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第3話 沢田くんとおてて繋ぎ


 コースターから降りて、私は言った。


「面白かったね、沢田くん」

 主に沢田くんの心の声が。


「うん【記憶ないけど】」

 沢田くんもフラつきながらコースターを降りる。頭からは消えてしまったようだけど、体にはしっかりと恐怖が記憶されているようだ。


【あー気持ち悪いっ】


 斜め上の沢田くんの横顔をチラッと見てこっそりと笑う。ジェットコースターに酔ってる沢田くんがわけもなく可愛い。



 階段を使って地上へと戻ってみると、正面の花壇の前にフォト屋さんが屋台を出していた。プリントされたばかりの写真がコルクボードに既にたくさん貼り付けられている。


「あっ、沢田くん。写真撮れてるよ! 見てみようよ」

【そうか、忘れてた! 落ちた瞬間の写真撮られてたんだっけ】


 私はワクワクしながらズラリと貼られた写真を眺めた。連写で撮ったのだろう。沢田くんと私のツーショット写真がいくつかあった。


 さて、沢田くんはどんな顔をして写っているのかな?


【うわああああ、俺すげービビってるよ! 恥ずかし〜〜!!】


 沢田くんは照れているけど、彼はびっくりするくらいの真顔で写っていた。

 まるでジェットコースターに乗り慣れすぎてる百戦錬磨の猛者って面構えだよ。しんしんと降る雪を眺めているかのような静謐せいひつな面持ちだよ! そのまま一句読み上げそうだよ!!



 それにひきかえ、私ってば思いっきり目をつぶっちゃってる。

 当たり前すぎてつまんない顔してるなあ、なんて思った時だった。



【あーっ、佐藤さん、両目つぶっちゃってる! 面白かったとか言ってたけど本当は怖かったのかな?(*´艸`*) 本当は怖いのに無理して明るく振る舞っちゃう佐藤さん……可愛すぎる!! よし、全部買おう】


 沢田くんは無言で長財布を取り出した。

 全部買ったらいきなり結構な出費になるよ⁉︎


「ちょっと待って沢田くん! 買うなら二人で同じの、一枚ずつ買おうよ! 今日の記念に。ねっ!」


「えっ……うん【えええ〜〜一枚だけ?(´・ω・`)それならその一枚を百枚ぶん焼き増ししてもらおう。俺の顔はいらないから佐藤さんのだけ等身大パネル並みの大きさに拡大してもらおう】」



 やめてえええ〜〜! 恥ずかしいよ〜〜〜!!



【さとうさんとのツーショットしゃしんをてにいれた……(*´ー`*)さわだそらはレベルが1あがった】


 さっき二人で購入した写真をボディーバッグの中に大事そうに収めた沢田くんは、心なしか頬を赤く染めているように見える。


【ああ、やばい。こんなものをカバンに入れたら挙動不審になっちゃうよ。「君、怪しいな。カバンの中のものを見せなさい!」なんて警察に職質されたらどうしよう。警察振り切って逃げても結局捕まって、「これは何だ?」って佐藤さんとのツーショット写真を取り出されたらどうしよう。「と、友達です……」「嘘をつくんじゃない! こんなに仲が良さそうじゃないか!」なんて尋問されたらどうしよう(੭ु´͈ ᐜ `͈)੭ु⁾⁾ 素直にゲロっちゃうよ〜!】


 いったいどんな想像してるの。

 でもこんなに喜んでくれるなんて、私も嬉しいな。


「ねえ、次はお化け屋敷に行こうよ!」

 ついテンションが上がっちゃって、私は沢田くんの手にちょっとだけ触れてしまった。すると。


【はわわわわわわわわわあああ!】


 途端に沢田くんの心の声が飛び上がったので慌てて手を引っ込める。


「あ、ごめん。今ちょっと触っちゃった?」

「う、ううん……【嘘。本当は触っちゃったよ佐藤さん! うっかり俺を殺すところだったよ! 気をつけて、佐藤さん!\(//∇//)\】


 沢田くんのテンションは最高にハイってやつだ。

 こんなにはしゃいでて大丈夫かな? この後のお化け屋敷、けっこう怖いって噂だけど。


 やがて、私たちの眼前に古い日本家屋を模した建物が現れた。二階の窓からちょっぴり誰かが覗き込んでいるように見えるけど、あれはマネキンだろうと思いたい。

 すでにおどろおどろしい雰囲気がプンプンするぜっ!

言い出した私の方がビビっちゃう。


「さ、沢田くん、並ぼう」

「うん【ヤバい、何してても楽しい(*´艸`*)】」


 浮かれっぱなしの沢田くんと、おそるおそる列の最後尾に加わった。

 アトラクションの待ち時間はおよそ30分だと看板に表示されている。さすがに人気のアトラクションだ。


「沢田くん、怖いの平気?」

 並んでしばらく経ってから聞いてみると、さすがに沢田くんの顔色は変化していた。



「……多分【平気じゃない。゚(゚´Д`゚)゚。】」

 そっちか。


「私、こういう恐怖系のってジェットコースターより苦手かも。しかもね、ここお化け役が人間で、怖がる人を追いかけてくるんだって」

「へー【なんて悪趣味なんだ! その情報は知りたくなかった〜。゚(゚´Д`゚)゚。】」


「あのね、だから……」


 私はドキドキしながら沢田くんの手を見つめる。大きくて綺麗な指が五本ついている左手だ。


「ん?【どうしたんだろ、佐藤さん。もじもじしてる??】」


 するよ。緊張する!

 でも、こんな時じゃないときっと恥ずかしくて出来ないと思うから……!

 私は不思議そうにこっちを見つめる沢田くんに思い切って口を開いた。



「このアトラクションの間だけでもいいから……私と手をつないでくれる?」







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