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私はこれまで誠実にウルフィン家に仕えてきたと自負できるくらいに頑張ってきたつもりである。
その昔の若かりし頃の私は王国第二騎馬隊の隊長をしていた。
「ハイゼン……君は
しかしある日突然に解雇される事になる。
原因は前日の夜に訪れた酒場での一件だった。
「酒場で娘を助けただろう」
「はい」
「その時相手を殴ったな?」
「はい」
「相手は上の上の更に上の人間の御子息だ」
つまりは恨みを買ったと言う事である。
他の隊の隊員からよくある話だと聞いた事があったがまさか当事者になるとは思わなかった。
「さてどうするか……」
突然すぎて次の就職先のあてはない。
そんな困り果てた私に声をかけたのは先代の当主であったリオベルさまの父君だった。
「我が家で執事として働いてみないかい?」
「執事ですか?」
先代のウルフィン家当主であるリオベルさまの父君は丁度城を訪れていた。
そこで路頭に迷っていた私めの話を聞きウルフィン家の執事として迎えたいと言ってきたのである。
「君みたいな誠実な人間は執事が向いていると思うんだ」
後に子供が産まれた後に剣術を習わせたいと言う当主夫婦意向で私はウルフィン家の執事となる。
右も左もわからぬまま先輩執事に仕事を教わり国家執事資格を取るまでに成長した。
「今日でクビだハイゼン」
「はぁ?」
「早々に荷物をまとめて家を出ていけ」
あれから数十年が経過したある日の午後にリオベルさまに呼び出され応接室に来ると早々に
「どう言う事ですか私めが何を……」
理由を聞こうとするがリオベルさまは傍らに置いた刀を引き抜き刃をむける。
「いいから出ていけ俺はお前を殺したくはない」
「わかりました……それでは失礼します」
「待てハイゼン」
解雇を言い渡され荷物をまとめる為に応接室を出ようとすると刀を鞘に納めたリオベルさまに呼び止められる。
「お前には長い間世話になった……これはせめてもの餞別だ」
そうして彼は私の前まで歩み寄ると一枚の封筒を手渡した。
「なんですかこれは?」
「次の就職先だよ」
封筒は王都にある職業ギルドのものである。
数十年前の騎馬隊を
「ハイゼン・ウォルターさまですねお待ちしておりました!!」
執事を
するとそこには恰幅が良く人の良さそうな小人族の男性がいた。
彼は会うなり一枚の紙を手渡す。
「王都の執事養成学校の校長ですか?」
「はい……我々は勤続年数と見た目と人柄を重視しておりまして……」
手渡された紙には王都でも歴史と風格のある執事養成学校の校長をお願いする契約書だった。
「何よりも剣術指南資格と国家執事資格をお持ちと伺い是非わが学校で教鞭をとって頂きたいと思ったのです!!」
「はぁ……そうですか……」
手渡された契約書の内容に目を通していると何やらとんでもない金額が記載されている。
「この金額は……なんでしょうか?」
「もちろんお給金になります我が校は歴史のある執事養成学校ですから……」
その金額はリオベルさまに仕えいた時の遥か数十倍の金額が記載されていた。
「フキンはこの様にナイフとフォークの順番には意味があります」
あれよあれよと話は進み私は歴史ある執事養成学校の校長になった。
午前は食前の食器の準備や立ち位置を講義し他にも服の洗濯方法や掃除の仕方を実技講習する。
午後は剣術指南と警護術に関する講義だ。
そして講義の合間には職業ギルドで出会った執事養成学校を運営している学長と世間話をする。
「ハイゼンさまは優秀ですな食器や洗濯方法などはランドリーメイドなどの仕事なので身に着けている執事は少ないのです」
「はぁ……私めの仕えていた家ではランドリーメイドなどいませんでしたから色々と一人でこなしていたのです」
「多彩なのですね〜話に伺っていた通りの方だ」
そんな学長の話を聞いて一体誰が私を学長に紹介してくれたのか気になった。
「すみません学長……私めの紹介してくださったのは一体誰なのですか?」
「はい……この執事養成学校を共同経営して頂いている赤獅子公レオパルドさまになります」
リゼッタ様の妹君の旦那様が取り次ぎをしてくれたのかとそう思った時である。
「そう言えば最近赤獅子公が国王直属護衛十二騎士になると伺いました……何でも他の騎士候補を打ち倒してなったとか……」
「そうなのですか?」
「えぇ……相手の騎士候補は赤獅子公に倒された後に飛竜に食われたそうです」
なんて酷い死に方をしたのだと思いつつふと飛竜に食われた吾人の名前が気になった。
「飛竜に食われた……その吾人の名前は?」
「はい……リオベル・ウルフィンと言う冷徹貴族だそうですよ?」
そこでようやく私はリオベルさまが国王直属十二騎士候補を決める御前試合に出た事を知る。
同時に御前試合の前日にウルフィン家の邸宅に火が放たれリゼッタさまと