「はあっ!」
気合いと共に怒りを込めてメイスを振り下ろします。
第一の魔石――
魔石で発動するスキルは身に付けている者の能力に影響されます。持ち主がそのスキルを使ったのと同じ効果になるということです。
この時魔石によって生み出された破邪の光は今まで見たことがないほどに強く、バーリント候の全身を焼きました。心の力が怒りによって増幅されたのでしょうか?
「ぐうっ、貴様法術は未熟なのではなかったか?」
「誰からの情報ですか? その通り、術は苦手ですよ。自分で使うのはね!」
続けて殴り付け、普段よりも強力なスキルを放っていきます。
第二の魔石――
第三の魔石――
第四の魔石――
第五の魔石――
「みぃにもやらせるにゃ! フレイムピラー!」
攻撃し続ける私に被せて、ミィナさんの魔法が火柱を噴き上がらせバーリント候の身体を宙に舞わせました。
「この程度っ!」
さすがに親玉はしぶといですね、これでもまだ元気なようです。
でもそこに間をおかずカトウさんの手裏剣が飛んできます。刺さった場所から白い煙が出ました。
「聖水で清めた手裏剣の味はどうでござるか?」
「下等生物がっ!」
バーリント候はそこから腕を振り、闇色の波動を放ってきました。私とミィナさん、カトウさんが強い衝撃を受けて倒れます。
さすがに強い!
「ちょっと押し返したぐらいでなに安心しているんですか、まだまだこれからですよ」
そこにアリスさんが大剣を振りかぶって跳躍し、バーリント候を肩から斜めに斬りつけます。もちろん大量の聖水を生み出しながら。
「ぐわあああ!」
悲鳴を上げながら、バーリント候はまた腕を振ります。今度は手から雷が放たれ、空中のアリスさんを弾き飛ばします。
「くっ!」
空中で回転して足から着地するアリスさん。その間に立ち上がった私がまたメイスを振りかぶると、バーリント候は猛スピードで窓に向かって走り出しました。
まさか、逃走!?
あんなに偉そうにしていたのに敵に背を向けて逃げ出すんですか!?
「逃がすかあああ!!」
ユーリがその腰にしがみつきました。
「離せっ! 貴様らのような下賎の者といつまでも付き合っていられるか!」
「それはこっちのセリフですよ。あなたのようなみっともないモンスターとはもう付き合ってられません。ここで滅びなさい!」
言いながら駆け寄り、今度こそメイスを振り下ろします。
「ティア、いけーーっ!」
バーリント候にしがみついて逃がさないユーリ。ちょっと巻き込むかもしれないけど、許してくださいね。
第六の魔石――
いくつもの光がモンスターの体を貫きます。このまま一気に攻める!
第七の魔石――
「ギャアアアッ!」
十字の斬撃はヴァンパイアによく効きます。まだまだ!
第八の魔石――
これはヴァンパイアにはあまり効かないです。巻き込まれたユーリが苦しそうですが、こちらも大丈夫!(たぶん)
第九の魔石――
より強力な冷気が、バーリント候の身体を凍りつかせました。さすがに危険なのでユーリを引っ張って剥がします。これならもう逃げられませんからね。
そして――
「これで、終わりです!!」
第十の魔石――
本来天空でしか発生できない大規模な雷を凝縮した状態で一時的に召喚し敵を焼き尽くすスキルです。呼び出せる雷の量は術者の魔力次第。局所的に高エネルギーを生み出せます。
「お……の……れ」
全身が真っ黒に炭化していますが、まだ生きてますね。さすがの生命力!
「サラマンダー!」
追撃をしようとしたところで、ミィナさんが炎の精霊を呼び出しました。
「火遁の術!」
カトウさんも火の術を使って更に火力を上げていきます。完全に灰にして滅ぼせそうです。
「あらあら、せっかく用意したのだからこれも使いましょうよ」
アリスさんがどこからか木の杭を取り出しました。さっきユーリが使ったのよりかなり大きいのですが!?
完全に黒い塊へと変わっているバーリント候の胸の辺りに、アリスさんが勢いよく突き刺します。
ズドオオオン!!
ひえっ……館がグラグラと揺れました。どんな力で突き刺したんですか?
「もう生き返ってこないよな?」
ユーリが不安そうにバーリント候だったものをのぞきこみます。
「さすがのヴァンパイアもこれでは復活できないでしょう。おしまいです」
私が勝利を告げると、全員がほっと息をつくのでした。
イオナさん、アルスさん。仇は討ちましたからね。どうか安らかに眠ってください。
私達はギルメンと合流して帰ることにしました。
――この時、モンスターを倒したことで私達全員が気を抜いてしまっていたのです。