「まずは1番近い暗影の森に行きましょう私に掴まってください」
フィンが俺に言った。俺は不安そうにしながら、フィンの手を握った。すると一瞬で暗影の森へとついていた。
暗影の森は名前の通り、太陽の光がほとんど届かない場所で、鬱蒼とした闇が広がっていた。
「これは私のスキルで、特定の場所へと瞬間移動することができます。これからも魔界での移動は私にお任せください」
フィンがそういうと森の奥から誰かがこちらへと向かってくる。その姿の姿勢はどこか人のようで、闇に紛れているようにも見える。
フィンは落ち着いた口調で言った。
「ハルトさん、彼女が暗影の森であなたと特訓してくれるヴェラです。これからは彼女の指示に従ってくださいね。それでは私はまだやることがあるので失礼します」
そういうとフィンはスキルを使い瞬間移動した。奥からヴェラの姿がはっきりと見えてくる。その容姿は不気味で美しさを併せ持っており、長い銀色の髪を持ち、黒い衣装に身を包み、緑の瞳が印象的だ。彼女の肌は白く、彼女の存在は暗影の森に調和しているように思った。長い爪と鋭い武器を携えており、強者のオーラが漂っていた。
「お待ちしておりましたハルト殿、この森での指導をさせてもらうヴェラです。今回の特訓では影魔法について訓練します」
「影魔法......?そんな魔法聞いたことがないな」
「それもそのはずです。影魔法は主に魔族が使う魔法の種類ですから」
「なるほど、だから聞いたことがなかったのか」
ーークエストヴェラとの影魔法の訓練が発生しましたーー
クエスト内容: ヴェラとの特別な訓練に参加し、影魔法の奥深さを探求せよ。ヴェラの指導を受け、影魔法の力に触れ、その謎に挑戦せよ。
クエスト難易度 SS
クエスト報酬:
経験値 (EXP): 15000
影魔法スキル獲得
クエスト目標:
ヴェラの訓練に挑戦し、影魔法の基本を学ぶ。
ヴェラから与えられる試練に挑戦し、影魔法の応用力を向上させる。
ヴェラの最終的なテストを受け、影魔法の真髄に触れ、クエストを完了せよ。
ーー受注する 受注しないーー
ヴェラとの訓練のクエスト難易度がSSに設定されていることに、俺は驚きを隠せなかった。そんな難易度を俺は聞いたことがなかった。その瞬間、俺の瞳には緊張と興奮が交錯し、口元も微かな驚きで震えていた。
俺は口ごもりながら言葉を発した。
「難易度SS、こんなのが存在したのか......俺にできるのか、このクエストが......」
そんなことが頭をよぎったが俺はすぐに決心した。
「よし、やってやる!」
俺はクエストを受け訓練をすることを決めた。
クエストを受注するとヴェラは俺に静かに言った。
「それでは早速訓練に入りたいのですが、まず影魔法の基本についてお教えします」
ヴェラは俺に影魔法の特訓を始める前に、基本的な理論について説明してくれた。暗闇や闇の中に潜むことから生まれたこの魔法は、魔族に特有のものであり、その力を使える者は敵を欺くために非常に役立つことを説明した。ヴェラの声は静かでありながらも力強く、その言葉は夜の闇と同じように重みを帯びていた。彼女は影魔法の奥深さを語りながら、その魔法が持つ潜在的な力について熱心に語った。その魔法は単なる幻想や偽りではなく、相手を欺き、惑わせる強力な手段であることをヴェラは強調した。俺は熱心にヴェラの言葉に耳を傾け、影魔法の本質を理解しようと努めた。彼はその魔法の奥深さと可能性に興味を持ち、ヴェラからの指導を真剣に受け入れていた。
「まず、影魔法の理論から始めましょう。これがあなたがどのように敵を欺くのに役立つのかを理解するのに役立ちます」
ヴェラの説明は詳細で、俺は熱心に聞き入っていた。影魔法は暗闇の中で敵の存在を感知し、その存在を隠すために使用する。これは魔族に特有のスキルであり、他の種族には難しいものだと説明された。
「次は感知技術についてです。感知技術の向上は魔族にとって非常に重要です。相手の気配を感じ取ることで、敵の動きを事前に察知し、奇襲攻撃を成功させることができます」
彼女は黒い衣装の袖をまくり上げ、影の中に溶け込むように身をかがめた。そして、影魔法を駆使して一瞬で姿を消し、森の中に完全に溶け込んだかのように見えた。
彼女の動きは優雅でありながらも迅速で、まるで夜の闇に身を任せているかのようだった。彼女の姿が消えると同時に、周囲の空気にも影魔法の力が漂い始め、森の中が静寂に包まれた。
「わかりましたか、ハルト殿?これが影の中での完璧な隠れ方です。相手に気づかれずに接近し、奇襲を仕掛けるために必要です」
暗闇の中に漂うヴェラの声が、どこから発せられているのか見当もつかなかった。その声はまるで暗闇自体から湧き出るようであり、俺の耳には幻想的に響いた。彼女の存在は不可視であるにもかかわらず、その指導は強く印象づけられた。
彼女の手本を見ながら、感知技術と影の術の訓練の重要性がますます明確になった。彼女の身体がどこにあるのかは分からないが、その教えが俺の心に深く浸み込んでいくのが感じられた。この瞬間はただの技術の習得にとどまらず、魔族としてのアイデンティティについての理解を深めるものだった。
ヴェラは影の中から再び姿を現し、俺の前に立った。彼女の緑の瞳が鋭く輝いていた。
「感知技術の向上は時間と訓練が必要です。最初は敏感になるための感覚を鍛えます。森の中にいる生き物たちの微細な音、風の流れ、さらには影自体が私たちに情報を提供します」
彼女は森の中の鳥のさえずりや葉っぱのざわめきに耳を傾け、影の中の微細な変化を感じ取っていた。暗闇の中で、彼女の感覚は鋭く研ぎ澄まされており、周囲の微細な動きに敏感に反応していた。森の中に漂う生命の息吹や自然の響きが、彼女の耳を通じて繊細に伝わってきた。それらの情報を鋭く捉え、彼女は影の中で静かに立ち往生しているようなものを感じ取っていた。
「ハルト殿、これからはあなたもこの感覚を養っていく必要があります。相手の気配や動きを感じ取る訓練を怠らず、感知技術を磨いてください。それが成功の鍵です」
俺はヴェラの言葉に真剣に耳を傾けた。影魔法の訓練はまだ始まったばかりで、俺は新しい力を身につけるために全力を尽くす覚悟だった。
ヴェラは俺に向き直り、影の中で何かを示すようにした。そして、一瞬のうちに彼女の姿が消え、再び現れた。俺は驚いたが、ヴェラは微笑んで説明した。
「これが感知技術を使った一例です。相手に自分の存在を感じさせず、敵の背後に忍び寄るためには、感知技術が必要です。そして、これはまだ序の口です」
ヴェラは俺に向かって迫り、彼女の姿が再び消えた。俺は周囲を見回したが何も感じることが出来なかった。しかし、瞬時にヴェラの声が俺の耳に届いた。
「どの方向から声が聞こえてきたと思いますか?」
「上......いや、左?」
俺は混乱し、正確な答えを出せなかった。
「分からない…...声がどこから来たかわからない......」
ヴェラは微笑みながら現れ、俺の頭を撫でた。
「まだ感知技術が未熟ですね。これからじっくりと訓練して、敵の存在を感じる力を身につけていきましょう」
それから俺はヴェラとの感知技術の訓練が始まった。
ヴェラの感知技術の訓練は、最初は苦戦が続いた。俺は影の中に隠れたヴェラの存在を感じ取ることができず、何度もヴェラを見逃していた。しかし、ヴェラは俺に根気よく指導を続けてくれた。彼女はもう一度感知技術の基本から教え直してくれた。俺は訓練を積み重ねてだんだんと成長を感じていた。暗影の中でヴェラの存在を感知できるようになってきた。
そしてついに、ヴェラの位置を予測し、その存在を感じ取り、暗影の中で彼女を見つけることに成功した。
「見事です、ハルト殿、これからはもっと高度な特訓に進みましょう」
ヴェラは誇らしげに微笑んだ。次の訓練が始まる。