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42通目 陶器市の焼き物職人さんに宛てて

素敵な作品を作られる焼き物職人さんへ


この手紙がお渡しできるということは、

今年もこの陶器市に職人さんがいらっしゃられて、

私が職人さんの焼き物を手にすることができたものだと思います。

手紙は先に書き記したものになりますが、

手紙がお渡しできた前提で書かせていただきます。

今年も素敵な焼き物作品を作ってくださり、ありがとうございます。

また、今年もこの陶器市にいらっしゃってくださり、ありがとうございます。

この陶器市の楽しみは、あなたという職人さんの作品です。

たくさんの作品を見て回るのも楽しいのですが、

あなたの作品が無かったら、楽しみが半減してしまいます。

半減どころではありません。

とても寂しくなってしまいます。

とにかく、職人さんがこの手紙をお読みになられているということは、

今年も陶器市に職人さんが作品を出されているものと思います。

私は、あなたという職人さんに、感謝を伝えたくて筆をとりました。


陶器市に通い出したのは数年前からです。

毎年初夏にある陶器市に、

なんとなくお祭り気分で行ってみたのが始まりです。

個性的な作品がたくさんあり、

自分だけの一点を探すのがとても楽しいものです。

陶器市の広い会場の中、

あなたのブースを見つけたとき、その焼き物の色彩に驚きました。

それは、織部焼の流れを組む美しい緑色でした。

普段使いもできそうな小鉢から、

立派な大皿などもあり、

あなたのブースに美しい緑の風が吹いたようでした。

どの作品も、あなたが作られた一点ものです。

小鉢も一点一点作られていて、似た形ですが完全に同じではありません。

緑の色彩も微妙に異なっていて、

それが職人さんの作られた焼き物の個性でもあり、

また、焼き物が生きているということでもあるのでしょう。

私はたくさんの緑の焼き物に魅了されました。

そして、お財布と相談して、お皿を購入しました。

このお皿に何を盛りつけたらと考えると、

どんな料理も美味しく見せてくれそうでしたし、

また、料理を作るのが楽しくなりそうでありました。


私は、そのとき脳裏によぎった人がいました。

織部焼が好きな母です。

どこかの陶器屋で織部焼のお皿を買って、

その緑のお皿に美味しそうな厚焼き玉子を乗せていたのを思い出しました。

それは織部焼の緑と、厚焼き玉子の優しい黄色が、

花のようなコントラストで、美しく映えていました。

母に織部焼の焼き物を買っていったらどれほど喜ばれるだろうか。

そのブースにある緑の焼き物に、どんな料理を盛りつけて楽しんでくれるだろうか。

私は再びお財布と相談して、

母への土産物としてお皿を買いました。


陶器市から後日、実家の母にあなたの焼き物を渡しました。

母はとても喜んでくれて、

こんなに素敵な焼き物があったのねと言ってくれました。

このお皿ならばあの料理がきれいに見えるとか、

こっちの料理を盛りつけたらどうだろうかと、

母はたくさん料理の空想をします。

私もその空想に付き合って、

職人さんのお皿に盛りつけられる母の料理を思います。

母はとても楽しそうでした。

私が職人さんの焼き物に感じた、

料理を盛りつけるのが楽しくなりそうな感覚を、

母も持ってくれたのが嬉しくもありました。


それから、毎年職人さんの緑の焼き物を買っていくのが、

陶器市の楽しみになっています。

職人さんのお皿を使うようになってから、

料理がとても楽しくなりました。

また、母にも毎年何かしらの焼き物を買っていきます。

実家に持って行くたびに喜ばれて、

今まで買っていった焼き物も普段使いしていると聞きました。

私も母も、大変満足する焼き物です。


焼き物職人さんが、これほどの作品を仕上げるということは、

作品の出来栄えや数を考えても、

相当な修行を重ねたものと思います。

焼き物は一点ものとはいえ、

小鉢でしたら同じものを作って形を揃えなくてはなりませんし、

大きなお皿はそうそうできるものではないでしょう。

たくさんの作品を作る中には、成功ばかりではないと思います。

正確に色合いが出なかったものもおありかもしれませんし、

割れてしまったものも中にはおありだったかもしれません。

ブースに緑の風を感じるほどの、緑の焼き物を作る中で、

たくさんのご苦労があったかと思います。

焼き物職人さんの緑の焼き物は、

私や母を感動させる焼き物です。

確かな技術に裏打ちされた、美しい焼き物です。

そこには焼き物への愛が確かにあります。

最高の焼き物に仕上げてあげたいという、

焼き物職人さんの焼き物への愛があり、

また、使うであろう私たちに対して、

使いやすさや、使ったときの色合いなども考えていてくれて、

最高の焼き物を通して、私たちにも愛が届いております。

今まで買ったどの焼き物も素晴らしいものでした。

使うたびに職人さんの愛が伝わってきます。

喜んでほしい、楽しんでほしい。

そんな思いが伝わっております。

職人さんの愛が伝わっていることを、

少しでも伝えたいと思い、こうして手紙を差し上げております。

いつも素晴らしい焼き物を陶器市に出していただき、ありがとうございます。

緑の焼き物は、私と母を喜びでつなぐものでもありますし、

毎日の食事を豊かに彩ってくれるものでもあります。

職人さんの焼き物は、

たくさんの人を幸せにする焼き物です。

少なくとも私はとても幸せです。


今年も職人さんの緑の焼き物を求めてブースにやってきて、

おそらく今年も焼き物を求めていったと思います。

職人さんが手紙を読むのはそのあとであろうと思います。

焼き物を求めることができて、

私は今年も幸せな気持ちでいると思います。

母の喜ぶ顔を思い描いて、微笑んでいるかもしれません。

来年も職人さんのブースが出ていれば、

私は迷わずそこにお邪魔することと思います。

どうか、末永く焼き物を焼き続けられてください。

そして、陶器市に可能な限り出店なさってくれると、私は幸せになります。

焼き物は元気で健康でないと作品を作り続けられないと思います。

お身体には気を付けられて、

幸せを届ける焼き物を作られてください。

また来年、うかがいます。

それまでお元気で。


焼き物職人さんの一介のファンより

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