「今までの戦いとは違う。俺はそう易々と負けないぞ!」
「せいぜい楽しませてくれよ!」
ヨイチの対戦相手も剣士だ。
「ヨイチくんの対戦相手はこれまでの対戦を見る限り凄まじい剣術の使い手だ。それに比べてヨイチくんは少しスキル頼りな部分が見えた。これは厳しい戦いになるだろう」」
エウロスはこの戦いの冷静に分析している。
「ダークストライク!」
ヨイチはスキルを使い相手に攻撃を仕掛ける。しかしその瞬間、相手の剣術が瞬時に反応し、剣を使ってヨイチのダークストライクをかわした。相手の剣術は流麗で、まるで風のように敏捷かつ正確にヨイチの攻撃をかわしていく。ダークストライクの暗黒の波動は剣舞いによって散り、ヨイチの攻撃は相手の堅固な守りに阻まれた。
「なっ!」
そのスキルをかわされた瞬間、ヨイチは微かな焦りを感じた。
「そんな攻撃じゃ俺には届かないぜ。次はこちらからいかせてもらうぞ!」
相手の剣術がヨイチを襲う。
「くっ!」
ヨイチは大剣でなんとかガードしているが押されているのは見てわかる。戦況は圧倒的不利だ。
「くそ!どりゃあ!」
ヨイチは大剣を振りかざす。しかし相手は最も簡単にその攻撃を避けた。
「君の実力もこんなものなのかい?少しは楽しませてくれると思ったけど期待はずれだね。もう終わらせようか」
相手との実力差は明確だった。
「アイスブリザードスラッシュ!」
コートに氷の風が周囲を駆け抜けた。空気が冷たく静まり返り、氷の粒子が舞い上がりながら、彼の周囲を取り囲んだ。
剣の刃が放つ輝きは青白く、まるで氷の刃を召喚するようだった。彼の斬撃は一瞬にしてヨイチの前に届き、それはまるで突風によって舞い上げられる氷の刃のように見えた。ヨイチを貫き、その姿を氷の粉雪に包み込んだ。
その後、氷の刃が周囲に広がり、場所を凍てつかせる。氷の粒子が敵の身体を覆い、ヨイチを一瞬のうちに氷漬けにした。氷の刃が消えると同時に、凍てつく静けさが場所を支配した。
相手は冷たい息を吐き出し、剣をかき鳴らした。
「こんなものか......つまらない」
相手が立ち去ろうとしたその瞬間だった。
ーーザクッ
氷面全体が突然ザクッという音と共に砕け散った。
「まだ負けちゃいねぇ!」
「そうこなくっちゃ!」
ヨイチは戦闘を再開する。
「くらえ!闇夜の斬撃!!」
ヨイチの技が繰り出されると同時に、相手は機敏に身をかわした。
「そんなのじゃ意味がないんだよ!」
相手その技を避けることに成功したかに見えた。
しかし、彼の避けた先にヨイチがいた。
「なっ!俺が避けるのを読んでいたのか!」
その瞬間、闇夜の暗黒が漂う中、ヨイチが剣を構え、その技を避けた先に立ちはだかっている。
「あぁ!お前の行動読ませてもらったぜ!」
ヨイチが微笑むように言い放ち、闇の中から瞬く間に現れた。彼の姿が、敵の意表を突いた状況を物語っていた。
「冥府の断罪!!」
ヨイチは大剣を大きく振りかぶりスキルを発動させた。大剣から漏れる暗黒のエネルギーが宙を貫き、相手に向かって鋭く突進する。闇の波動が相手に直撃したように見えた。
「少しはやるみたいだね。直撃したらまずかったよ。君のこと見直したよ!ここからは本気でいかしてもらう!」
相手がまだ倒れていないことにヨイチは気づく。
「あぁ!ここからが本番だ!」
会場はAコートでの試合に釘付けだった。剣士同士の熱い戦いが観客を熱狂させている。
ヨイチと相手は同時に構えを取り、一瞬の間を置いてお互いに向かって突進した。その瞬間、剣と剣が激しくぶつかり合い、闇と雷のエネルギーが渦巻く中、戦闘が再開した。
「おりゃぁあ!」
ヨイチは大剣を振りかぶり、相手に迫る。
相手も剣を振り回し、鮮やかな動きで攻撃をかわしつつ、ヨイチの接近を許さないように応戦した。
二人の剣士は激しく交わり、一触即発の緊張感が闘技場全体を覆う。土煙が舞い上がり、観客席からどよめきが起こる中、二人の戦いはその激しさを増していった。衝突する剣の音が響き渡り、空気が熱気で張り詰める。観客たちも息を呑み、その興奮を抑えきれない様子だった。
「くそ、決め手にかけるな......予選で使うつもりじゃなかったんだが負けるわけにはいかねぇからな、仕方ない」
ヨイチは暗黒エネルギーを集める。
「オーラブレード:闇 展開!」
大剣に暗黒エネルギーが纏わっている。
「オーラブレードを使うとはな、なかなかの実力者のようだ。なら俺も全力でいかせてもらう!」
「オーラブレード:氷 展開!」
「オーラブレード!? あの二人相当な剣士だね」
エウロスがオーラブレードを見て俺に言ってきた。でも俺はオーラブレードについて知らなかった。エウロスにオーラブレードとは何かを聞いた。
「オーラブレードとは剣士の中でもある試練をクリアしないと手に入れれないんだ。その試練は急に始まるから試練自体の発生条件は未だに明らかになってないんだ。運がいるとも言われてるし、実力が一定のレベルまで達すると発生するとも言われているんだよ」
「ヨイチが......あいつは運だな」
「そうなのかい!同じメンバーにそこまで言うとはレオは本当に面白いな!」
エウロスは笑顔でそう言った。
「いくぞ!」
ヨイチはオーラブレードで相手に攻撃を仕掛ける。だが相手には致命傷とはならない。
「くそ......」
「まだまだオーラブレードを扱いきれてないな!オーラも不安定だしな!はぁあ!」
ヨイチは弾き飛ばされた。そして相手は一気に詰めてくる。
「だが、お前は弱いわけじゃない。俺にこのスキルを使わせたのは3人目だ。誇りに思え」
相手は距離を詰めながらも剣の刃先からは冷気が漂っている。周囲の気温が下がり、氷結が剣の表面を覆い始める。相手は冷たい息を吐きながらヨイチに向かっている。力強い姿勢で剣を構え、その一瞬の静寂の後、氷の力が剣全体を包み込む。周囲の空気も冷たくなり、相手の目は凛とした覇気を宿している。
「
相手は氷の刃で一気に敵に斬り込む。凍てつくようなエネルギーが敵を貫き、周囲に氷柱が立ち上がる。氷凍覇断の後、戦場は凍てつくような静寂に包まれた。
「ぐはぁ......」
ヨイチは膝をついた。
「勝負あったね。もうあの子は立つこともできないだろう」
エウロスがそう言う。観客も皆そう思っている様子だった。その瞬間その空間が歪んだ。
「奥の手は最後まで隠すんだよ!」
次元の断絶が発動し、空間そのものが歪み始める。これにより相手の動きが鈍り、チャンスが生まれる。ヨイチはこの機会を利用し、反撃のチャンスを得る。
「今のは一体!?彼のHPも回復しているし何が起きたんだ!?」
エウロスは少し取り乱している。そして会場全体がざわついている。
「
ヨイチは身を闇に包み込み、その暗黒の力を全身に纏う。そして一気に敵に向かって突進し、暗黒の剣を高速で振り下ろす。剣が空気を裂き、暗黒の刃が敵に突き刺さり、その一撃は大きな衝撃をもたらす。闇に包まれたヨイチの姿が一瞬光り輝き、その暗黒の一撃が敵に命中する。相手は闇の中に吹き飛ばされ、暗黒のエネルギーに押し潰されるかのようにして倒れ込む。
「くそ......まだこんな力を隠していたか。俺の名前はスク。剣士よ、お前の名は」
「ドングリだ。」
「ふざけた名前だな......ドングリか、覚えておこう」
勝負は終わったかのように見えた。
「ドングリよ、俺もここで負けるわけにはいかないんだ。俺も奥の手を使わせてもらう」
スクは剣を構え直す。
「
吹雪が激しく舞い、周囲の風景が白一色に包まれる。スクは冷たい氷の風が全身を覆い、その手には絶対零度の氷霜が集束した剣が握られている。その剣は深い青色に輝き、恐るべき寒気を放ち、辺りの空気が凍りつくように感じられる。スクは一歩を踏み出し、その剣を高く掲げる。そのとき、凍てつくような風が剣を取り囲み、氷の刃が輝く。彼の動きが止まると、周囲の風も一瞬、静まり返る。
そしてスクは瞬時に突進し、剣が空を貫き、その一撃は氷の刃を放ちながら、ヨイチに向かって猛スピードで襲いかかる。刹那、青白い光がその一撃に宿り、その剣が敵に到達する瞬間、絶対零度の寒気が敵を包み込み、全身を凍りつかせる。氷の嵐が巻き起こり、ヨイチは絶対零度の氷の中に取り込まれ、凍てつくような絶望が支配する。
「なんだこのスキル!?強すぎるだろ......」
俺は周囲一体に影響を与えるスキルを前に驚きを隠せなかった。
「確かにこのスキルは強い......でも相当な剣術を要するようだね」
「なんでわかるんだ?」
「このスキルが発動された時から彼は今までになく極限まで集中しているように見えた。そして氷の剣術自体精密な剣術を要するからあまり人気がないんだ。その剣術の奥の手だ、正確な打撃と集中力、氷を操る技術が要るのだろう」
エウロスは真剣な顔で解説してくれた。
「Aコート試合終了!勝者アルケミストギルドのスク!」
「ドングリ、お前はまだまだ強くなれる。次の対戦を楽しみにしてるよ」
「あぁ!今回は負けたが次は必ず勝つからな!覚悟しとけ!」
二人は熱い握手を交わした。
「次の試合は......イザベラか。イザベラの対戦相手はアル!?」
「面白い試合になりそうだね」