笑顔の素敵なあなたへ
笑顔の素敵な冒険者ギルドの受付係のあなたに、
今回はお礼のお手紙を書きます。
いつも的確な仕事の依頼をあっせんしてくださり、ありがとうございます。
おかげで冒険者としてのランクも徐々に上がってきていて、
いろいろな経験を積むことができています。
ギルドにはたくさんの見知った仲間もいます。
この街のギルドの雰囲気はとてもよくて、
いろいろな街から出稼ぎが来ていると聞きます。
その雰囲気づくりの一端として、
あなたの笑顔があるのだと私は感じています。
あなたが笑顔でしっかりお仕事をされているおかげで、
私たちは冒険者としてがんばれます。
あなたが冒険者ギルドにいることで、
この街自体の活気につながっていて、
冒険者が集い、商売が繁盛し、
街が潤っているのだと思います。
あなたの笑顔には、それだけの力があります。
ギルドの事務処理や受付などは、
女性がすることが多いですけれど、
あなたに関してだけ、私はどちらの性別かがわかりません。
女性が男のようにふるまっている訳でもありません。
男性が女装している訳でもありません。
年齢を重ねていくと、男性も女性もあやふやになると聞きますが、
あなたに関していえば、
かなりお若いように見受けられます。
しかし、男女どちらともわかりません。
いろいろな依頼をこなしたほかの冒険者に尋ねてみましても、
性別がわかる方はおりませんでした。
しかし、私を含めたみんなが一致して思うのは、
あなたが有能で笑顔が素敵だということです。
性別など些細なことにこだわる必要はありません。
あなたがいつものようにギルドでお仕事をしているだけで、
あなたが冒険者に依頼をあっせんするだけで、
冒険者の私たちは十分なのです。
あなたの笑顔でがんばってくださいと言われましたら、
私たちの能力以上の仕事ができるというものです。
本当に、性別のらしさというものが、
些細なものであると感じます。
素敵な輝く笑顔の前では、大抵のことがどうでもよくなります。
あなたがあなたであるだけで、
私たちはギルドに向かうのが楽しみになります。
一度、あなたが受付係の席を外していた際に、
他の受付係の若い娘さんからお聞きしたのですが、
あなたはとにかく有能で、
みんなの失敗をすべて一人で処理なさっているそうですね。
どれだけの業務を抱えているのかと私は思いました。
有能にしてもそんなことができるはずなく、
あの笑顔は無理しているのではないかと、そのときは思いました。
私の様子を見て、若い娘さんは言われました。
あの方は人ではない種族の血が入っていて、
先祖がえりをしてしまっているのだと。
その種族は大昔に多種多様な生物を作った祖の種族で、
その頂点に神と呼ばれるものもいたと言います。
大昔にその世界にいた、祖の種族を、
天の使いの種族、天使などと言うと聞きました。
天使のことは昔話で耳にしたことがあります。
生きるものすべてを愛した天の使いで、
世界に愛が満ちるように、たくさんの生命を作ったと聞きました。
いわゆる命の祖の種族。天使の血があなたに入っている。
その先祖がえりをしているのだと聞き、
私の中ですべてが腑に落ちました。
あなたの有能さや性別でなく、
みんなに向ける笑顔の理由についてです。
ギルドの若い娘さんが話されたということは、
あなたは特に天使の血が入っていることを隠されていないのかもしれません。
私たちも、あなたがどんなものであっても気にしません。
しかし、あなたの笑顔の理由について、そのときにはっきりしました。
あなたは、すべての命を愛しているのですね。
ギルドに訪れる冒険者だけでなく、
ギルドの同僚のことも愛しておりますし、
ギルドから外に出ますと街があります、
その街の皆様も愛されていますし、
街から外に出ればいろいろなものが生きておりますし、
遠くには別の街もあります。
海も山もあります。そこに生きるいろいろな命があります。
あなたはそのすべての命を愛されているのですね。
天使の血が色濃く出ているおかげで、
あなたはいわゆる人よりも有能であられるのでしょうし、
性別がこれと決まっていないのかもしれません。
あなたは天使の血を受け継いで、その愛も受け継いでいます。
世界を包みむほどの大きな愛です。
みんなに幸せになって欲しい、
この世界が幸せで満ちて欲しい。
あなたの笑顔には、素晴らしい愛がありました。
私の他にも、あなたに天使の血が入っていることを、
知っている方がいるかもしれませんが、
それは本当に些細なことだと私は思います。
あなたの大きな愛の前では、どんなものもかすんでしまいます。
街のギルドの受付係をされていますが、
その有能さならばもっと他の働き口があるように思われます。
あなたにはもっといろいろなことができるのではないかと。
しかし、私は同時に思うのです。
あなたは天使扱いされたくないのではないかと。
世界に命を作って満たした祖の種族、
そんなものの扱いをされることを嫌っているのではないかと。
私はそんな風に思えるのです。
あなたは愛する命と同じ目線で、
普通に暮らしていきたいのではないかと私は感じています。
たくさんの命に囲まれて、
毎日を楽しく生きたいのではないかと思います。
あなたはとても有能ですが、
普通の生活をして、いろいろな命に囲まれたいのでしたら、
この街のギルドの受付係もいいものでしょう。
また、私をはじめとした冒険者の皆も、
あなたがどこかに行ってしまって、
あなたの笑顔を見れなくなりましたら寂しいです。
みんな、あなたを愛しています。
天使の血が入っているということを差し引いても、
あなたは魅力にあふれた存在で、
心から愛したくなる存在です。
冒険者ギルドにやってきて、
あなたの笑顔を見ますと、
みんな、心から安らぐのです。
あなたという存在が、たくさんの命を生かしていて、
たくさんの幸せを作っております。
どうか、お身体に無理のない範囲で、ギルドにとどまられてお仕事をされてください。
あなたの愛にあふれた笑顔で、私たちはがんばれます。
これからも私たちの助けになってください。
この街の冒険者ギルドにあなたがいる。
あなたが笑顔でいてくれる。
そのことに、心からの感謝を述べて、手紙を締めさせていただきます。
いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
最近ランクがひとつ上がった冒険者より