姫ちゃんといっしょの攻撃は親ドラゴンにも通用しています。ですが、身体の大きさに比例して体力も大幅に増えているので、決定打が与えられません。ドラゴンの攻撃力も高いので、死者は出ないものの次々と怪我人が増えていきます。アディさんも回復を頑張っていますが、とても間に合いません。
『しぶとい連中だ、いい加減に死んでくれ』
ドラゴンが
そんなことより、さっきからムカムカが止まりません。なんでアイツは嫌そうに攻撃してくるんですか? 戦うのが嫌ならとっとと家に帰ればいいんですよ。攻めてきているのはそっちでしょうが!
「みんな、無理しないで! きゃっ」
ドラゴンが爪で地面を叩きつけた弾みに飛んできた石がアディさんにぶつかりました。腕でガードしたので大したことはないのですが……。
「姫ーーーーっ!!」
ジェイソンさんが血相を変えて駆け付けます。まあ、大切な人を守るのが目的でここまでギルドを大きくした人ですからね。でもこれで姫ちゃんといっしょの連携にほころびが生じました。駆けつけたのはジェイソンさんだけではなかったのです。
むしろほぼ全員が殺到しました。さすがにちょっと我慢してもらえないでしょうか?
『ほう……その娘が大事なのか? ちょうどいい、大切な者を傷つけられる苦しみを貴様らに教えてやろう』
ドラゴンがアディさんに狙いを定めました。そうですね、ドラゴンの立場だとそうなるのでしょう。ジェイソンさん達が必死に守るお姫さまを目掛け、空中から飛び掛かって――
「いい加減にっ、しろおおおお!!」
すいません、私の我慢が限界を迎えてしまいました。あまりにもドラゴンの態度が許せなくて、心の底から怒りの声を上げながら、
第一の魔石――
魔石が発動してドラゴンの顔を光が覆います。
『グアッ!?』
光でダメージは与えられませんが、目をくらませたドラゴンはうめき声を上げます。私はそのままドラゴンの顎に足をかけ、メイスを鼻先に振り下ろします。
第二の魔石――
ドラゴンの鱗は炎を防ぎますが、鼻先で起こった小爆発の衝撃で頭が下がり、バランスを崩した巨体が地面に倒れ込みます。姫ちゃんといっしょの面々はなんとか避けられたようです。
「選手交代ですね。後は我等『ディアリスお茶会事件』に任せてください」
アリスさんがジェイソンさんに言います。他のギルメンも一斉に攻撃を始めました。すいません、怒りに任せて勝手なことをしてしまって。
「最初から全力にゃ、サラマンダー!」
ミィナさんが炎の精霊を呼び出します。ドラゴンには効果が薄いですが、それでも多少はダメージを与えられるでしょう。
「星を食らうでござる!」
星? と疑問に思って目をやると、何やら鎖の先っぽにトゲトゲの鉄球が付いたものを振り回しています。あれは殴りプリにもなじみの深い武器、フレイルタイプのモーニングスター! ちなみに私が使っている棘メイスもモーニングスターなのですが、鎖で振り回すフレイルタイプの方が遠心力のおかげで一撃の威力は高く、頻繁に使われるためにあちらの方をモーニングスター、私の方はただの棘メイスと呼ぶようになっています。
はっ、思わず脳内なのに早口で語ってしまいました。
なるほど、硬い鱗には斬撃が効かないなら、打撃で勝負するのが正しいというわけですね。つまり、私が一番この不愉快なドラゴンを倒すのに適した戦い方をしている!
第三の魔石――
『ガアアアア!』
強烈な打撃がドラゴンの頭を襲い、初めてこいつが悲鳴を上げました。
このまま、押し切る!