「私、やっぱり隊に戻ります。
そして神威さんと宇随さんと楓太くんと一緒に、今度こそ新しい時代をつくるため、私の力を使いたいと思います」
雛が力強い瞳を神威に向け
神威は嬉しそうに微笑み頷いた。
「ああ、雛がどんな道を選んでも俺は君を支える。
雛と共に生きていきたいから。
君が隊に戻らなくても俺は会いにくるつもりだった。もちろん隊に来てくれるなら大歓迎さ」
神威は雛に手を差し出す。
握手……ではないよね?
戸惑った雛がなかなか手を取らずにいると、神威が雛の手を奪った。
雛の手を引きながら神威は
「雛の父上に報告だ」
ニコニコと微笑む神威に、雛の頭の中には?マークが飛び交った。
「な、何を?」
雛が不安げに尋ねると、神威は自信満々で答える。
「もちろん、隊に残ることと……婚約のこと」
神威が雛にウインクする。
「えーーーーー!!」
雛が目を丸くして叫ぶ横で、神威は可笑しそうに笑いながら雛を引っ張っていく。
なんだかキャラ変わってない?
あのクールな神威はどこへいった?
急に大胆で強引なキャラに変化した神威に戸惑いながらも、繋がれた手の温もりに幸せを感じてしまう雛だった。
雛の父である雄二に挨拶を済ませた二人は町へと向かう。
宇随と楓太のいる屋敷へ帰る前に、必要な物を
買い物の最中も神威は雛の手を離さない。
手を繋ぎながら町中を
店の店主から、からかいを受ける度に神威は軽くあしらっていたが、雛はもういっぱいいっぱいだった。
「父上に認めてもらえてよかった」
休憩も兼ねて訪ねた団子屋で、神威は団子を頬張りつつ、満足そうに頷いた。
雛も団子を一口食べると、恥ずかしそうに頷き返す。
「うん」
あのあと、二人そろって雄二の前に姿を現した雛たち。
雄二は
神威が雛への想いと婚約を許してほしい
そして、雛が隊へ戻りたいと告げると、雄二は寂しそうにしながらも優しい笑顔でそれを承諾してくれた。
「君の父上は本当にいい方だな。
雛は恵まれているよ、俺も嬉しい。あの方は我が父上になる方だから」
思い出しているのか、神威は空を見上げ目を細める。
父を褒められた雛は、照れくさそうに頬を染めた。
雛がお茶を飲み終え、ほっと一息つくと神威が勢いよく立ち上がった。
「さ、宇随たちが待ってる。行こう」
神威に差し出された手を雛は迷うことなく握り締めた。
宇随たちが待つ屋敷へ到着した二人は、仲良く手を繋いで屋敷の門をくぐった。
「おう、ご両人、見せつけてくれるぜ」
玄関の入口に立っていた宇随が二人を笑顔で出迎える。
「宇随さん!」
雛が嬉しそうに笑いかけると、隣に寄り添う神威も柔らかな笑顔を見せた。
「わざわざ待っててくれたのか?」
幸せそうに寄り添いながら、手を繋いだ雛と神威が宇随に近付いていく。
二人の仲良さそうな姿に、宇随が不機嫌そうな表情を浮かべた。
「なんだよ、あーあ、つまんねえ。
おーい、楓太!」
宇随が大きな声で呼ぶと、屋敷の中から足音がこちらへ向かってくるのが聞こえた。
次の瞬間、玄関から飛び出てきた楓太が一目散に雛に抱きついてきた。
「おかえりなさい!」
嬉しそうな楓太の姿に雛も笑顔を浮かべる。
「楓太君、ただいま。ごめんね、心配かけて」
「あ! てめえ、雛に抱きつくな!」
宇随が慌てた様子で、楓太を雛から
すると神威が宇随の頭を殴った。
「
「いってー、手加減しろよ!」
大袈裟に痛がる宇随を無視し、神威は雛にくっついている楓太を真っ直ぐ見据えた。
「な、楓太。おまえももう十四なんだから……わかるよな?」
神威は終始笑顔だが、目が笑っていない。
恐怖を感じた楓太は雛から急いで離れた。
「ご、ごめんなさい!」
怯えながら謝る楓太の頭を、優しく撫でながら神威が笑顔で頷いた。
「さ、こんなところで立ち話もあれだし、中へ入ろう」
神威はさりげなく雛の腰に手を回すと、宇随と楓太を見て微笑む。
『雛は俺のものだから手を出すなよ』と神威の心の声が聞こえてきそうだ。
二人が屋敷の中へ入っていくと、宇随と楓太が顔を見合わせた。
「これからは気をつけましょう」
楓太がつぶやくと、宇随は肩を落とし残念そうに頷いた。
まず雛は、宇随と楓太に今まで自分が女であることを偽り、男の振りをしていたことを謝った。
すると、二人ともあっさりと受け入れてくれるので、雛は
「そんなの途中から気づいてたぜ。おまえみたいな可愛い男なんていねえっての」
宇随が大したことないというように、あっけらかんと言った。
「僕は雛さんが男だろうが女だろうが構いません。
その剣の腕と、人柄に僕は惚れているんですから」
楓太も満面の笑みを向けてくれる。
そう言えば二人とも、ここへ来たとき女の姿をしていたのに驚きもしなかった。
はじめからすべて受け入れてくれていたんだ。
雛は二人への感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。
「ありがとう……本当にありがとう。
嬉しい、私、この隊の一員でよかった」
雛が皆に微笑むと、三人とも雛に
すかさず神威が宇随と楓太を睨んだので、二人は神威から顔を背け知らぬふりをする。
「これからは四人で、笑顔と幸せが溢れる、そんな世の中をつくっていくために頑張りましょう」
雛がそう掛け声をかけると、三人は笑顔を向け頷く。
「ああ」
「おうっ」
「はい!」
四人は手を合わせ、誓い合った。
新和隊、改め、
以前のような人を殺めることは一切せず、人々の平和を守る活動に身を
千里の道も一歩からをスローガンに
大きな
何か事件が起こると駆けつけ、解決へ向けての手助けをしたり、民の困りごとの依頼を引き受けたり、町を見回り、治安を守ることなどに
雛たちがいることで、人々は安心して暮らせるようになり、町も活気づき、民たちの笑顔も増えているように感じられた。
一部の人たちからは、〝そんな小さなことをしてなんの意味がある、もっと大きなことを成し遂げろ〟と言われることもある。
悪事を働いている連中を
しかし、雛たちは自分たちの信念のもと、ゆるぎない想いとともに活動を続けていくのだった。
人々の笑顔と幸せを守るために。