窓から外の景色を眺める。
白く小さな塊が、ちらちらと空から降りてくる。
今日は特に寒いと思っていたら、雪がちらつきはじめていた。
さくらは
「私たちが出逢ったのも、こんな雪の日だった」
小さくつぶやくさくらを聖は優しい眼差しでそっと見つめている。
肩を抱く手に少しだけ力がこもるのを感じた。
「そうだね、君と出逢ったから……
愛おしそうに見つめる先には、さくらの腕の中でスヤスヤと眠る赤ん坊。
聖が優しい手つきで赤ん坊を撫でる。
「……
さくらが
「あ、笑った」
聖が嬉しそうにはしゃぐ姿を見て、さくらが可笑しそうに笑う。
そのとき、部屋の扉が勢いよく開いた。
「おい、優希はいるか」
誠一が部屋に入ってくる。
彼は優希が生まれてからというもの、毎日のように訪ねてくるようになった。
優希が可愛くて仕方ないらしい。
「優希、いつ見てもおまえは可愛いなあ、将来は美少女になるぞ」
優希の顔を眺めデレデレしている誠一の表情からは、昔の
いつも無表情で怒っているような顔をしていたのに。
「誠一さん、いつもありがとう」
「兄上、近づきすぎです」
二人のことなど目に入っていないかのように、誠一は優希に夢中だった。
聖と誠一が由紀の
「おう、みんな
今度は智彦が笑顔でこちらへ歩いてくる。
智彦も優希の顔を見ないと気が済まないらしく、毎日訪ねてきていた。
「優希ちゃーん、おじいちゃんですよぉ。今日も一日元気でしたかぁ」
すっかり孫が可愛くてしょうがないおじいちゃんと化している。
優希を見るその鼻の下は伸びきっていた。
「お父様、いつも優希を可愛がってくださってありがとうございます」
さくらが智彦に微笑むと、智彦は嬉しそうに頬を染める。
「いや、なんの。さくらと優希のためなら私はなんでもするぞ」
智彦はさくらのことも可愛くて仕方がないらしい。
自分の妻と子に鼻の下を伸ばす父を見て、複雑な
そして、また次の
「優希様はまだ起きていらっしゃいますか?」
礼儀正しく一礼し、部屋へと入ってくる。
旭もまた優希の大ファンらしく、事あるごとに優希の様子を見に来ていた。
「見てください、今回は優希様のおくるみを作ってまいりました。ぜひ、使ってください」
彼は器用で、優希のオモチャや服や小物類を手作りしては持ってくる。
旭はさくらにおくるみを渡し、優希を愛おしそうに見つめ続けた。
いつの間にか、優希は0歳にして逆ハーレムを形成している。
この状況に、将来が思いやられる聖だった。
さくらと優希の周りに男が
しかし、さくらと優希が嬉しそうに笑うので、聖も仕方なく
それに、家族が二人のことをこれほどまでに愛してくれるのは正直嬉しかった。
このように、優希が生まれてからというもの、黒崎家は優希を中心に穏やかな時が流れていた。
みんなと過ごしたあと、優希は静かに眠りについた。
その姿をさくらと聖は二人で優しく見つめる。
「ほんと、毎日毎日、よく来るよ」
聖はあきれた顔をしていた。
どうも、誠一と智彦と旭のことを言っているらしい。
「三人ともすごく優希を可愛がってくれて、ありがたいじゃない。
私はすごく嬉しい」
さくらの微笑みに、聖は少し不機嫌そうな悲し気な表情をする。
「だって、二人の時間を邪魔されてるみたいでさ。
さくらと二人の時間を大切にしたい」
聖に熱い視線を送られたさくらは恥ずかしくて視線を
「わかってる、私だって、聖との時間は大切にしたいって思ってる」
さくらは聖に軽い口づけをする。
聖は少し驚いた表情をしたあと、嬉しそうに笑った。
「さくら、愛してる」
今度は聖がさくらに口づけをし、飛び切りの笑顔を向けた。
「これからもずっと一緒だよ」