「お前死ぬぞ?」
実兄にはそう言われ。
「いやそれまず色んなとこ回ってからじゃね?」
高校からの友人その1にもそう言われ。
「熊が出るのが心配……」
北海道出身の友人その2もいい。
「旅路で亡くなった知り合いがいるし……」
大学以来の友人その3は後で聞いたとこ相当でしたが。
それを言っていたら出来ないなあ、ということで。
「北海道を」「回りたい」。
これは「鉄道で」なら割と昔からありました。
大学の春休み。18きっぷだの、北海道周遊ワイドとか使って回ったことがあります。四国以外の日本一周も。
ただそれだと期間以外の時間に相当縛られます。駅付近しか回れません。
何より、「とある地点を目標に出かけて楽しむ観光」がとても苦手な傾向でして。どうも道筋にあるちょっとした些細な物事に目が行くタイプなのです。
それに加えて、自分で計画を練り、それを着実に遂行していくということに快感を覚える傾向もあり。
良く言えばマイペースだし、悪く言えば自分勝手です。
なので、何かしら「自分の力で」回りたかったのですが。
残念ながらワタシは車に乗れません。免許は持ってますが、……スピードが駄目! なのです。
どのくらい駄目か、というと。
教習所に通った大学卒業間近の頃、路上で30キロ出すのが怖くて仕方がなく、何とか本免通った後の高速教習でどうがんばっても怖くて怖くて80キロが出せなかった程です。
また、「箱の中」から外の速度を推し量るのがもの凄く苦手でした。
そして何より、「前と後ろに他の自動車が居るということに気持ちが耐えられ
ない」のです。
そこまで神経を回し、なおかつ「全体の道の流れのために法定速度以上を出さなくてはならない。でも道路交通法は守ってね」という矛盾に頭が混乱してしまって身体が止まってしまうという。
要するに「向いていない」のです。
住んでいる浜松というところが車社会であるから余計に。
「取っておけ」という当時の親の言葉もあり一応免許は取ったのですが、それから30年がとこペーパーです。
では原付はどうか。
まだこの方がましだと思います。そもそもの法定速度が遅いし、二輪の感覚は判りやすいのか、教習もすぐに慣れました。30キロ以下という速度制限もありがたいです。
ただこれに関する費用を考えると、何となく二の足を踏んでしまうのです。「……だったら自転車でいいんじゃないか?」と。
そう、自転車。
ワタシが補助輪を外した自転車に乗れる様になって、今年でちょうど45年になります。住んでいる町内が広かったので、足になるものは皆必要でした。
中学は皆自転車通学でした。なので入学以来、毎日の様に10キロ以上の距離を走ってきました。おかげで足が痩せたことは全く無いです。
そんな訳で他の方法で回るという選択肢は自分の中に見つからず。……いずれにしても、既に自転車に特化しているこの足はどうもそれ以外を求めることを許さないようです(笑)。
ただそこで何でママチャリなんだ! と。
大概そんな旅にはロードバイク、クロスバイク、ランドナーと言った如何にもなスポーツ用自転車を選ぶんじゃないか? と。
まあ理由は色々あります。新規に自転車を買うだけの余裕が無いとか、スポーツ車系の格好はどうにも着られないとか、ママチャリは荷物も沢山積めるしがっちりしているから安全とか、のんびり走るのだからいっそ歩道を安全に走れる様な車体の方がいいとか。
……なのですが、最大の物理的理由は「足が上がらない」でした。
これはもう歳のせいというか何というか。股関節のせいか、足をひょいと上げるのが非常に厳しいのです。
自転車は45年間かかさず乗っていて、まずまず走れると思うのですが、地面に足をつけた活動は年々衰えてきてます。27インチのシティサイクルに乗ろうとして足をひっかけて転ぶ様なことが起きてきました。況んや大またぎする様な車体は…… です。
ママチャリロードバイクの開発をしているところもある様ですが、……そこまで贅沢はできませんて。
まあ去年はちょうど仕事を辞めていて時間もあったので、のんびりキャンプ場めぐりしながら走るか、ということにしました。
とはいえ、キャンプは中学以来初めてでした。
きっかけは…… ええ、「ゆるキャン△」です。女子高生が初めてテント立てるのがこんなに簡単に! こんな小さいバーナー! え? 焚火台? とか何とか。
いまどきのキャンプ道具がこんなに便利になっているなんて知らなかった! と。
そもそも第一回で主人公、決してロードバイクではないチャリでスカートでキャンプしてるじゃね?
しかも一人。
へえ~
いや、マンガの表現だとしても目うろこです。何せ当時のワタシのキャンプのイメージってのは、
・沢山で行って
・一生懸命重いテント立てて周囲に溝掘って
・飯盒炊さんして
・キャンプファイヤー
という昭和のそれです。
で、最近の「アウトドア」でも「皆でわいわい」系が多く、「性格的に無理だなー」と思っていた訳ですよ。アルコールも駄目だし。
ところがこの話、まずソロキャンプを否定しないっていうのが良かったんですね。
この類の話というのが、一人で行動する主人公が周囲によって変わって皆での楽しみも知る、とかだったりするパターンが多いではないですか。それはそれでいいのでしょうが、どうもワタシには合わない。
だけど「やっぱりワタシソロが好きだ」「ソロと皆でやるのは別物」ということで並行して肯定してる。「あーこれ今やっていい雰囲気になってるんだなー」と嬉しくなりました。ワタシはともかく集団行動苦手ですから。
で、それから最近のキャンプのことちまちま調べ出しました。主にアマゾンで。
……何ですかこの価格。
親の金で当時家守していた自分としては(今は復職しましたが)、高価なものなど論外。でも現実的にテント手に入れるならこのくらいの評価の……
とか言ってる時に、ひょんなことからアマゾンギフトカードを3000円分いただきました。で、「これで何買う?」となった時に、「あ、このテント買えるじゃん」と。
さてこうなるとキャンプするのに現実味が。
いつかは北海道、というのも夢ではなくなった訳です。裏庭で張ってみてもそう難しくはない。
あ、キャンプできなくはないなー。
実験的に近場のキャンプ場「渚園」でキャンプしてみました。
できなくないです。
じゃ、できるな。
……そんな感じです。
ちなみに計画の基本は「一周」でした。
これは後に微妙に変わっていったんですが、それでも基本は海沿いを走ろう! でした。
地図を見て、キャンプガイドを目を皿にして眺め、自分の基本スペック「一日50キロ/浜名湖一周のおおよその距離」以下で移動ができるか? というコンセプトでルートを作ってみました。
期間は一応「一ヶ月」。
これはかかりつけの医者に一ヶ月に一回顔を見せて薬を受け取らないといけない、という事情がありました。呑んでれば体調は安定しているけど、呑み忘れると大変な薬ってありますよね。そういうもの。
そして荷物を詰めだした、という訳です。