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第5話【魔族として、兄として】

 俺は影の聖域の効果ですぐに目を覚ました。

 ヴェラは微笑みながら言ってきた。


「お疲れさま、ハルト殿。訓練、そして戦闘、本当によく頑張りました」


 俺は少し疲れた笑顔で頷いた。


「ありがとう、ヴェラ。君の指導がなければ、ここまで成長できなかったよ」


 ヴェラは俺に手を差し伸ばしてくれた。俺はその手を受け、力強く立ち上がった。


 そしてヴェラの後ろからフィンが歩いてくるのが見えた。

 フィンがゆっくりと歩み寄り、俺に微笑んで言ってきた。


「お疲れさまです、ハルトさん。この短期間でほんとに成長されましたね。ヴェラ、君の指導の賜物なのだろう。君のおかげでハルトさんは本当に強くなりましたよ」


 ヴェラは謙虚に頭を下げた。


「ありがとうございます、フィン。ハルト殿の努力もすごかったですし、一緒に訓練できたことを嬉しく思います」


「それでは私たちは城に戻ります。ヴェラほんとにありがとう」


「分かりましたフィン、ハルト殿、短い間でしたが訓練できて楽しかったですよ。また会いに来てくださいね」


「はい!ヴェラさんありがとうございました」


「では、ハルトさん、城に戻りましょうか」


 フィンは微笑みながらおれを連れて暗影の森を後にした。城に戻る途中、フィンは俺に話しかけてきた。


「ハルトさん、あなたの成長は素晴らしいものです。ヴェラとの訓練で大きな進歩を遂げたことが目に見えて分かります」


 俺は感謝の意を込めて頷いた。


「ありがとうございます、フィン。ヴェラの指導があったからこその成長です」


 フィンは俺の肩を軽く叩いた。


「その通りですね。ヴェラは優れたトレーナーです。だが、あなたの自身の努力も大きな要因ですよ」


 城に戻った二人は一瞬静かに立ち止まり、城の壮大な景色を眺めた。そして、フィンが続けた。


「これからもっとたくさんの訓練が待っている。ハルトさん、あなたはまだ成長の途中です。しかし、その成長は私たちにとっても希望となるでしょう」



 俺は未来に向かって意気込む表情で答えた。


「俺はもっと強くなる。魔族として強くなるために」


「ハルトさんならもっと強くなれますよ。それでは私は仕事があるので1度失礼します。ハルトさんはくつろいでいてください」


 フィンが俺の意気込みを聞き笑顔で答えてくれた。


「そっか、なら1度ログアウトするか。ログアウト!」


 俺はゲームの世界から現実の世界へと戻った。部屋は日の光で照らされており、俺はゲームの世界から離れると同時に、現実世界の生活に戻った。


 俺の小さなアパートには、妹のエリカがいる。エリカは俺よりもずっと若いが、しっかり者で明るい性格の持ち主だ。俺達の両親は不慮の事故で亡くなり、兄妹は共に生きていく必要があった。俺は学校から帰ったらバイト、そして帰ってきてエリカとご飯を食べてそして自分の部屋でゲーム。この生活を繰り返している。


 エリカは俺がゲームを終えたのに気づき、微笑みながら俺に話しかけてきた。


「おかえり、兄ちゃん。今日はもう終わったの?」


「うん、今日のゲームはもう終わったよ」


俺はエリカに返事をした。それを聞いたエリカは心配そうに言った。


「それなら、兄ちゃん、早く寝るんだよ、私もう寝るからね」


「わかってるよ。おやすみエリ」


「おやすみお兄ちゃん!」


 俺は妹にそう言って寝ることにした。


 翌朝学校に行くとオデッサイトの話題でクラスがザワザワしていた。


「お、おはようハルト!なぁ、みたか?オデッサイトで魔族になったプレイヤーがいたらしいぜ?いいなー、俺も特殊な種族になってみたいもんだ」


 こいつの名前はヨイチ、俺の友達でオデッサイトをプレイしているらしい。


「へー、魔族ねえ、そのプレイヤーは余程幸運だったんだろうな」


俺はとぼけながらも答えた。


「だなー、俺にも幸運巡ってこねぇかなぁ、神様仏様どうかどうかー」


ヨイチは手をこすりながら言った。


「はいみんな静かに!授業を始めますよ!」


 先生が教室に入ってきた。授業が始まる。


「ハルト今度俺と一緒にオデッサイトやろうぜ!ダンジョンでお宝探ししようぜ!」


ヨイチが俺をオデッサイトに誘ってくれた。


「あぁ、時間が合えばやろうか」


俺は軽く返事をした。


「必ずだからな!」


 俺はヨイチとゲームをする約束をしたがヨイチには悪いが話題に上がっていた魔族が自分だから当分はする気は無い。


 放課後俺はバイトへと向かった。


「ありがとうございましたー! はぁ、やっとバイトが終わった......ほんと疲れた......店長!俺あがりますね!」


俺は疲れながら店長に言った。


「おぉ、ハルトくんお疲れ様!また明日」


店長は元気に答えた。そして俺も元気に店長へと返事をする。


「はい!また明日」


俺は服を着替えて家へと自転車で帰った。


「ただいまー!今日の晩御飯はなんですかー?」


俺は玄関を空けエリカに聞いた。


「あ、お兄ちゃんおかえり!今日はハンバーグだよ!」


キッチンからエリカが覗いて答えてくれた。


「お!エリの得意料理のハンバーグ!美味しそうだな」


「いただきます!」


 俺達は2人で晩御飯を食べた。そしてエリカを寝かしつけた。その後俺はゲームをすることにした。


「よし、ゲームにログインするか!ログイン!」


 ーープレイヤーハルトおかえりなさい。ログインを開始しますーー


「さて、今日はどんな訓練が待ってるんだろうか、今からワクワクするな!」


 俺はワクワクしながら新たな訓練に挑む気持ちだが、まだ俺は知らないことが多いことも意識している。


 次の訓練には俺にとって新たな挑戦が待ち受けており、それがどれほど厳しいものになるのか、この時の俺にはまだ予想できていなかった。次の訓練、火山の頂での訓練はヴェラの訓練の何倍も厳しいものになるのを......また訓練の前のクエストでの出会いを.......


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