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第20話 御前試合の裏側1

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 ことの始まりはレオパルド卿から来た一通の手紙だった。

 手紙には日付と時刻と場所が一文が記載されている。

『その場所にて待つ武器や魔具の類は置いてきて頂けるとありがたい』

 最初は怪しいと思ったが差出人がレオパルド卿であるとわかっている為にとにかく会ってみるかと思った。

 ただ気になるのは女神様から渡され熟読した本には悪役貴族が飛竜に食われる前にレオパルド卿の様な赤毛の主人公に会い会話をするシーンがあった事である。

「何処か行くのですか?」

「起こしてすまない」

 手紙に書いてあった日の夜がきた。

 いつもの様にリゼッタとの逢瀬を楽しみ執事のハイゼンが付いて来ないように鱈腹酒をのませ寝かせる。

 侍女メイドのクロエはそもそもめんどくさがりだから関わらない。

「レオパルド卿に会うのですか?」

「どうだろう?」

 言えないように手紙には魔法がかかっている。

 だから曖昧に答え外出できるように準備を終えるとリゼッタの近くに近くまで歩み寄り頬にキスをした。

「すぐに戻ってくる待っていてくれ」

「大丈夫です・・・どうか怪我をなさらないように・・・」

 部屋を出て馬屋に向かい馬に乗ると手紙に書いてあった場所に向かって走って行く。

 手紙に記載されていた場所は町はずれにある朽ちた教会で手紙に書いてある時刻よりも少しばかり早く到着する。

「さて何が出るかな?」

 朽ちた教会に入り手紙に記載されていた時間まで待つ。

 すると真っ暗な暗闇に月明りが差し込み明るくなった時だった。

「やぁ・・意外に早く到着したんだね?」

 暗闇の中から現れたのはボンボニ・エール卿との決闘において立会人を務めた赤毛の仮面騎士だった。

「あなたがレオパルド卿ですか?」

「へぇ・・・何故そう思うんだい?」

「妻のリゼッタに教えてもらいました」

「なるほど・・・なら仮面で隠すのは無粋だね」

 するとレオパルド卿は仮面を外し顔を露わにする。

 彼の顔はとても中性的で女性と言われても遜色ない顔立ちをしていた。

「こんばんわリオベル・ウルフィン」

「はじめましてレオパルド・レヴァンティン」

 俺は普通に頭を下げ挨拶を返す。

 同時に周囲の気配を探ると何人か武装した暗殺者アサシンが暗闇の中で控えていた。

「どうしてわざわざ手紙を出してこのような場所に呼び出したんですか?」

「それは内緒の話をするために決まっているだろう?」

「内緒の話ですか・・・」

 貴族同士の内緒の話は決まってろくな事がない。

 だから溜息と共に言葉を漏らすと赤獅子公レオパルド卿は真剣な面持ちで言った。

「単刀直入に言おうリオベル・ウルフィン僕のために死んでくれないかな?」

 赤獅子公レオパルド卿は単刀直入に言い俺は苦笑いを浮かべる。

「死ぬですか・・それはまた無理難題ですね?」

「死ぬと言っても形だけだよ実際は生きている」

「一体どうして死ななくてはいけないんですか?」

仮面貴族マスカレイドになるためさ」

仮面貴族マスカレイド?」

 初めて聞く単語に俺は首を傾げながら復唱した。

 するとレオパルド卿は仮面貴族マスカレイドについて説明を始めた。

「社交界とは一線を隠す貴族社会・・・我々貴族は表の広報活動を主としているが仮面貴族は裏の汚い仕事を主としている」

「利権争いか?」

「そうとも言えるが実際は少し異なる仮面貴族の頂点に立つのは仮面を被る国王十二騎士の六名であり彼らは戦況を一瞬で変える兵器だ」

 そう言えばリゼッタも同じ事を言っていた様な気がする。

「そして残りの六名は戦況を一瞬で変える兵器を保有する所有者と呼ばれている」

「なるほど・・兵器を利用し金儲けをしている輩がいるわけか・・・」

「正解そして君の持つ黒い女神は彼らの天敵だ」

 レオパルド卿の一言を聞き俺は彼の方に視線を向け彼は語り続けた。

「神殺し・・・神の能力を殺す神界を追放された神を食らう黒き女神・・君が使役する女神の能力はまさに仮面貴族の頂点に立つ彼らの天敵ともいえる」

「決闘の様子を見ていたのか?」

「一応リゼッタは義理の姉だからね生きるか死ぬかは気になる所だろう?」

 確かに気になりはするがたまたま見たと言い訳するには少し苦しい何より虻女神との戦いで出した黒翼の女神の能力を看破している所も気になる。

「そこで君には一度死んでもらい僕を後ろ盾とし仮面貴族になってもらいたいそして仮面貴族の社交界である仮面舞踏会に出てもらう丁度良い舞台もあるしね」

「舞台?」

「今から数週間後に国王直属の騎士部隊が君の邸宅を訪れ国王の前で行われる御前試合への出場命令が下る相手は僕で目的はボンボニ・エール卿が亡くなった事で空いた十二騎士の一角を決める選定戦だ御前試合に集まる沢山の貴族の前で盛大に殺されれば 彼らは君を死んだと判断するだろう」

 やはり俺はどうあがいても国王の前で御前試合を行う羽目になるのかと肩を落とすと赤獅子公は一枚のスクロールを投げて寄越した。

「このスクロールは?」

「魔法が込められている開けば僕は君の事を殺すことは出来なくなる」

 目の前に落ちたスクロールを拾い上げる。

 赤獅子公レオパルド卿の殺さないと言う意思表示なのだろう。

「もしこの話を断るとどうなる?」

「君が僕と御前試合を行う為に旅立つ機会を狙って複数の仮面貴族が君の邸宅を襲撃しようと企んでいるどうやら僕に借りを作りたいらしい」

「面倒くせぇ……」

「国王の御前試合を断る事は出来ないし断る事が出来たとしても他の仮面貴族は様々な手段を使って君の事を殺しにくるだろうね」

 何をやっても自分に不利な状況になる。

 女神さまは言った今後の行動と善行次第で運命は変わるとこれまで行ってきた行動と善行の結果がコレなのだろうと納得した。

「あんたの傘下に入る見返りは?」

「君の大事な人達を守ろう……さしあたって執事のハイゼン・ウォルター氏には執事養成学校の校長の席を空けてあるし他にも君の妻や専属侍女を守る事を約束する」

 執事のハイゼンはもう年だ。

 あまり激しい戦闘には巻き込みたくはないし執事養成学校の校長ともなればお給金も大分出る。

 何時かはウルフィン家を辞めさせ老後の資金を作る足がかりを作らせようと思っていたがそれが丁度今なのかもしれない。

「はぁ……一つ条件がある妻のリゼッタとは今まで通りの生活をしたいそれが叶わなければ条件は飲めない」

「無論だ彼女は僕の義理の姉でもある危害が及ばない様に最善を尽くすよ」

 俺は赤獅子公レオパルド卿の提案を飲む事にした。

 同時に彼が手渡したスクロールを広げ魔法契約を結び彼に殺される事のないようにする。

「それじゃ次は御前試合でね?」

 御前試合でのある程度の計画内容を聞くとレオパルド卿はその場を去っていく。

 こうして俺は赤獅子公レオパルド卿にボコボコにされ飛竜に食われる事が決まったのだった。

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