本当は俺は、女子高生として現場に立ち続けたい。だが、それはできない。
なぜなら、別の部署に行くように、と命令されてしまったからだ。
憧れの女子高生になってもうすぐ三年。最初は俺みたいな三十過ぎのおじさんが女子高生としてやっていけるか、不安でたまらなかった。未経験ながら奮闘し、中堅の女子高生になり、ようやくコツもつかめてきたと思っていたのだが。
異動命令を受け入れれば、女子高生として現場に立つ機会はなくなるだろう。かといって拒否すれば、社長の怒りを買ってしまう。俺はどうすればいいんだ。せっかく女子高生検定試験にも合格して、自信がついてきたのに。
「田中、どうした? 最近、元気ないな」
ベテラン女子高生に気遣われ、俺は心境を打ち明けた。
「女子高生になりたくてこの会社に入ったのに、もう、ここにいる意味があるとは思えないんです」
「悲しいが、女子高生の理想と現実の違いを知って辞めていく者も多い。お前はよく頑張ってるよ」
俺は決心して、社長室のドアを叩いた。
「退職してフリーの女子高生になります」
「バカ野郎。それで食っていけると思ってるのか」
「分かりません。でも、女子高生っていうのは、夢を見せなきゃいけないんです」