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第14話 沢田くんとあの約束


「だ、誰もいないよ! それより、麻由香ちゃんが沢田くんを倒したってほんと?」


 ベッドの陰に沢田くん。

 そんなドキドキシチュエーションをごまかすために話を振ると、麻由香ちゃんは「そーなの!」と嬉しそうに手を叩いた。



「景子ちゃんが退場した後、沢田くんが変な動きしなくなったからさあ、女子のみんなでボールの奪い合い! とにかく沢田くんさえやっつければ、森島くんがデートしてくれるって約束してくれてたからね。それでさあ」


 麻由香ちゃんはずしっとベッドに座り込んでしまった。

 スプリングの軋むベッドに沢田くんはますます身を縮ませる。



【ああああああ、見つかったら袋叩きだ! いや、火炙りの刑だー!「保健室のベッドで佐藤さんと何してたの?」なんて言われたらなんて言い返せばいいんだ! いや何もしてないよ! 何もしてないけど……あれ? 俺、何かしたっけ? 何もしてなければ隠れる必要ないのに隠れてる。ってことは、何かしたのかな? 何かしたような気がしてきた! でも、覚えがないっ……!!。゚(゚´ω`゚)゚。】



 落ち着いて沢田くん、覚えがないのは何もしてないからだよ!

 取調中の容疑者ってこんな心境なんだろうな。何もしてないのに何かしたような気になっちゃうっていう。



「それで、思いっきり投げたのね。そしたら沢田くんにバコーン! って当たったの。だから私がデートしてもらえるんだーと思ったじゃん? でも敵を倒した人数を言い出した奴がいて、MVPはいっぱい敵を倒した人のものになっちゃったんだよね! くやしー!!」

「そうだったんだ、残念だったね」



 こうなったら、一刻も早く麻由香ちゃんに帰ってもらわないと。

 フルパワーで頭を回転させていると、麻由香ちゃんがニヤニヤしながら言った。



「景子ちゃんも残念だったね」

「え?」

「もしうちらのチームに勝ってたら、沢田くんと手繋ぎデートできる権利は確実に景子ちゃんのものだったのにね!」



「!!」

【!?】



 きゃあああ! それ、今は言っちゃダメな話ーーっ!!



【手繋ぎデート……って??】

 沢田くんがソワソワし始める。



「あ、あ、あのっ、それは……っ!」

「景子ちゃん、沢田くんとデートするために頑張ってたのにねー。ごめんね、夢を打ち砕いちゃって。沢田くんって、こんなチャンスでもない限り女の子とデートなんかしてくれない感じだもんね。まあ、勝てばデートするって約束してくれただけでも奇跡っていうか?」



 あああ、なんかご丁寧に全部説明してくれちゃったよ!



【デートの約束……! 俺、そんなことしてたんだ!! そういえば、みんなに囲まれて無理やり何かをオッケーさせられたような記憶がある──!】



 あわわわ、沢田くんが思い出しちゃった!



【ちょっと待って。今この人、佐藤さんが俺とデートするために頑張ってたって言ってた⁉︎ 俺とデートするために⁉︎ 俺とデートするために⁉︎ 俺と……dファギャzごぎゃjなおkhfyなああああああ!?!?!? ええええええ〜〜!! 佐藤さんが俺と手繋ぎデートってどういうことーーー!!!((((;゚Д゚)))))))】




 ぎゃああああ、沢田くんがいろいろと気づいちゃったーーーっ!!!




 どうしよう、どうしよう?

 私が沢田くんのこと好きだって分かっちゃったかな⁉︎


 ドキドキしながら沢田くんの反応をうかがってみる。すると。



【お、落ち着け……! まだ佐藤さんの口からは何も聞いていない! 浮かれるな! 佐藤さんが俺とデートしたいと思っていたなんて、そんなこと何かの間違いに決まってる……!】



 あれ、意外と冷静?


【でも、もし本当だったらどうしよう! はうあああああ〜〜(੭ु´͈ ᐜ `͈)੭ु⁾⁾】


 あ、やっぱめっちゃ浮かれてた!

 しっぽパタパタ振っちゃってるよ!



「あっ、そういえば、Bチームの女子が沢田くん探してたんだけど、沢田くん来なかった?」

【ドッキーン!!((((;゚Д゚)))))))】


 麻由香ちゃんの言葉に、ベッドの陰の沢田くんの髪が縦に揺れた。


「き、来ていないよ……」

 私は思わず目を泳がせちゃったけど、麻由香ちゃんは気づかなかったようだ。


「ふーん。どこ行っちゃったんだろ? 沢田くんって雲隠れうまいよね。本当に忍者の末裔なんじゃないの?」

「そうかもね。あはは……」

「じゃあもし沢田くんが来たら、Bチームの子が一緒にお疲れジュースじゃんけんやろーって言ってたって伝えといて。負けたらチーム全員分のジュース代払うんだって」


【なにその鬼イベ。そんなの俺が負けるに決まってる!! マジで雲隠れしたい!!((((;゚Д゚)))))))】



 言いたいことだけ言って麻由香ちゃんが去った。

 静まり返った保健室に、私と沢田くん、二人だけの空間が戻る。



【どうしよう……。佐藤さんに聞いてみようかな。本当に俺とデートしたくて頑張ってくれたのかどうか……】



 まだベッドの陰に隠れたまま沢田くんが呟いた。

 私の心臓がまた大きな音を立てて鳴り始める。

 私たちの緊張感が部屋いっぱいに広がって、壁を突き破ってしまいそうだ。


 ……もうだめ、耐えられない。



「あ──あの……」


 思い切って「沢田くんとデートに行きたい!」と切り出そうとしたその時だ。



【ここで問題です】


 え? 問題?



【もしも佐藤さんが本当に俺とデートしてくれるなら──俺たちはどこへ行ったらいいでしょうか?


 A:映画館

 B:遊園地


 読者の皆様、コメント欄にどちらか行きたい場所を書いていってね!


 よろしくお願いしまーす(((o(*゚▽゚*)o)))♡】




 ここでまさかの、マルチエンディングシステム搭載……!?

 っていうか、誰に向かって呟いてるの、沢田くん!!!









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