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第7話 学校の七不思議?

 なんとか、キコを宥めて一緒にお菓子を食べ始めたところで、今度はセンカが走る音が聞こえてくる。

 バタバタと相変わらずのセンカの足音に僕は少しばかり疲れてきた。


「カイ! また面白い話を仕入れてきたよ!」


 センカは目を輝かせながら、僕たちの方に歩み寄ってきた。


 どうやら彼女が何か新しい怪事件のネタを仕入れてきたらしい。僕は内心ため息をつきながら、椅子に座り直した。


「キコちゃんに、タイコ先輩もこんにちは!」

「ふふ、センカちゃんは、いつも元気ね」

「センカ先輩! こんにちはです」


 センカの登場で空気が一気に和みを見せる。こういう空気を読まないセンカの行動に助けられる時もある。


「今度は何なんだ?」

「実は、学校の七不思議の話なんだよ。最近、新しい七不思議が追加されたって聞いて、興味が湧いちゃったの!」

「学校の七不思議? またその手の話か……てか、追加されたってなんだよ。そういうのって受け継がれていくんじゃないのか?」


 僕が少し呆れたように言うと、センカは負けずに微笑む。


 テーブルに両手をついて身を乗り出してきた。


「ちょっと待ってよ! 現代の学校にも七不思議があるなんて、面白くない? それに、今回は特に奇妙なんだよ!」

「奇妙って……具体的にはどんな不思議があるの?」


 夜代先輩が興味深そうに尋ねると、センカは得意げな表情で七不思議の概要を話し始めた。


「ふふん! それじゃ教えてあげよう!」


 1. デジタルゴースト


 夜遅くまで残った生徒のスマホに、謎のメッセージが届く。開くと意味不明な文字が映り、それを解読しようとするとスマホが勝手に動き出すという。


 翌日、メッセージを見た生徒の記憶からその内容が消えている。


 2. スマートミラー


 ある特定のトイレの鏡に顔を映すと、その日の夜に鏡の中からもう一人の自分が出てきて、誰かに悪戯を仕掛けるという噂。


 翌日、その生徒は鏡の自分と入れ替わってしまう。


 3. 一人で動き出すロボット掃除機


 放課後、無人の教室をロボット掃除機が掃除しているが、ある時間になるとその掃除機が突然暴走し、生徒を追いかけ回す。


 逃げ切れないと、次の日その生徒の机がぐちゃぐちゃに荒らされている。


 4. タッチレスハンド


 ある特定の教室で、エアタッチのように手をかざすと見えない手が握り返してくる。さらにその日、その手を感じた生徒は誰かの手で肩を触られたような感覚を夜中に感じる。


 5. 幽霊のエアポッド


 部室の近くでエアポッドの落とし物が見つかり、拾うと、勝手に音楽が再生され始める。それが幽霊のささやき声のようで、聞き続けるとその場から動けなくなるという話。


 6. SNSカップル


 校内で特定の写真スポットで写真を撮ると、必ず幽霊のような影が映り込む。それが噂となり、放課後のそのスポットにはカップルが現れて心霊写真を試すが、後日カップルが喧嘩別れしてしまうというジンクスがある。


 7. タブレット教科書の落書き


 放課後、教科書を机に置いたまま帰ると、翌日にはその教科書に謎のメッセージや顔文字が書き込まれている。消しても消しても、次の日には新たに書かれているため、恐れられている。


「どう? ちょっと現代的でしょ?」


 センカは得意げにこちらを見つめてきた。僕はその七不思議のラインナップに内心で驚きながらも、思わず苦笑してしまう。


「まぁ、確かに……現代っぽい感じがするな。どうやってこれを試すつもりなんだ?」

「もちろん、私たちで全部調査するよ! カイ、キコちゃん、タイコ先輩、みんなでこの七不思議を解き明かしてみない?!」

「えっ! 私もやるんですか?」

「ふふ、面白そうね」

「いや、部員じゃないし」


 センカがそう言って意気揚々と語りだすと、夜代先輩も興味を示し、キコは驚いていた。


 センカが新しい七不思議を説明し終わると、部室の中は自然と会議のムードになった。僕はお菓子を手に取りながら、センカの熱意に付き合うしかないと腹をくくった。


「それで、どれから調査するつもりなんだ?」


 僕が尋ねると、センカは意気揚々とテーブルに指を滑らせて七不思議のリストを示した。


「そうだなぁ、どれも魅力的だけど……まずはやりやすそうなものから始めたいよね!」

「やりやすそうって、どれのことだ?」


 夜代先輩が興味津々な表情でセンカを見つめる。センカは一瞬考え込んでから、口を開いた。


「やっぱり一番簡単に試せるのは『デジタルゴースト』かな? 放課後にスマホにメッセージが届くって話だし、みんなで遅くまで残れば簡単に検証できるんじゃない?」

「それって、ただ夜遅くまで待ってるだけなんですよね? そんなの、つまんないじゃないですか!」


 キコは不満そうに腕を組んだが、センカは負けずに説明を続けた。


「そうだけど、何かメッセージが届いたら解読できるかもしれないし、夜代先輩なら詳しいんじゃない?」

「ふふ、そうねぇ。確かに、ちょっと興味が湧くかも」


 夜代先輩がうっすらと微笑み、こちらに同意を示した。センカの提案に反対する者はいなさそうだが、他にも気になる不思議がある。


「個人的には『スマートミラー』も興味深いと思います!」


 キコが言うと、センカはうんうんと頷いて同意を示した。


「確かに、鏡の中からもう一人の自分が出てくるってのも面白そうだよね! ただ、ちょっと怖いかも?」

「怖いからこそ、怪事件捜査部の出番じゃないですか。センカ先輩は肝試しが得意なんですよね?」


 キコがセンカをからかうようにニヤリと笑う。センカはその挑発に負けじと、胸を張った。


「もちろん! でも、あくまでも今回は調査だからね! ちょっと手分けして、簡単なものから始めるのもいいかもしれない」

「それなら、初日は『デジタルゴースト』で様子を見て、それが終わったら『スマートミラー』に行くのはどう?」


 夜代先輩の提案に、センカもすぐに同意を示した。


「うん、それでいこう! まずは手軽に検証できるものから始めて、徐々に複雑なものに挑戦しよう!」

「まぁ、俺たちの怪事件捜査部らしい、無理のないスケジュールだな」


 僕がそう言うと、全員がうなずき合った。僕たちの怪事件捜査部の調査は、まずは『デジタルゴースト』からスタートすることに決まった。


「じゃあ、今日は学校に残ってそのメッセージが届くか見てみよう!」


 センカが明るく宣言すると、キコも夜代先輩もそれぞれ準備を始める。こうして、怪事件捜査部のメンバーは、学校の七不思議の調査に乗り出すことになったのだった。

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