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第20話【学園とオデッサイト、平行する冒険の日々】

 ーー翌朝ーー


「お兄ちゃん朝だよ!朝ご飯できてるから起きて!」


 エリカの明るい声に迎えられ、俺はベッドから起き上がった。部屋には朝陽が差し込み、新しい一日の始まりを感じさせてくれる。エリカは笑顔で手作りの朝食を俺に差し出す。


「毎日ありがとうなエリ、いただきます!」


「お兄ちゃんがお金稼いでくれてるんだからこれくらい当たり前だよ!ほら、あったかいうちに食べよ?」


 朝食を共にしながら、エリカは最近の学校のことや友達との楽しい話を話してくれた。俺はエリカの話に聞き入りながら、優しい微笑みが生まれる。


「今日数学の小テストがあるから先に行くね!ちゃんとお兄ちゃんも学校に行くんだよ!」


「わかってるって!小テスト頑張ってな!いってらっしゃい!」


「行ってきます!」


 エリカは元気よく玄関のドアを開けて登校した。


「俺も準備して行くか......」


 俺は制服に着替えて学校に行く準備をした。


「行ってきます」


 俺は学校へと向かった。途中ヨイチとばったり会った。


「おはようハルト!なぁ、月曜日って憂鬱だよなぁ......早く帰ってオデッサイトしたいな......」


「それな!俺も帰って続きしたいな」


 ヨイチと俺は共感しながら、学校の門をくぐって教室へ向かった。授業が進む中、頭の中は昨日の暴走したことで頭かいっぱいだった。やるべきことをこなしながら、気になることが頭をよぎる。


「魔族になってから苦労ばっかだな。まぁ、強くなるためには必要か......」


 俺はつい口から言葉が出てしまった。それをヨイチに聞かれた。


「ん......?今何つった?魔族?まさかお前があのプレイヤー唯一の魔族なのか!?」


 ヨイチは興奮して大声を出した。


「そこうるさい!じゃあヨイチくんここの問題解いてみて」


「えっと......わかりません」


「はぁ......ちゃんと授業に集中してください」


「すいません......」


 ヨイチは俺に近づき耳打ちで聞いてくる。


「さっき言った魔族ってのは本当なのか?なぁ、答えてくれよハルト」


「はぁ......まぁお前ならいいか。誰にもいうなよ?実は......ひょんなことから魔族になったんだよ」


「マジかよすげぇな!羨ましいなぁ、俺は最近二次転職したんだけどレベル上げが大変でさ......」


 ヨイチはオデッサイトでの話を俺に聞かせ続けた。

 放課後、ヨイチと一緒に帰りながら話をしていると、ヨイチが突然言った。


「そういえば前言ってた一緒にやるって約束ちゃんと守れよ?」


「しつこいなぁわかってるよ!でも当分は出来なさそうで、ごめんな」


「やっぱ魔族さんは忙しいんだな、まぁ気長に待つわ」


「そうしてくれると助かるよじゃあ俺こっちだから」


「ああ、また明日な」


 俺はヨイチと別れて家へと向かった。


「今日はバイト早上がりだし帰ってオデッサイトするか」


 家に着くと既にエリカが帰ってきていた。


「あ、お兄ちゃんおかえり!数学のテスト満点だった!」


「おお、さすがエリだな!」


「私宿題してくるねバイト頑張ってね!」


「ありがとう、行ってきます!」


 俺はバイト先のカフェに向かった。


「お疲れさま!ハルトくん、今日もよろしくね。」


 カフェの店長である真奈美さんが、笑顔でハルトを迎えてくれた。俺は軽く頭を下げながら応えた。


「お疲れ様です店長。今日も頑張ります!」


 真奈美さんはハルトに軽く手を振りながら、カウンターに向かって歩いていった。


 夕方になり、カフェは賑やかになってきた。俺は注文を受けたり、料理を運んだりと慌ただしく働いていた。カフェの中には笑顔で楽しそうな会話が絶えず、その雰囲気に俺も心地よさを感じながら働いていた。


 仕事が終わり、俺は真奈美さんにお疲れ様と挨拶をしてカフェを後にした。


「ただいまー!」


「おかえり!晩御飯出来てるから一緒に食べよ!」


「ありがとうエリ!いただきます!」


 俺達は朝同様食事を共にする。食卓に並ぶ料理は、エリカの手料理でありながらも、彼女のセンスと工夫が感じられる美味しいものばかりだった。俺は喜んで箸を進め笑顔で言った。


「エリ、本当においしい!これ、また作ってほしいな」


 エリカも嬉しそうに笑って返した。


「ほんと?よかった!」


 食事の合間、エリカが話しかけてきた。


「お兄ちゃん、今度学校の友達と遊びに行ってもいい?」


 ハルトは少し驚きながらも、優しく頷いた。


「もちろんだよ、エリ。たまには友達と羽休めしてきな」


 エリカは嬉しそうに微笑んだ。


「わーい!ありがとうお兄ちゃん!」


 夕食後、俺はオデッサイトにログインすることにした。


「流石にもう暴走してないよな......よし、ログイン!」


 ーーープレイヤーハルトおかえりなさい。ログインを開始しますーー


 どうやら既に暴走は終わっていたようだ。ログインすると俺はベットに横になっていた。側にはゾルガンが居る。


「お、目を覚ましたかハルト、まさか感情に飲み込まれるなんて、すまんかった」


「ゾルガンが謝る必要なんてないですよ!俺がまだまだ未熟だったから......」


 ゾルガンは少し安心したような表情を見せながら、俺に声をかけた。


「焦ることはない。お前はすでに強い。次はその力をもっと理性的に操れるようになるのが課題だな」


 二人はしばらくの間、静かな時間を共有した。俺は自分の中に眠る力と向き合い、新たな冒険への準備を始めることを決めた。 部屋の扉が開き、そこにはフィンの姿があった。彼の鮮やかな赤い瞳が部屋を覆い尽くすような情熱を感じさせる。

 フィンは静かな声で言った。


「失礼します。訓練は終了したようですね。どうやら暴走したらしいですが大丈夫ですか?」


 俺はベットから立ち上がり言った。


「もう大丈夫です。」


「それは良かったです。早速なのですが連れて行かなければならない場所があります。私に掴まってください」


「わかった、行こう」


 それを見ていたゾルガンが力強く言った。


「ハルト!アクシデントはあったがお前は強くなった!だがまだまだ課題が山ほどある!その課題をこなしながら焔帝闘技を極めていけ!」


 俺はゾルガンに感謝を込めて言った。


「ゾルガン......ありがとうございます!これからも頑張ります!」


「それでは参ります」


 フィンの言葉と同時にフィンのスキルにより俺は城へと戻ってきた。


「連れて行きたい場所は城の中から行きます。こちらです」


 フィンは壁面をなぞるように手を伸ばすと、ひとつの模様を押すと同時に微かな音を立てて壁が開くような仕掛けがあった。壁がゆっくりと動き出し、隠されていた通路が明らかになった。


「こちらは極小数の魔族しか知らない隠し部屋への入り口です。どうぞお入りください。」


 フィンは丁寧に俺に説明し、通路に入るよう促した。


 俺は少し緊張しながらも、興奮が胸を駆け巡った。俺は隠し部屋に何が隠されているのか、どんな秘密が明らかになるのかを知りたいと思った。


 暗闇を進む通路の先に広がる隠し部屋は、古代の知識と歴史が詰まった空間だった。部屋の壁には精巧な彫刻が施され、その一部には魔族と異種族が共に生きているようなものもった。色鮮やかな絵画が織りなす風景は、かつての平和で協力的な関係を物語っていた。


 部屋の奥には巨大な本棚があり、その本棚には古代の書物がずらりと並んでいた。さらに奥の部屋には祭壇のようなものがあり、その周りには古代の魔法陣が描かれていた。


 この部屋は時間を超えた証言の宝庫であり、魔族と異種族の過去の結びつきを垣間見ることができる貴重な場所だった。


「この場所は......一体......」


 俺はフィンへと疑問をぶつける。それにフィンが答えた。


「これはかつて魔族と異種族が共存していた時代のものです。現在ではそのほとんどが失われていますが。それらの書物をかつて私が仕えていた古の魔王が保存していました」


 俺は驚きを隠せなかった。


「魔族と異種族が共存していただと......?でもなぜその関係が崩れたんだ?」


 フィンは静かに息を吐き、過去の出来事を語り始めた。


「かつては魔族と異種族は協力し、共に繁栄していました。しかし、ある日を境に異種族と魔族の間に戦争が勃発し、仲間割れが始まりました」


 彼の声は哀しみを含んでいた。


「争いは長く、深刻になりました。結果として、魔族と異種族の間に溝が生まれ、互いを信じることが難しくなったのです」


 フィンの言葉は静かで、しかし背後に隠された苦悩が感じられた。彼は過去の出来事を振り返り、その影響が今も尾を引いていることを知っていた。


 俺はフィンに向かって問いかけた。


「なぜ戦争が起きたんだ?フィンの話だと魔族と異種族が共存していたんだろ?平和な状態から一体、何が起きたんだ?」


 フィンは深いため息をつき、過去の出来事を思い出しながら説明を始めた。


「戦争の原因は、資源や領土の争いから始まりました。当時、魔族と異種族は共に暮らしていましたが、魔族の持つ資源の希少性や領土拡大の欲求が争いを引き起こしたのです。最初は小さな摩擦から始まり、徐々に大きな争いへと発展しました」


 フィンの声には、その記憶を振り返る悲しみが滲んでいた。


「争いが深まるにつれ、双方の信頼関係が崩れ、誤解と敵対心が広がっていきました。それが戦争の遠因となり、魔族と異種族の絆が断たれてしまったのです」


「最初は魔王様と共に抵抗していました。しかしある日異種族の中に特殊な力を持つ者が現れたんです。その力は私たちにとって未知のもので、魔王様でさえもその者の力に対処することが難しかったのです」


 フィンは続けた。


「その者の力が強くなるにつれて、戦況は次第に不利になりました。そして魔王様も負傷し、状況は逆転。最後の手段として、魔王は私達魔族を連れて今の魔界に逃げ込んだのです」


「そんなことが……」


 俺は驚きを隠せずに口にした。そして更なる疑問をフィンに問いかける。


「どうして今、俺にそれを教えるんだ?」


 フィンは静かに息を吐き、深く考えた後に答えた。


「あなたには魔族と異種族の間に横たわる過去の真実を知ってほしいからです。あなたは古の魔王の息子です。私たちの未来に大きな意味を持つかもしれません。過去を知ることで、未来を理解し、共に進む道を見つけられるかもしれません」


 フィンが続けて言う。


「ここにきたもう一つの理由がこれです。これをハルトさんに渡すためです」


 フィンは重厚な指輪を手に取り、その光沢を眺めながら俺に向かって語りかける。


「この指輪はかつて、魔王様が身につけていたものです。魔王様は、その時代の中で非常に強大な力を持っていました。戦争で負傷した魔王様は未来のためにと自身の力の一部をこの指輪に封印しました。封印を解くのは容易くないでしょう。しかし封印を解くことができたならハルトさんは魔王様の力を手に入れることができ、更なる高みへといけるでしょう」


 俺はフィンから指輪を受け取りつけた。


 装備品:封印されし古の指輪


 説明:この指輪には古の魔王の力の一部が込められています。しかし、現在のそのほとんどが封印されています。封印を解くことで能力を得ることができます。


 効果

 MP +250 MDF+100 INT +360 ※この能力の一部は封印されています。


 スキルの威力を増強※この能力の一部は封印されてます。


 ??? ※この能力は封印されてます。


 ??? ※この能力は封印されてます。


 ???※この能力は封印されてます。


 ???※この能力は封印されてます。


 ???※この能力は封印されてます。


 俺は指輪の効果を見て驚いた。


「封印されているのにこの能力か......全部解放したら一体どうなるんだ?」


「渡すものも渡しましたしここから出ましょう」


 フィンはそう言い俺を連れて隠し部屋から出た。そしてフィンは俺に次のクエストを出す。


「フィンさんにはもう一度現界へと行ってもらいます。次の目的は仲間を集めることです」


「仲間......?現界にいる魔族のことか?」


 フィンは否定する。


「いいえ、異種族の仲間を見つけてきてもらいます。先程説明した戦争......実は魔族側についた者もいます。ネクロマンサーと黒魔導士そしてそこから派生した職業の者です。ハルトさんにはその者の中で信頼できる人を仲間にしてきてもらいます」


「なぜ仲間を集めるんだ?」


「先程説明した特殊な力を持つ者は現在その種族の王として君臨しています。今は何もありませんが、いつまた戦争が始まるのかわかりません。その時のために備えておきたいのです」


「なるほど......わかった仲間を集めてくるよ」


「ありがとうございますハルトさん、それではゲートの場所へ行きましょう」


 俺はフィンに連れられてゲートへと向かった。


「だいぶこのゲートにも慣れたな、フィン行ってきます」


「行ってらっしゃい、ハルトさん」


 俺はフィンに別れを告げ現界へと向かった。俺は焦りながらも、その場所で得た重要な情報や指輪の力などフィンから教えられたことを思い返す。


 ゲートをくぐり抜け、俺は再び現界へとやってきた。目の前に広がる光景は、戦争などとはかけ離れた異なる生活の様子に溢れている。俺は思わず深呼吸をし、仲間を集める旅に出る。

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