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第4章【魔界の訓練巡り:暗影の森での訓練 Ⅲ】

 ヴェラが手料理を作るために準備を始めた。彼女の手際の良い動きは、まるで魔法のように滑らかで、調理器具と材料が彼女の意のままに動くのを見て、俺は見惚れていた。


 しばらくして、ヴェラは豪華な食事を用意してくれた。彼女の手料理は、見た目も美しく、味も絶品で、俺は感動した。


「美味しいですね、ヴェラさん。こんなに美味しい料理を作るなんて、本当にすごいです」


 ヴェラは微笑みながら言った。


「料理も魔法の一つです。料理を通じて、魔力のコントロールや感覚の鍛錬ができます。特訓だけでなく、食事も大切な一環です」


 俺はヴェラの言葉に納得し、しっかりと食事を楽しんでいた。そして、体力を回復した後、再び試合に挑む覚悟を決めた。


 ーー新スキル影魔法を習得しました。ステータスを確認してくださいーー


 俺は試合に挑む前にステータスを確認することにした。


「ステータスオープン!」


 名前: ハルト(魔族)

 LV16: HP 60 + 50, MP 85 + 50, ATK 52 + 50, DEF 53 + 50, INT 52 + 50, MDF 53 + 50, AGI 55 + 50, LUK 51 + 50


 パッシブスキル 魔族の復讐 (LV1):魔族専用スキル。魔族以外の種族に10倍のダメージを与える。与えるダメージに追加で50のダメージが付加される。


 復讐に燃える者 (LV1):体力が0になる時1で踏ん張り攻撃力が2倍になり、全てのスキルのクールタイムを解除する。


 デーモンスキン: 魔族専用スキル。自身のMDFに比例して被ダメージを減らす。


 称号 孤高の魔族: 全ステータス+50


 初代魔族プレイヤー: 魔族からの好感度が最大になりる。魔族に対する信頼度が向上し、特別な報酬が獲得できる。


 古の魔王の子供: 全ての能力上昇が10倍になり、特殊なスキルを得ることができる。ただし必要な経験値量が3倍になる。


 影の使者: 影魔法のスキルを向上させ、新たなスキルを習得する。


 スキル ダークブラスト (LV1): MP-5 クールタイム 3秒 ダークエネルギーを集めて放つ攻撃魔法。相手に闇属性のダメージを与える。


 ブラッドラスト (LV1): MP-6 クールタイム 35秒 相手からHPを吸収するスキル。ダメージを与えながら自身のHPを回復する。


 ダークシールド (LV1): MP-10, クールタイム 15秒ダークエネルギーで作られたシールドを展開し、一定時間DEFを大幅に上昇させる。


 影魔法(LV4): 影を操りより高度な戦闘をすることができる。


 影刃撃 (LV1): MP-10 影を具現化し、武器に変える。この影武器は闇のエネルギーでできており、通常の武器よりも強力である。


 闇の幻影 (LV3): MP-15 周囲に幻影を生成し、敵を惑わす。これにより、敵から一時的に不可視となり、敵の攻撃をかわすことができる。


 闇の縛り (LV2): MP-20 敵の足元に影を具現化して、相手を束縛する。これにより、敵の行動を一時的に封じ、攻撃を防ぐ。この束縛は時間とともに解ける。


 闇の追撃 (LV3): MP-25 瞬時に影の中に身を隠し、敵の後ろに瞬間移動する。敵への奇襲攻撃が成功すると、相手の防御を無視してダメージを与える。


 俺は新たなスキルと強化されたステータスを見て驚いた。俺は自分の力がさらに向上し、戦闘での能力が格段に高まったことを実感した。影魔法によるスキルの追加は、俺の闘志を燃え上がらせた。


「ハルト殿、そろそろ試合を始めましょうか」


「はい!始めましょう!」


 闘技場の中心で対峙するヴェラは、相変わらず冷静で凛とした佇まいだ。ハルトの心臓が高鳴り、手のひらにじんわりと汗がにじむ。これまで数多くの戦いを経験してきた彼だったが、ヴェラの前に立つとまるで初心者のように緊張してしまう。


「準備はよろしいですか?」


  ヴェラは穏やかに問いかけたが、その声には冷ややかな響きがあった。


「もちろんです!」


 ハルトは力強く答えたが、心の中では不安が渦巻いていた。彼女の実力は噂で耳にしていたが、実際に対峙するのは初めてだ。どんな攻撃が飛んでくるのか、全く予想がつかない。


 開始の合図と共に、ハルトはすぐに「影刃撃」を放つ。影の刃を具現化し、ヴェラに向かって勢いよく突き進む。しかし、ヴェラはわずかに体を横にずらし、その攻撃をあっさりとかわした。


「……!? そんな簡単に!」


 驚いたハルトはすぐに次の攻撃を仕掛けようとするが、ヴェラは微動だにせず、ただ彼を見つめていた。その視線がまるで「遊びにすらなっていない」と言わんばかりだ。


「どうしたのですか?ハルト殿、もっと本気で来なければ、この戦いは終わりませんよ」


「くっ……!」


 挑発に乗る形で、ハルトはさらに攻撃を繰り出すが、全てが無駄に終わる。ヴェラは一歩も動かず、ただ身軽にかわし続けていた。それに気づいたハルトは、次第に焦り始める。


「どうして当たらないんだ……?」


 俺の額には汗が滲み、息が荒くなり始めた。だが、ヴェラは相変わらず余裕の表情を崩さない。


「さて、そろそろ少しだけ力を見せましょうか」


 その言葉と共に、ヴェラの足元から黒い影が静かに広がり始めた。その動きはゆっくりで、まるで地面と一体化するかのようだ。ハルトはその異様な光景に身を固めた。


「影……これが彼女の本領か……?」


 影はハルトの足元にも迫ってくる。しかし、その速度はさほど速くはない。ハルトは冷静に考え、後退しながら攻撃の機会を伺うことにした。


「まだチャンスはある……!」


 ハルトは距離を取り、今度こそ決めるべく「闇の幻影」を発動する。数体の幻影がヴェラの周囲に現れ、彼女を囲む。ハルトはその隙に背後から攻撃を仕掛けた。


「どうだ!」


 だが、彼女は幻影に惑わされるどころか、静かに影を操り、幻影ごとハルトを捉えた。影がハルトの腕を掴み、動きを封じ込める。


「まさか……幻影ごと見抜かれるなんて……!」


「これで終わりだと思ってはいけませんよ、ハルト殿」


 ヴェラは優雅に微笑むと、影を解き、あっさりと彼を解放した。まるで「まだ戦いは本気ではない」と示すかのように。


「どういうつもりだ……?」


 ハルトは困惑した。影の威力を見せつけられたにも関わらず、ヴェラは決して止めを刺そうとしない。まるで試されているような感覚だ。


「あなたがどれほどの力を持っているのか、見極めたいのです」


 ヴェラの言葉が耳に届き、ハルトは悟った。これは「試練」なのだと。彼女はまだその本気を出していない。冷や汗が背中を伝い、彼は再び体勢を整えた。


「俺の力……見せてやる!」


 再び立ち上がったハルトは、全力で「闇の追撃」を発動する。これまでよりも素早く、正確にヴェラに接近しようとするが、彼女の動きは変わらない。影がハルトの動きを読み、彼の攻撃を受け流していく。


「なぜだ!どうしても届かない!」


 ハルトは次第に焦燥感に包まれる。彼の攻撃はすべて無駄に終わり、ヴェラはまだその表情に変化を見せない。彼の技術では、この壁を越えられないのか……?


「大丈夫です、ハルト殿。まだ始まったばかりですよ」


 その言葉が響くと同時に、ヴェラの影が一気に広がり、空気が変わった。今までの「穏やかさ」が一瞬で消え去り、代わりに恐ろしい圧力が襲いかかってくる。


「!? な、何だ……」


 影がまるで生きているかのように蠢き、ハルトの周囲を取り囲んだ。それはまるで無限に広がる闇の海の中にいるかのような感覚だ。


「今度こそ本気で参りましょう、ハルト殿」


 ヴェラの言葉が終わると同時に、影の刃がハルトに向かって疾走した。彼はその威圧感に反応し、咄嗟に防御を固める。しかし、その防御を貫く勢いで影の刃は彼を打ちのめす。


「ぐあっ!」


 床に叩きつけられたハルトは、強烈な痛みに顔をしかめた。これまでとは全く異なる力が彼に襲いかかってきたのだ。


「このままでは、やられる……!」


 必死に立ち上がろうとするが、影はさらに彼の体を縛り、動きを封じようとしていた。ハルトはその影に翻弄され、まるで出口のない迷宮に囚われたかのような感覚に陥る。


「俺は……ここで終わるのか……?」


 しかし、その時、ハルトの中にある小さな希望の灯が揺らぎ始めた。影の中に微かな光を感じた瞬間、彼は気づく。


「まだ……終わりじゃない!」


 ハルトは息を整え、再び集中した。ヴェラの影は確かに強力だが、彼女の攻撃にはわずかな「間」が存在していることに気づいたのだ。それは今まで気づかなかった細かなリズムのようなものだった。


「これだ……!」


 ハルトはそのリズムに合わせて動くことを決意し、ヴェラの影を読みながら反撃を試みた。影の刃が迫るたびに、彼はその動きを見極め、かわし始める。


「少しずつだ……少しずつわかってきた!」


 彼の攻撃が徐々にヴェラに届き始める。しかし、ヴェラは依然として余裕を保ちながらも、次第にその動きがわずかに変わり始めた。


「やはり、期待通りの成長ですね……ハルト殿」


 彼女の瞳が輝く。今度こそ本当の戦いが始まるのだ。




 目の前で幻影が踊り、攻撃の狂乱が起こり、ヴェラにダメージを与えた。


「よくやりましたねハルト殿、これにて私の訓練は終了です」


「やった......やったぞ!」


 俺は安堵で床に倒れ込んでいた。そして気を失ってしまった。

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