが、総額750万円以上は下らないと自負しています」

「普通に買えばだけどね?」

「自作なので懐は傷まないと思っていても、普通は売却額を気にしますよね?」

「僕はこれぐらいなら全然自作しちゃうけどね」

「そんなの先輩だけですって」


<コメント>

:後輩ちゃんいつになく辛辣ぅ〜

:登録者750万人に合わせて750万円出費は草

:金持ってるなぁ

:錬金術は金持ちの道楽だから

:お前同業者じゃないだろ、錬金術は貧乏人の巣窟だぞ?

:探索者から見たらそう見えるんだろ

:中身超気になるなぁ

:言うて先輩の品だしな

:逆にその価値をどうやって出したかを考えようぜ

:前回の配信後、お掃除スライムを買ったものです! あれ神アイテムっすね、今後も追わせてもらいます!

:あんなの買う人いたんだ?

:やっぱ金持ちだよ錬金術師

:探索者は武器の新調で金食うが、錬金は熟練度上げに金食うからな

:維持費が異様に高いのが錬金のイメージ

:探索者もランク上げれば上がるほど消耗品高くなるから


やはり750万人ともなるとコメントの伸びがすごい。

同接が既に250万人だ。凄いよね(他人事)

生配信組とアーカイブ組で公平性を記すためにプレゼン抽選期間はアーカイブ配信から一週間とし、抽選方法はこっちが適当に決めて送ることにした。


「実は僕、趣味が高じて鍛治と魔道具製作も齧ってるから。錬金術以外のお役立ち装備も揃えてるのでお楽しみに」

「聞いてませんよ?」

「今言ったからね?」


後輩がジロリと僕を見据える。

悪かったよ、今度は事前に言うから。

サプライズの規模が大きすぎると相方を困らせるらしい。覚えた。


<コメント>

:段取りしっかりして!

:このアドリブ感、いつもの先輩だな

:錬金術で熟練度320もあれなのに、鍛治まで齧ってるのは草


「流石にメインじゃないから熟練度は低いぞ? そうだなぁ? 共に150くらいだ」


<コメント>

:ごめん、なんて?

:Sランク鍛治師のガンドルフさんが確か170だったはず

:Sランクに追いつくな!

:追い付いてはないだろ?

:門外漢みたいな顔でサラッと肉薄してるの草なんよ

:魔導具師に関しては日本の上位が98なので頂点誇って良いぞ

:世界的に見ても上位陣だろ

:本人がそれほどとも思ってないのがもうバグなんよ

:なんでこの人無名なんだ?

ガンドルフ:頭おかしいだろ

:本人きちゃ!

:鍛治の人も気にしてんのな

ガンドルフ:足掛け鍛治暦25年がちっぽけに見えるわ

:ご愁傷様です


「草」

「先輩の事ですよ?」

「なんで怒られてるの、僕?」


<コメント>

:自業自得なんだよなぁ

:後輩ちゃん、もっとしっかり手綱握ってもろて

ガンドルフ:でも溶解液は神アイテム、知り合いから手配してもらって失敗作ぶち込んで錬成し直してるわ。再練成が捗る

:鍛治職人が絶賛してるの草

:そりゃ(錬金ですら神アイテムだし)そうよ

:後輩ちゃん(=´∀`)っ【胃薬】


「誰か変わってくれませんか? 私もう疲れました」


<コメント>

:悪い、急用を思い出した

:流石にそれはちょっと

:(=´∀`)っ【胃薬】

:後輩ちゃん、君だけが頼りだ!

:後輩ちゃん、がんばえー


コメント欄は言いたい放題。

ある意味でいつも通りと言える。


「なんだい、胃薬が欲しいなら言ってくれたら作るのに」

「原因は先輩です」

「えー……」


<コメント>

:草

:草

:この人、鈍感にも程があんだろ

:わざとにしては、後輩ちゃんの対応がリアルだな

:心労でストレスがマッハ!


「まぁそんな感じで、今回は雑談枠となります。後輩にはいつもお世話になってるので幾つかプレゼントを用意しました。リスナーとのプレゼントとは別に。僕はモノづくりしか得意じゃないので、こんなので悪いけど」

「そんな、嬉しいです。先輩から初めてのプレゼントですね!」


<コメント>

:後輩ちゃん、よかったね

:いつも心配かけされてるもんね

:ところでお二人はどう言う関係なんですか?


「そう言う質問は一切受け付けてません」


<コメント>

:急に塩対応するやん、この子

:この態度の変わりようよ

:後輩ちゃん、他人には厳しいよな

:寂しい

:草

:このお互いに不器用な感じ、初々しいな


「さて、話が脱線したね。今回のプレゼント錬金術師用第一弾は僕のお手製錬金窯になります。おまけでお掃除スライムがついてきて、上位融合にも余裕で耐える頑丈さ。僕も何回か使ってるので、成功率が50%越えのバグってるアイテム、こちらを先着一名に」


<コメント>

:はい!

:はい、はい、はい!

:くれーーー!!

:そんなのプレゼントしちゃって良いんですか?

:絶対欲しい! これは金積んでも買えないやつだ!

:くれくれくれくれ!


「アーカイブ配信後、こちらのメールフォームからご自身の専攻ジョブを記載の上で希望商品をご記入の上お送りください」


僕のアナウンスに応じて後輩が画面にテロップを貼る。

直後にピロンピロン通知がうるさい程に鳴る。

早いよ。締切前にメールフォームパンクしかねないな。


「待って待って。まだあるから焦らないで。これは錬金セットの一部。次は僕の遊びで作ったレシピ集。一巻〜十三巻まであるので先着13名迄」


<コメント>

:宝の山やん!

:ウヒョー、こう言うの待ってた!

:早まるな、実用性皆無やら製作難易度の問題もあるかもだぞ?

:情報が金になる時代に何言ってるんだ?


「ちなみに今後配信で取り扱っていくので過剰なネタバレは禁止でお願いします」

「レシピ知ってても用途で困る代物のオンパレードですからね。売るにしたって先輩からのアドバイスを待った方が賢明です。先輩の考えは一般から逸脱してますから」

「ねぇ、さっきから言葉に棘がない?」

「自分の胸に聞いてください!」


<コメント>

:それもそうやな

:急にこれ自分が手にして良いのかって不安になってきた

:熟練度320に至った経歴が書いてあると思えばワンチャン

:知ったところで先輩以外いけるのか?


「毎日寝ずに錬金してればそうだな、10年しないうちに到達できると思う」


<コメント>

:そんなモチベーション持たねーよ!

:頭錬金術師かよ!

:ダメだ、その域にたどり着ける気がしないわ

:それって知ったら深淵に飲み込まれたりしない?

:魔導書扱いは草


「ちなみに錬金に限らず、鍛治と魔道具製作のネタもあるから専攻してるジョブによってはお宝かもしれない」

「机上の空論もあると?」

「絵に描いた餅になるかはその人次第だよね」


<コメント>

ガンドルフ:ちょいと興味はあるな

ミツビシ:僕以上の熟練度、気にならないはずがありません

ロディ:先輩ほんと何者なの?

:日本の重鎮たちがゾロゾロくるやん

:それだけ注目されてるやんな


「僕は全然大した事ないんだけどね。まぁ、熟練度だけすごい人なんて探せば結構いると思うよ? じゃあ錬金3セット目! これは三種の神器と言って良いほどの代物だ。むくみ、眼精疲労、満腹維持ポーション各10本セット。こちらは先着10名までね」


<コメント>

:それってずっとこもって錬金してる人向け?


「むくみ取りポーションはお肌のダメージ全回復、眼精疲労は寝なくても体調が崩れず、満腹維持は1ヶ月呑まず食わずで倒れない効果ですね。要は簡単に先輩の見ている風景が覗けるセットでもあります。先輩のレシピ集には記載されてないので、手に入れるならここしかないと思います」


<コメント>

ガンドルフ:ガタッ

ミツビシ:ガタッ

ロディ:ガタッ

:ガタッ

:ガタッ

:ガタッ

:お肌のダメージ全回復の詳細詳しく!


「私は30代ですが、このポーションのお陰で未だに10代に間違われるくらい肌年齢は若いですね」


<コメント>

:ガタッ

:ガタッ

:ガタッ

:ガタッ

:ガタッ

:ガタッ

:ガタッ

:女性探索者の食いつきやべーな

:探索者に限らず肌年齢は維持すんのにそれこそ熟練度上げるくらい金食い虫

:え、待って神アイテムじゃない?

:もっと当選数増やしてくださぁい!

:お願いします

:お願いします!

:必至乙


女性と思われる書き込みが恐ろしいほど寄せられる。

後輩が余計なこと言ったからだな。

まぁそこまで手間でもないし作るのも吝かではないが、どうしようか?


「なんか好評なようでしたら次にやる記念配信でも取り扱いますよ。でも一応言っておくと、錬金術師向けなのでそこはご留意ください」

「先輩、甘すぎます」

「まぁリスナーあっての配信者だろ?」

「じゃあ次は倍の1500万人達成記念ですね」

「普通に1000万人で良くないか?」

「先輩はお肌の修復にかける女性の執念を舐めすぎです」


後輩曰く、明日には達成してるかもみたいに言ってくる。

まさか、ね?


「と、錬金セットを公開しただけでもう終わった気になられても困るな。まだまだ続くよ。次は探索者編! こっちは単純に僕が趣味で作ったショートソードと盾、お役立ちアイテムのセットだ。まずは殺傷力を強めすぎて、納品査定が絶望的な剣」


僕の説明に後輩のテロップ操作で画面上に武器の見た目と詳細記録が載る。


<単分子ブレード+99>

攻撃力:255

必要筋力:70

必要敏捷:15

吸血+9

石化+9

麻痺+9

耐久/250/250


<コメント>

:は?

:は?

ガンドルフ:は?

:は?

:は?

:は?

:ガンドルフが驚いてるの草

:そら驚く、俺だって驚いてる

:鍛治の親分じゃなくたって目が点だろこれは

:効果付与えぐいって!

:そういや魔導具師でもあるんか、先輩

:これ、おっかなくて使えないまであるやつだよ


「続いて盾は、相手の噛みつき攻撃、ブレスなどを無効化するけど、すっごい重くて装備できる人が限られてくるやーつだ!」


<純ダマスカス鋼シールド+99>

防御力:255

必要筋力:180

必要耐久:200

氷・炎・風属性攻撃無効

土属性吸収

特殊スキル【根を張る】動かない限り体力毎秒1%回復


<コメント>

:十分やばい

:性能が普通に段違い

:しっかし要求ステータスがマジタンク向けだな

:これ装備できるやついんの?

キング:日本には居ねーな

:Sランク探索者きちゃ

:キングだ!

:すげー


「居たら良いなって思って作った。応募する際は是非自分が装備できる前提で応募してね? 剣に限らず、腕輪とセットで使用者認識タイプだから。腕輪の中にしまっておけるやつで取り出しは自在にしといたから」


<コメント>

:おい!

:転売禁止かよ

:当たり前なんだよなぁ

:所持してるだけで職質受けそうな見た目してる

:選ばれたものにしか装備できなさそう……

:謎の技術なんだよなぁ

ミツビシ:魔導具熟練度150になればその知識は手に入るのか!?

:魔導具界隈が騒がしいですね

:ほぼマジックバッグだろ、その技術


「はいはい、時間押してるから次ね! 一見普通のウエストポーチだけど、東京ドーム一つ分物が入るバッグの登場だ」


<4次元ポーチ>

装備、アイテム、素材を種類毎に分類可能

最大スタック数9999×2555箇所

所有者認識の腕輪付き


<コメント>

:ポーチなのかバッグなのかはっきりしろ!

:ほんまモンのマジックバッグきたー

:想定の5億倍物が入れられる仕様で草

:これ単品で欲しいくらい


「実は東京ドームくらいの倉庫を借りて転送させてるだけだからその維持費は自己負担でお願いね?」


<コメント>

:草

:そんな上手い話なかった

:草

ミツビシ:君たち、何をそんな笑い話みたいに言ってるんだ? 転移技術なんてまだ誰も確立してないんだぞ? それも自作でなんて、持ち帰って研究したいくらいだよ

:そういえばそうやん

:そのレシピは……


「レシピ集にありまぁす!」


僕の発言からレシピ集の応募が殺到した。

さっきまであんなに見下してたのにおかしいよね。

いざ使えるレシピがあると知ったら掌返すんだもん。


その後も魔導具セット(魔石の増幅装置、マジックスクロール印刷機、立体魔法陣の構築論などを書いたメモ帳)の発表もしたが、案の定効能を知っても食いつきは悪かったが、その道のプロの説明のおかげで自分たちの役に立つと知って応募が殺到した。


配信終了後、鳴り止まない通知の携帯を置いてご飯食べに行ったのはもう日常だよね?


お疲れ様会は近くの焼肉食べ放題に行った。

たくさん食べてたくさん飲んで、来たるべき戦い(応募の仕分け)に備えてこれでもか! と英気を養った。

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