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35通目 病院のいろいろな担当者に宛てて

病院のたくさんの担当者様へ


私は、とある娘を持つ母です。

この病院で難病と診断され、たくさんの治療を受けて、

歩くことも困難な娘が、たくさんの担当の方々の力を借りて、

自分の足で歩けるようになって、

自分の手で食べられるようになって、

本も自分で読めるようになって、

そして今度の春に、娘は普通に小学校に通うことになりました。

あの時、目の前が真っ暗になるほどの、

難病を言われた時の絶望は、

今、娘の屈託のない笑顔で光に変わりました。

あの時、力を尽くしてくれた皆様には、感謝しかありません。

娘が小学生になれることの喜びとともに、

お礼の手紙を差し上げたいと思い、手紙をしたためます。


娘は、生まれて間もなく、

私が理解できないような難病になりました。

難病の説明を受けながら、

私は目の前が真っ暗な絶望に覆われるのを感じていました。

この子は普通に生きられないかもしれない。

もしかしたら明日にも死ぬかもしれない。

生まれなければよかったかもしれない。

そんなことが渦巻いていたのを覚えています。

私に娘の病気のことを告げたお医者様は、

手立てがないわけではありません、と、言いました。

困難な道ですが、生きる道はあります、と。

私の目の前はその時真っ暗でしたので、

娘を困難な道に陥れた自分を呪うばかりでした。

実際、私には何の落ち度もないようでしたが、

その時の私は、自分を責めれば、

誰かが娘を助けてくれるのだと思っていました。

そのくらい、判断ができないほど、私は暗い中にいました。

多分表情もそのようであったのだと思います。

それを見た、お医者様と、看護師さんが、

娘の治療に当たっている治療室を、外から見せてくれました。

そこには何人ものお医者様やスタッフがせわしなく動いていました。

誰一人として、娘が死ぬことを望んでいなくて、

私を含めて、すべての人が、娘が生きることを望んでいます。

それよりなにより、娘自身が、生きようとしています。

小さな小さな娘は、死のうとなんてしていません。

娘の難病を告げられただけで絶望にある私と違い、

難病のただ中にある娘は、生きようとしています。

お医者様は言われました。

困難な道ですが、必ず治します。

私は泣きながら、お願いしますと頭を下げました。


娘には様々の治療が施されました。

幼い娘には、相当な痛みを伴ったものがあったと思います。

少しずつ娘は成長していきましたが、

運動能力に難があり、リハビリをしながらの治療になりました。

小さな娘は、必死になって歩こうとしました。

手が使えるようにならんとしました。

痛みを伴う治療も我慢し続けました。

娘は満身創痍でした。

それでも、その眼にはいつも光が灯っていました。

前を見ていました。

そのまなざしには、欠片ほどの絶望もありませんでした。

誇り高い、強い娘でした。

その娘を支えてくださって皆様におかれましては、

感謝の言葉では到底足りません。

リハビリも根気良く付き合ってくれました。

娘が無理をしそうなときは、ちゃんとストップをかけてくれました。


治療の方針についても、私や夫や娘の意見を尊重してくれました。

なにより尊重してくれたのは娘の意見でした。

娘は、みんなと同じ小学校に行きたいとはっきり言いました。

そのために、この病気を絶対治す。

みんなと同じ小学校に行って、

勉強して、将来は私みたいな病気の子どもを治すお医者さんになりたい。

娘ははっきりと、将来の希望を述べました。

ああ、娘はそこまで絶対生きるつもりでいる。

この病気を完全に治して、

さらに、難病に立ち向かう娘のような子どもを救うつもりでいる。

こんなに小さな娘の中に、とても大きな未来が見えました。

その大きな未来を、おそらく希望というのだと思います。

この難病の娘には、希望があふれている。

その希望の灯を消してはいけない。

私も夫もそう思いましたし、

お医者様もおそらくそう思ったのでしょう。

娘に、がんばろうと声をかけられました。

娘は強くうなずきました。


娘は治療とリハビリを続け、

小学校に上がる少し前に、

あとは定期的な検診に来るというところまで回復しました。

娘はすっかり普通の子どもです。

走るのはちょっと遅いですが、

小学校で走り回っていれば、走り方が身についてきて、

かけっこもできるかもしれません。

なにより、いろいろな苦しい思いを潜り抜けてきた娘です。

いろいろな子どもたちの苦しさも理解できるものと思います。

それは、たくさんのお友達を作ることにもつながります。

楽しい小学校生活になるものと、私は信じています。


娘は、たくさんの愛に支えられて、

もうすぐ小学生になります。

何を勉強するのか、どんなお友達ができるのか、

今から楽しみなようです。

娘の命を支えてくださった、たくさんのお医者様や看護師さんや担当者様、

すべての方々に、何度でもお礼を述べたい気持ちでいっぱいです。

こんなにも希望に満ちた未来があるなどと、思っていませんでした。

娘を救ってくれた皆様は、

その手で、私のことも、夫のことも、絶望から救ってくれて、

光り輝く未来に連れてきてくれました。

それを愛と言わずしてなんと言いましょう。

皆様はお仕事と言われるかもしれません。

しかし、そのお仕事には確かに愛があり、

救われた存在は限りなくあります。

元気になった娘とともに、

皆様のこれからのご活躍をお祈りしています。

本当にありがとうございました。


難病だった娘を持つ母より

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