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第8話 沢田くんと夢の中


 ついに……言っちゃった!

 沢田くんに好きだって言っちゃったよ!!

 沢田くんの反応が気になりすぎて、じっと沢田くんを見つめちゃう。


 セピア色の観覧車に、ただ沈黙が流れた。


「……」

「……」


 沢田くんは無言のまま石のように固まっていた。ドキドキしながら反応を見ていたけど、そのまま1分、2分と時間だけが過ぎる。


 え。ちょっと待って。反応遅すぎない?

 3分すぎてとうとう真下に観覧車のゴールが見えてきた。


「さ、沢田くん?」


 まさか……。

 私は沢田くんの顔の前でひらひらと手を振ってみた。


 返事がない。屍のようだ。_(┐「ε:)_チーン。

 ええええええ〜〜〜!!

 死んでる。いや、沢田くんが、目を開けたまま気絶してるーーっ!!


「沢田くーん!!」


 私は沢田くんの肩を掴んで前後に揺さぶってみた。すると、沢田くんの体がグラリと前に──つまり私の方に倒れてきた。

「きゃっ……」


 気がつけば、私の肩に沢田くんが側頭を乗せていた。

 スウ、と静かな寝息が聞こえる。


 ……ああ、そうか。

 今日のために沢田くんは5時から起きてくれていたんだもんね。

 私のわがままに付き合って、ジェットコースターとかお化け屋敷とか緊張する乗り物ばかり乗っちゃったし、極めつけにこの観覧車で完全に限界突破しちゃったんだ。


「……ありがと、沢田くん」


 あと2分。こうして沢田くんと寄り添って終わるのも悪くないか。

 私は沢田くんの髪に頬を乗せてみた。

 シャンプーのいい匂いがして、すごく幸せな気持ちになる。

 ああ……楽しかった。



 こうして楽しかった私たちの初デート最後のアトラクションも無事に終了──するはずだったんだけど。



「沢田くん、起きて、沢田くん!!」


 終点まできたゴンドラからすぐに降りなきゃいけないのに、沢田くんが爆睡していて私は焦った。


「お客さん、早く降りて!」

「ごめんなさい、ごめんなさい!」


 結局私だけ先に降ろされて、沢田くんはたった一人でもう一周の旅へ。



【はっ……ここはどこだ⁉︎ 佐藤さん⁉︎ 佐藤さんがいない〜〜!!。゚(゚´Д`゚)゚。まさか、すべては俺の夢の中の出来事だったのか!? 佐藤さんとはともそもデートに来ていなかった……だと!? そんなバッドエンディング嫌だよ〜〜!。゚(゚´ω`゚)゚。オロローン!!】



 観覧車の中で目が覚めたらしい沢田くんの心の声が上空で響く。

 ごめんね、沢田くん。

 私は地上で待ってるよ。



 クスッと笑いながら夕焼けに染まる観覧車を見上げる。

 沢田くんとの再会まで、あと5分。






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