「綺麗な花火……」
「全然だめ。もう一度」
「綺麗な花火……」
「だめだめ。感情がこもってない。やり直し」
「綺麗な花火……」
「あなた、ロボットなの? まじめにやりなさい」
「綺麗な花火……」
「ありえない。客の前でそんな演技するつもり?」
「綺麗な花火……」
「心がこもってない。何度言えば分かるの」
「綺麗な花火……」
「あなたド素人?」
「綺麗な花火……」
「いい加減にして。あたしだって暇じゃないのよ」
かれこれ三時間、私は同じセリフを言わされ続けている。
こんな練習をすることになんの意味があるのか、と疑問に思う。しかし先生に口答えすることは絶対に許されないという雰囲気があった。実際、周りで見ている団員たちは、いたたまれない様子で口を堅く閉ざしている。
もしも先生を怒らせたら、私は二度と舞台に立てなくなるかもしれない。
そう分かっていても、この練習はあまりに馬鹿げていると思った。
もう我慢の限界だ。これ以上は耐えられない。
私はぎゅっと両手をにぎりしめて一歩進み出た。
「僭越ですが、先生」
先生が鋭い目でキッと私をにらんだ。
「このシーン、ヒロインの正しいセリフは『綺麗な花火……』じゃなくて、『綺麗なハラミ……』です」