私たちの担当をしてくださったウェディングプランナーさんへ
私たちが結婚を決めたのは、かれこれ10年前になります。
数ある式場から一つに絞り、
私たちのもとにウェディングプランナーの、あなた様が担当につかれました。
私たちと言えば、年ばかり食って、婚期を逃した者同士、
今更キラキラした結婚を考えていない、
疲れたもの同士での結婚でした。
年甲斐もなく豪勢にすることも考えていなくて、
ただ、お互い初めての結婚ではあるのだから、
形だけでもしようと言うことで、
互いのこともあまり理解しないまま、
とにかく式だけというカップルでした。
あなた様はそんな私たちに寄り添って、
さまざまの提案をされてくれました。
若いカップルがするのはこのような演出ですが、
控えめなこのような演出もあるとか、
今までの成長記録の写真のスライドショーを作りましょうとか、
司会にはベテランの方を指名しましょうとか、
とにかくあらゆる方向の提案がなされて、
私たちカップルは、相談をしながら結婚式の形を作っていきました。
私たちは、その時から、お互いのことをしっかり知ろうとし始めていたのかもしれません。
夫になるであろうこの人の好みとか、
妻になるであろう私が譲れないこととか、
今までお世話になった人たちはどれほどいて、どれだけの人を呼べばいいか。
ひとつひとつ、あなた様の導きで、私たちは夫婦に向けて歩み寄っていきます。
結婚の準備段階ではありましたが、
すでにこの時から、夫婦として歩み始めていたのだと、今となっては思います。
結婚はゴールではないと、
あなた様と結婚式の形を作りながら思いました。
結婚式で、スタートを切るものだと、準備をしながら思いました。
夫になるこの人と、夫婦としてスタートする。
そのスタートをきれいに切れるように、
あなた様は心を尽くしてくださいました。
婚期を逃した私たちでした。
結婚なんて今更の年齢ではありました。
それでも、提案される結婚式のプランを聞くたびに、
華々しい式が浮かんできて、
その隣に夫となる人がいてくれることが想像できて、
ああ、結婚式をしっかりするのも、いいかもしれないと思うようになりました。
夫もだいぶ意見を言いました。
夫の意見を聞いていますと、
お付き合いをしていた頃には気が付かなかった、
いろいろな側面が見えてきました。
私も夫も多くを語る性分ではありません。
互いの邪魔をしないことが結婚の決め手となったほどのカップルでした。
ですから、あなた様の提案で様々のことが引き出されて行って、
私たちカップルが互いのことをもっとわかり合える機会になったと思っています。
結婚式は思った以上に華々しく、
招いたすべての人が笑顔になる式でした。
夫にこれほどの友人がいるとは思いませんでしたし、
一堂に会すると、親戚の方々もこれほどいたものだと思いました。
そのすべての皆様が、私たちを祝福してくれました。
その場を提案してくださったのは、あなた様です。
私たちに合った結婚式を、これほど的確に作り上げてくださったのは、
やはりプロのお仕事と言わざるを得ません。
結婚式を終えて、新居に移って後日。
式場にいるはずのあなた様にお礼を言おうと訪れたところ、
あなた様はおやめになったと聞きました。
どうやら最後のお仕事であったようです。
この手紙も行き場がありません。
あなたへのお礼の言葉は、宙に浮いたままです。
それでも、結婚をして10年も過ぎた頃、
やはりあなた様にお礼の言葉はしたためておきたいと思い、
こうして手紙を書きます。
この手紙の行き先はありません。
あなた様がどこに行かれたかもわかりません。
それでも書かずにいられません。
結婚してから、私たち夫婦はゆっくりと愛をはぐくんできました。
あなた様が提案して作り上げてくれたあの式でスタートした私たちは、
穏やかに日常を過ごしてきました。
波乱がなかったわけではありませんが、
それもすべては些細なことです。
私たちがいいスタートを切れたのは、
あなた様のお膳立てがあったからです。
私たちはそこから始めることができました。
あなた様のお仕事は、愛を育てるお仕事です。
結婚式という舞台を作るにあたり、
カップルの愛を育てていくお仕事です。
それは、愛の芽をしっかり根付かせるようなお仕事です。
あなた様の手でしっかり根付いた愛は、
あれから10年、すくすく育って立派な愛になりました。
今では互いのことが心地いい関係がしっかり築けています。
あなた様にお礼を申し上げることができないのが残念ではありますが、
どこかの空の下、あなた様が元気でいてくれて、
誰かの愛を育てていてくれたらいいなと思います。
プランナーのお仕事をしていなくても、
あれほど仕事に愛を持てるあなた様でしたら、
どこに行っても、何をしても上手くいかれると思います。
あの時私たちカップルを夫婦に育ててくださったあなた様には、
今でも感謝しかありません。
あなた様は覚えていらっしゃらないかもしれません。
連絡を取る手段もありません。
それでも、感謝をしたためたいと思い、
こうして出せない手紙を書いております。
夫と巡り会えたのも縁ならば、
あなた様と巡り会えたのも縁です。
結婚式までのわずかな期間でしたが、
あなた様に担当された式は、最高の式となって思い出に残り続けています。
どこかにいるあなた様がお元気であることを願って、
出せない手紙を締めくくらせていただきます。
私たち夫婦は幸せです。
どうか、私たちを担当なされたあなた様も、お幸せであるように祈っております。
あなた様の最後の担当カップルの妻より