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第19話【焔帝の烈火:暴走と激闘の果てに】

「ハルト、戻ってこい!お前自身で炎をコントロールしろ!」


「......」


「くそ......完全に自我を失っているな」


 ゾルガンの瞳には決意と共に力強い光が宿り、彼の全身から圧倒的なエネルギーが湧き上がっていた。炎の中で輝くその姿はまさに焔帝闘技の真髄を体現しているかのようだった。彼は今まで以上に力強く、漆黒に染まった炎を制御するべく全身全霊で戦っていた。


 ーープレイヤーの精神異常を検知、強制ログアウトしますーー


「う....オデッサイトまじリアルすぎだろ、まぁ、それが売りなんだけどさ.....どっと疲れたな」


 ーーゲーム内でプレイヤーの精神が暴走しました。暴走が収まるまでログインできませんーー


「......一度寝るか」


 俺はゾルガンなら俺を容易に止めれると思いながらも悔しい思いを持ちながらも眠りについた。


 その頃、火山の頂ではーー


「くそ......ハルトの潜在能力がここまでとはな......」


 ゾルガンはその場で言葉を切り、意表をつかれた驚きと共に、闘志を湛えた表情を浮かべた。その瞳には先ほどまでの余裕がなく、一筋の真剣さが滲んでいる。


「......」


 ハルトの身体は炎を纏い、その動きは鋭く、かつ無駄がない。ゾルガンもまた、焔の力を巧みに操り、的確な攻撃でハルトに立ち向かっている。


 ハルトの眼には焔が灯り、その炎は理性を飲み込んでいる。無言のままゾルガンに向かって歩み寄った。攻めてくる姿勢から感情に飲み込まれた異様な空気が漂っていた。


「舐めてかかったらまずいな、集中だ」


 ゾルガンは感情の炎を奮い立たせ、繋がりをより強固なものにした。彼は自らの潜在能力を開放し、周囲に炎の渦を巻き起こすような力を発揮した。その瞬間、ハルトもまたその力に呼応し、漆黒の炎が更に激しく燃え上がっていく。


「ハルト......少し傷つけてしまうぞ」


 焔の轟音に紛れながら、ゾルガンの声が響き渡った。その言葉は燃え盛る戦場に響き、決意と覚悟を伝える圧倒的な存在感を放っていた。


 激しい打撃音が響き渡り、彼らの戦いは焔の渦巻く領域で繰り広げられていた。その光景はまさに壮絶で、二つの異なる焔がぶつかり合い、炎の舞台がさらに激しさを増している。


「......」


「なっ!」


 ハルトの攻撃は異常なまでの速さでゾルガンに襲い掛かる。その瞬間的な動きはまるで稲妻が舞い散るようで、ゾルガンもその速さに驚きを禁じえなかった。


「まだ速度を上げるのか......少しまずいな」


 ハルトの攻撃が激しさを増し、ゾルガンもまたその速さに驚嘆の表情を見せる。焔の力が交錯する中、打撃音が会場に響き渡り、その激しさはまるで嵐のようだった。


「流石にこの勢いは凄まじいな......久しぶりの感覚だ」


 ゾルガンは感情の炎を更に奮いたたせながら焔帝闘技の技を次々と繰り出す。しかし、ハルトもそれに応じて瞬時に身のこなしを変える。焔の舞台で繰り広げられる激闘をさらに加速させていった。


「このままだとハルトの体は壊れてしまう......早く決着をつけなければ......」


 次第にハルトの動きが乱れていく。感情に飲み込まれたまま焔帝闘技の技を使いすぎていることが影響しているようだった。その異様なまでの速さが、次第に制御を難しくさせ、ハルトは焔の渦に巻き込まれるようにして攻撃を続けていく。ハルトの攻撃はますます乱暴になり、炎の力に身を委ねてしまっている。ゾルガンは焦りを感じながらも、ハルトが感情に飲み込まれていく光景を見つめ、戦いの様相は一気に緊迫したものとなっていく。感情の勢いに押し流されるように、ハルトの炎は次第に不安定になり、その身体は漆黒の炎に包まれていく。その暴走ぶりはまるで焔帝闘技そのものが彼を乗っ取ってしまったかのようだった。


「もう少し慎重に教えるべきだったか......」


 ゾルガンは焔帝闘技の技を次々と繰り出すが、ハルトの暴走は抑えられず、その身体は漆黒の炎に包まれていく。ゾルガンとハルトとの戦いの様相は一気に緊迫したものとなっていく。


 ゾルガンは炎の力を制御し、ハルトに立ち向かっていた。制御しながらも巧みに操りながらハルトとの戦いに臨んでいた。炎が猛威を振るい、二人の闘志が交錯していく。


 ハルトの攻撃は激しく、その速さと威力にゾルガンも手をこまねいていた。


「少し制御を解除するか......」


 炎が猛威を振るう中、その言葉が緊迫感を伴って漏れた。二人の戦いがますます激しさを増していく中、ゾルガンは焔の力を少し解き放つことを考えた。


 ゾルガンは制御を少し解放する。その瞬間、闘技場全体が強烈な光に包まれ、周囲の炎が燃え上がる。次第にゾルガンが有利になりつつあった。彼は焔の力をより効果的に利用し、ハルトの攻撃を避けつつ反撃に転じていた。


 ゾルガンの攻撃は的確で、ハルトの身体に次第に打撃を与えていく。


 ハルトは自我を失いながらも、焔帝闘技の技を無意識に繰り出している。そして不利になり始めたハルトは影魔法も使い始めた。

 ゾルガンの目の前にハルトの幻影が生まれる。


「影魔法か......ヴェラとの訓練で身につけたばかりだと聞いていたがもう使いこなすのか、幻影なら見切れるが......」


 ゾルガンは幻影の中に潜むハルトに対し警戒を強める。焔帝闘技の技を更に磨き上げながら、幻影の中に隠れるハルトに立ち向かっていく。焔と影が絡み合っている。

 ハルトは姿を消し、そして次の瞬間ゾルガンの背後から現れる。


「自我がない分動きは読みやすいな」


 ゾルガンは後ろからのハルトの攻撃を見切って反撃をする。


焔帝裂斬えんていれつざん!」


 彼の手から放たれた炎は一筋の閃光となって瞬く間にハルトに向かって斬りつけた。激しい戦闘が続く中、ゾルガンの焔帝裂斬がハルトに大ダメージを与えた。ハルトは一瞬の間、立ち上がりにくそうな様子を見せるが、なおも抵抗の意志を示していた。


「これで倒れると思ったんだがな......」


 ゾルガンの言葉が響き渡る中、ハルトが再び攻撃を仕掛ける。影魔法で幻影を生み出し、焔帝螺旋撃や熱情爆裂波といった技を使用してゾルガンに立ち向かった。乱暴な攻撃だったが焔と影の舞が一体となり、炎と闇のコントラストが戦場を彩っていた。

 ゾルガンは一瞬、焦りを感じる。ハルトの激しい抵抗に対して、彼の予測を超える動きに戸惑いがちらつく。しかし、その焦りも一瞬で消え、ゾルガンは再び冷静な表情を取り戻した。ゾルガンは一瞬の隙間を突いてハルトに迫り、激しい連続攻撃を仕掛ける。


烈火連鎖拳れっかれんしゃけん!」


 ゾルガンは相手に連続的に打ち込まれるかのような攻撃を繰り出した。彼の拳は炎をまとい、その軌道を描く炎の軌跡はまるで燃え盛る連鎖のようだ。一撃一撃が迅雷のような速さで放たれ、ゾルガンの烈火連鎖拳が、空気を裂きながらハルトに迫る。ハルトは影魔法で身をかわそうとするが、ゾルガンの拳撃はその身を振り絞るような速さで迫ってきて、全てを避けることはできなかった。だが暴走したハルトはまだ立ち上がる。


 戦場は轟音と共に炎と影が交錯する中で、両者の激しい攻防が続いていた。ハルトの身体は炎に包まれる。そしてゾルガンの拳は容赦なく迫る。


「まだ倒れないのか!流石に疲れてきたな。そろそろ終わらせたい、あの技を使うしかないか」


 ゾルガンは連続した攻撃を仕掛けた後、最後の一撃を準備し始めた。焔の力が彼の全身を包み込み、そのエネルギーが竜巻のように渦巻いていた。その間もハルトは攻撃をやめない。ハルトはゾルガンに見よう見まねで焔帝裂斬を繰り出した。


「一度見ただけで真似るとはな、だがこれで終わらせてやる」


 ゾルガンの全身に焔の力が集まり始めた。彼の瞳に宿る焔の輝きが一層強くなり、その熱気は闘技場全体を包み込む。周囲の炎が彼の身体に引き寄せられるように集まり、竜巻のような渦を形成した。


 その炎の渦が少しずつ龍の姿に変わり、闘技場の中央から巨大な炎の龍が形成されていく。龍の輪郭が揺らめき、焔が躍動するように見える。その瞬間、ゾルガンの声が轟いた。


「炎龍の咆哮えんりゅうのほうこう!!」


 ゾルガンの手から放たれた炎の龍が咆哮と共にハルトに向かって突進する。その龍の姿勢はまるで炎の渦が一気に姿を変え、焔の王者が具現化したかのような迫力を放っていた。


 ハルトはその一撃に間一髪で避けようとしたが、炎龍の熱気は彼の身体を包み込む。焔の力が彼の姿を乗っ取るかのように、炎の咆哮がハルトの周囲を取り囲んだ。


 そして、炎の龍がハルトに衝突した瞬間、轟音が闘技場に響き渡った。爆発的な熱気と共に闘技場の中央が焼け野原と化し、炎の渦が広がっていく中、ハルトは倒れ込んだ。彼の身体は炎に包まれ、その熱さがまるで爆発のように周囲に広がった。


 ゾルガンは息を整えながらハルトを見つめ、焔の龍が消え去るまでその場に立ち尽くした。そして、焔の渦が収束すると、倒れたハルトの姿を目にし安堵した。


「ほんとタフなやつだな、久々にこんなに疲れた......とりあえずハルト寝かせるために移動しよう」


 ゾルガンはハルトを抱えて寝かせる場所へと歩き始めた。

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