黒川のことは
これにて黒川一味は崩壊し彼の企みも無に
黒川については幕府や大名たちも手を焼いていた。
雛たちが黒川の計画に手を貸していたことは事実だが、黒川を
伊藤の遺体は
彼の生前の活躍を家族に語ると、家族は泣いて雛たちにお礼を言う。
ただ黙って家族に向き合うことしかできないことが悔しかった。
伊藤の家からの帰り道。
田んぼに囲まれたあぜ道を四人で歩く。
夕陽に照らされ伸びた四つの影が田んぼの上をゆっくりと動いていた。
皆、伊藤との思い出に浸っているのか誰も言葉を発さない。
静まり返っていたところへ、楓太の元気な声が響いた。
「僕、伊藤さんの意思を継いで、新しい隊をつくろうと思います」
その言葉に、三人はピタリと足を止め、楓太を見つめる。
何を言い出すかと皆驚いた表情をしていた。
楓太がそこまで考えていたなんて……。
今回の事件のことで、新和隊は事実上解散し隊は無くなる。
そのことについて考えないわけではなかったが、まだそこまで考える余裕がなかった。
三人は顔を見合わせる。
「おまえが隊長か?」
宇随が意地悪そうな笑みを浮かべ、楓太を肘で軽く
「はい! と言いたいところですが、僕はまだ十四歳です。
隊長は荷が重いので、できればお三方の誰かにしていただきたいのですが……。
もちろん隊へ入っていただけますよね?」
楓太の期待に満ちた瞳が三人に向けられた。
三人はしばらく沈黙する。
それぞれ何かを思案しているようだった。
そして、神威が第一声をあげた。
「うん、そうだな、隊に入ろう。楓太だけでは心配だからな」
神威が楓太の頭を撫でる。
こういう優しいところが素敵だなと雛が神威を見つめていると、宇随が勢いよく手を挙げた。
「俺も! 俺もやるぜ。どうせ何かしようと思ってたんだ。
俺の力を貸してやるよ、喜べ楓太!」
宇随が楓太の頭をガシガシと撫でくりまわしながら、雛を見つめる。
しかし、雛は神威と話しており宇随の方を見ていなかった。
宇随はがくっと肩を落とす。
楓太はよくわからなかったが、慰めるように宇随の背中を優しく撫でた。
「神威さん、私……少し考えさせてもらっていいですか?」
申し訳なさそうな表情の雛が神威にこそっと告げた。
雛は迷っていた。
自分の信念と、それを消し去るほどの罪悪感とに挟まれ、雛の心は悲鳴をあげていた。
そんな雛の心を
「ああ、しばらく父上とゆっくりしてくるといい。返事はいつでもいいから」
「ありがとうございます」
雛と神威が見つめ合う。
「雛! 俺はおまえとこれからもずっと一緒にいたいから。
帰ってこいよ、待ってるからな」
二人の間に割って入ってきた宇随が、雛の手を取り訴える。
雛は宇随の勢いに戸惑いながらも、その気持ちが嬉しくて笑顔を見せた。
「はい!」
神威たちが見送る中、雛は三人に手を振る。
遠ざかっていく雛を見つめながら、宇随は口を開いた。
「いいのか……、あいつもう戻ってこないかもしれないぞ」
「……それならそれで仕方ないだろ、あいつが決めることだ」
神威はいつまでも雛の背中を見つめている。
その表情はどこか切なげだった。
宇随が大きなため息をついた。
「おまえなあっ」
「少し用事を思い出した。しばらくいなくなるが心配するな」
宇随を無視し、神威は楓太に微笑みかける。そして、急ぎ足でどこかへ行ってしまった。
宇随は神威の居なくなった方を見つめながら
「あーあ、俺って損な役回りだよなあ」
落ち込む宇随に楓太が寄り添い微笑みかける。
「宇随さんは素敵な方だと思いますよ。いつもみんなのこと思って、いつも元気をくれる。そんな宇随さんが僕は大好きです」
「……楓太っ、おまえ、いい奴だなあ」
宇随は楓太に抱きつき、また嘆いた。
「あーあ、どっかにいい女いねえかなあ。
無理だよなあ、あいつよりいい女なんてそうそういねえよ」
楓太は宇随の背中を優しく叩きながら、宇随の言葉の意味がわからず首を