「はぁ。今日も団体のお客さんいっぱい来て疲れたなぁ。もう
『もし……、……、私の声が……、聞こえますか?』
「え、なに!?なんか聞こえる!?」
『私は神。普段勤勉に働く貴方のために、貴方の常日頃からの望みを叶えてあげましょう……』
「ええ!? マジですか!? も、もしかして、異世界転生系のアニメが大好きな僕が、とうとう異世界転生でチートハーレムですかぁ!?」
『よくお聞きなさい。貴方に「どうせほとんどの人が飲まないのに、ラストオーダーの時に気を使って全員分の温かいお茶を頼もうとする幹事を牽制する能力」を授けましょう』
「ぜ、全然思ってたのと違う! 確かに毎日断りたいと思って望んでた事やけど! 神様! それは別にいらないですって!」
『違うのですか?』
「違います違います! もっと別の望みあるでしょ!」
『それでは貴方に「もう他のお客さん全然いないので早くバイト上がれそうな日に限って、ラストオーダー5分前に団体で来て「入れますか?」って聞いてくるお客さんを帰らせる能力」を授けましょう』
「違いますってぇ! 神様ぁ!? そういうのじゃないんですってぇ!」
『違うのですか?』
「違うんですよぉ! なんかもっとこうチートっぽいやつくださいよぉ!」
『わかりました』
「ほんまにわかってますぅ? 頼みますよぉ!」
『それでは貴方に「注文の時に空になったグラスを持ち上げて「おかわり!」って注文してくるお客さんの、さっきまで飲んでたドリンクがわかるようになる能力」を授けましょう』
「ちょっと超能力っぽい能力やけど、そろそろ居酒屋から離れてくださいってぇ!」
『違うのですか?』
「違うんですよぉ! ……わかりました! もう、ちょっとこっちから具体的にお願いさせてください! お金が欲しいです、お金!」
『わかりました』
「頼みます!これで!」
『それでは貴方の「時給を上げて」あげましょう』
「……あ~、そう来たか」
『違うのですか?』
「ちょっっと待ってくださいね。考えさせて」
『これでいいのですね?』
「あー、神様? その時給は何円アップですか?」
『15円です』
「却下ですねぇ! 50円はアップしてくれないと令和ではお話にならないんですよ神様!」
『違うのですね?』
「違いますぅ! ……じゃあわかりました神様! もう本当に具体的にお願いします! 同じバイトの、黒髪ロングで清楚系女子大生のあやかちゃんと僕の恋を、成就させてください!!」
『ダメです』
「ええ!? なんでこれは即答でダメなんですか!?」
『貴方の好きなあやかさんは「店を閉めたあとにまかないのビールを飲みながら、昔ヤンチャしてた事をアピールしてくる一回り上のオラオラ系の茶髪店長とすでに付き合っています」』
「もう、居酒屋バイトやめてやりまぁす!!!!」