俺達はヨイチを追いかけて冒険者ギルドへとやってきた。
「早速ギルドクエストを選ぶんだが......実装初日だからかクエストが少ないな」
ヨイチはクエストボードに貼られているクエストを見ながら言った。
イザベラはクエストボードの周りを見回し、数少ないクエストの中から一つを選び出した。そのクエストは、近隣の村を襲っているモンスターを討伐するというものだった。
「これとかどう?モンスター討伐ならみんなの実力把握にもなるでしょ?」
「他に良さげのクエストもないしこれにしようか!」
俺はイザベラの提案に賛成した。ヨイチとルナも頷いた。俺達はクエストを受付まで持っていき、受理することにした。
「モンスター討伐のクエストですね。あ......このクエストのモンスターなんですけど......」
受付係が一瞬口ごもった後、深刻な表情で話を続けた。
「ここのモンスターは実は何故か凶暴化しているんです。このクエストは他のギルドが一度失敗したクエストなので気をつけてください」
俺達は皆、受付係の言葉に耳を傾ける。ヨイチが眉を寄せて問いかけた。
「他のギルドが失敗したってことは、相当な強敵ってことか?」
受付の人は躊躇いながらも頷いた。
「はい、通常の同種のモンスターよりも攻撃力や耐久力が格段に高く、なおかつ集団での行動が多いようです」
「情報ありがとう。とりあえずモンスターを確認しに行こうか。作戦はその時立てよう」
俺は皆にそう言い村へと向かった。途中でヨイチが警戒を促した。
「もうすぐ村に着く。準備は出来てるか?」
ヨイチが俺達に確認する。俺達は互いに頷き、戦闘に向けて準備をした。村に近づくにつれ、不穏な空気が漂い始めた。暗い雰囲気が漂っており、焦げた痕跡や壊された建物が目立ち、モンスターの襲撃を物語る兆候がそこら中にあった。
村の中心部に近づくとスケルトンの影が見えた。それは通常のスケルトンよりも大きくで、周囲には同じような姿をした仲間たちが群れをなしているのが見えた。
「あれが討伐するモンスター......」
ルナが眉をひそめた。
「俺達も単体で挑むのはリスクが高いな。レオは除くがな!」
ヨイチが皮肉気味に言う。でもあながち間違っていなかった。この場所は影魔法にはもってこいの環境だ。俺は一人で目の前にいるモンスターを討伐できるだろう。しかしそれでは意味がない。今回は3人に任せようと俺は考えた。俺は仲間たちに振り返った。
「ドングリの言う通り俺は一人で討伐出来ると思う。そこでなんだけど皆の今の実力把握も兼ねてなんだけど今回の討伐は3人でして欲しいんだけど大丈夫?」
「あれを私達3人で討伐するの?さすがに無茶じゃないかな?」
イザベラが不安そうに言う。他の二人もその様子だった。でも俺はそうは考えてなかった。
「いや、3人が息を合わせて協力したら出来るはずだよ。」
「はぁ......マスターがそう言うんだしやるだけやってみるか」
「私も賛成です!皆の力を合わせたら必ず出来ます!」
「ルナがそこまで言うなら......やってやるよ!」
「よし、そうと決まれば作戦を立てよう!」
俺達は作戦を立て始めた。
「まずは私がアンデット達で達を集めます!」
「じゃあ集めたスケルトンに私がデバフをかけて戦いやすいようにしよう」
「そこまできたら俺も戦いやすいな」
それぞれの役割を確認しながら、戦術を練り上げていく。連携して敵に立ち向かうための作戦が着々と進行している様子だった。俺は物陰から見守る事にした。何かあったらすぐに助けに行けるようにあまり遠くには行かなかった。
「この作戦でいこう!早速始めるぞ!」
ヨイチは一瞬の間、目を閉じて集中し、そして手を高く掲げた。その合図に、ルナが呪文を唱える。
「アンデット召喚!」
地面から次々と、不気味な光を放つスケルトンが現れ始めた。彼らは静かに歩み寄り、オーガ達を取り囲むように配置される。
「皆!オーガ達を中央に集めて!」
ルナの使役するアンデッドたちは、オーガ達を引き寄せ始め、闇の中で静かな音を立てながら位置を調整していく。その間にイザベラが次なるスキルの準備を進めていた。
ヨイチの目は冷たい決意で輝きを増し、戦場の空気が緊迫感に包まれる。そしてオーガが中央に集まるとすぐにイザベラがスキルを発動させる。
「混沌の包囲......」
イザベラのスキルが発動し、暗黒の幕が敵の視界を奪う。オーガたちは混乱し、不気味な光がその姿を包み込んでいく。
ヨイチはその状況を冷静に見つめ、次の一手を待っていた。敵の混乱が増すにつれ、戦況は次第に有利に傾いていくのを感じ取っていた。そしてヨイチは敵の混乱に乗じて素早く行動する。
「くらえ!闇夜の斬撃!!」
ヨイチの声が荒々しく響き、その瞬間、剣が彼の手元から疾風のように放たれた。彼の剣は暗黒の輝きを放ち、闇夜の深淵を切り裂くようにオーガに向かって斬りつけた。剣の刃は暗黒の軌跡を残し、オーガの肉体を貫いたかに見えたが、オーガたちは驚くべき頑丈さを示し、その攻撃からほとんどのダメージを受けなかった。
「まじかよ......硬すぎだろこいつら!」
ヨイチは苛立ちを隠せない様子でオーガに向かって叫びながら、再び剣を振りかざした。しかし、オーガたちはその攻撃から身を守り、ヨイチの激しい攻撃を軽く受け流しているようだった。
彼らの体は鋼のように頑丈で、ヨイチの攻撃を受けても動じることはなかった。その時ルナはアンデッドを操りながら、敵の動きを封じる魔法を続けて発動する。
「魂の束縛!」
ルナの声が響き渡り、魂を束縛するようにオーガたちを取り巻く。オーガ達の動きが一層鈍くなり、ルナの魔法がオーガ達の足元を取り囲んでいるようだった。
オーガ達はルナとイザベラの魔法に若干動揺を見せたが、その巨大な体から強靭な力を振り絞り、再び攻撃を試みた。それをヨイチは機敏な動きで攻撃をかわした。しかしその瞬間、別のオーガが巨大な拳を振り上げ、彼に向かって殴りかかった。
ヨイチが一瞬の隙を見つけ、その攻撃を避けるために後退した。しかし、オーガの巨大な拳は風を切り裂き、その振動がヨイチに接近する音を轟かせた。
「くっ!」
ヨイチは反応する間もなく、オーガの攻撃を受け止めることができなかった。オーガの拳が彼の体を直撃し、轟音とともに彼を吹き飛ばした。地面に激しく叩きつけられると、土煙が舞い上がった。
「ドングリさん!大丈夫ですか!?」
ルナが叫びながら駆け寄り、ヨイチの安否を確認する。ヨイチはそのまま自力で立ち上がった。ヨイチは手にした剣をしっかりと握りしめていた。
「なんとかな......あいつら連携も取れるのかよ」
ヨイチはゆっくりと立ち上がり、オーガたちに向かって再び剣を振りかざした。ヨイチは剣を振りかざし、オーガ達に立ち向かっていた。その間、ルナはアンデッドたちを巧みに操り、オーガたちの足元を混乱させていた。
「ルナナイスアシスト!」
ヨイチはルナに感謝を示す。
「大丈夫です、ヨイチさん!」
そのままヨイチはオーガたちの注目を引きつけるため、激しい攻撃を続ける。
「おい、オーガども!こっちだ!」
オーガ達がヨイチに集中している間に、ルナがイザベラに合図を送る。
「イザベラ!今です!」
イザベラは魔法を準備し、暗黒のエネルギーを手に集め始めた。その暗黒の光が周囲に漂い、戦場全体を暗く染め上げていく。
「
彼女の声が静かながらも力強く響き渡る。彼女の周囲に暗黒のエネルギーが集結し始めた。その瞬間、彼女の手から放たれた魔法の光は爆発し、周囲のオーガ達を巻き込んだ。黒い霧が広がり、衝撃波がオーガ達を襲う。その影響は周囲に広がり、オーガ達の多くを撃破した。
「これで決める予定だったんだけど......ドングリ!後は任せたよ!」
ヨイチは苦笑いしながら、敵への攻撃を仕掛ける様子だった。彼の言葉は戦場に響き、最後の決戦の幕が開かれた。
「あぁ!任せろ!漆黒の刃!!」
ヨイチの声が烈火のように戦場に響き渡り、彼の周囲に暗黒のエネルギーが集結し始めた。その一瞬、彼の剣が暗黒に包まれ、暗黒の刃が形成された。
「くらえ!!」
ヨイチは全身に込めた力を解放し、彼の剣から放たれた暗黒の刃は空間を貫き、オーガ達に猛烈な一撃を与える。その刃は光を吸い込むような漆黒の輝きを放ち、オーガ達に鋭いダメージを与えながら次々と彼らを薙ぎ払った。残りのオーガ達は猛烈な攻撃により倒され、その巨体は轟音と共に地面に激しく叩きつけられた。彼らの姿は消え去り、静寂が戻った。
ヨイチは息を整え、剣を地面に突き立てて立ち尽くした。彼の周囲には疲労と戦いの余韻が漂っていた。
「俺達3人で......やってやったぞ!」
「ほんとに私達だけで......」
ヨイチ達は感動に包まれていた。
「ギルドメンバーも強者揃いか......だが疲弊しきっている。接触するなら今だな」
突然、周囲の空気が重くなり、不気味な雰囲気が戦場に広がった。地面は微かに震え、何者かが彼らに接近していることを感じさせた。
「何者かがこちらに......」
ルナが小声で囁いた。
不気味な静寂の中、ヨイチ達は疲労困憊の中立ち尽くしていた。彼らの周囲には何かが迫っていることを感じていたが、その姿はまだ見えない。
その不気味な静寂は緊張感を増し、戦場に立ち込めた。次の瞬間、何者かの姿が見え隠れし始めたが、その姿はまるで闇に紛れ込んだかのような存在だった。
俺は皆を守るように物陰から出て皆の前に出た。
「お前は誰だ!何をしにきた!」
俺が声を張り上げると同時に、何者かの魅力的なオーラは周囲に広がった。足音が近づき、その姿が霧の中から浮かび上がった。不気味な笑みを浮かべた人物が俺達の前に姿を現した。
「そんなに敵対しないでくれよ。悲しいなぁ」
その人物は不思議な言葉遣いで微笑む。彼の言葉と微笑みは、通常の挨拶とは異なる、何か不穏なものを感じさせるものだった。金属製の装飾品が彼の身にちりばめられ、そのうちの幾つかは黒く光る物だった。彼の手には長い柄のついた鎌が握られており、その鎌は一筋の光を放ちながら、彼の影を追いかけるように舞っていた。鎌の刃は鋭く輝き、光を受けるたびに冷たい輝きを放っていた。彼の目は深い暗青色を帯び、まるで永遠の闇を内包しているかのように見えた。そして、その無表情な顔立ちは、冷たい雰囲気を漂わせていた。
「レオンハルトお前、魔族だろ?」
「なっ......!」
その一言で空気が変わった。俺の顔には驚きと緊張が交じり合って立ちこめた。対峙する相手の声は、静かながらも強い威圧感を持ち、何かを引き起こすことを予感させていた。その一瞬の沈黙が、不穏な空気を残していた。