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27通目 展示作品の作者に宛てて

今回の展示作品の作者様へ


今回、この町を現代芸術で盛り上げようという企画があり、

さまざまの現代芸術作品が、

町のいたるところに飾られて、

普段美術や芸術に親しみのない町の皆さんも、

いろいろな作品に触れて、興味深く眺めたりしていました。

私もこの町の近くに住まうものとして、

現代芸術とはどんなものかと思って町を歩いていました。

芸術とは、感覚に直接訴えるような気がしました。

理屈が入るより先に、脳が感じてしまう。

そのようなものなのだなと、いろいろな作品を見ながら感心していました。

そんな中、少し外れたところにあった、

あなたの作品を目にしたとき、

稲妻が身体に落ちたかのような衝撃を受けました。


あなたの作品は、駅のバス乗り場のロータリーの近く、

あまり人が通らないところにありました。

バスに乗る人は違う方に向かうし、

作品を置いている場所は、店などが並ぶところでもありません。

あくまで、静かな場所です。

私は最初、ここにも作品があるみたいだと思って、

無防備に近づいていきました。

あなたの作品を目にした瞬間、

衝撃が走りました。

多少大きな作品でありましたので、

作品の置き場所として、このような場所しかなかったのかもしれません。

しかし、この作品はもっと多くの人が見るべきだと思いました。

もっと多くの皆にこの衝撃を感じてもらいたいと思いました。

あなたの作品は、心というものを切り取って形にしたようでもありましたし、

人間そのものを表現したようでもありました。

生き様そのものでもあるようでしたし、

すべての生きるものへの賛歌のようでもありました。

あなたはどれほどの思いで、この作品を作られたのでしょうか。

この作品がこんなに目立たないところにあるのが残念でたまりません。

ただ、作品を見たときに、私は号泣しました。

これほど心を揺さぶられる経験はありません。

あなたの作品は、私の心を揺さぶり感動させ、

心に身体に思いを刻み込みます。

芸術がそうであるように、もう、理屈でどうにかなる代物ではありません。

あなたという生き様を凝縮したような作品でした。

町に飾られたいろいろな芸術作品の展示を見ましたが、

これほど心揺さぶられた作品はありませんでした。

こんなにすごいものがこの町にあるなんて。

期間限定とはいえ、こんなに間近で見ることができるなんて。

ただただ、この作品と私との時間が過ごせるなんて。

たくさんの人にこの感動を感じて欲しいとも思いましたが、

この感動に打ち震える私を邪魔してほしくもないと思いました。

バス乗り場のバスも遠くへ。

この作品をわざわざ見に来る人もありません。

私は、あなたの作品を感じ続けました。

細かいところまでながめたり、

角度を変えてみたり、

最初の位置に戻って、ため息をつきながら感動したり、

見るたびに驚きがあり、

そして、何かを見つける度に、

これはあなたからのメッセージであると感じられました。

あなたからのメッセージの主題は、きっと生きること。

たくさんの生き様があるけれど、

あなたは、この作品で誰かの心に残る生き様を届けたいと願ったのだと感じました。

この作品はあなたの生き様そのもの。

生きて、生きて、生き抜けというあなたからのメッセージ。

あなたはきっと、生きているすべての存在に、

生き抜けとメッセージを送られているのかもしれません。

生きることから逃げないで欲しい、

どうか、生きて欲しい、

この作品を作った自分は、作品を見た存在が生きることを願っている。

生きて欲しい、幸せに生きて欲しい、

苦しみがあるのならば終わって欲しい、

悲しみがあるのならば寄り添ってあげたい、

そんなあなたからの強いメッセージを感じました。

この作品はあなたからの愛そのものなのかもしれません。

少なくとも私はそう感じました。

あなたがどのような方かはわかりません。

ただ、愛に満ちた作品であると私は思いました。

強く強く、愛を訴える作品であると感じました。

きっとあなたは、すべての存在を本気で愛しておられるのでしょう。

そうでなければこんな作品は作れません。

私は、あなたの愛に深く感動し、号泣しました。

それほどの衝撃的な作品でした。


町に現代芸術が展示される期間も、そろそろ終わりに近づいています。

私は多分もう一度、あなたの作品に出会いに行きます。

あなたの作品との対話は、かけがえのない時間でした。

その機会を設けてくれた、この企画には、感謝しかありません。

あなたの作品は、今度はどこで出会えるでしょうか。

もう二度とこんな感動を覚える出会いはないかもしれません。

それでも、すべての存在への愛に満ちたあなたの作品は、

私の魂に刻まれて、私の生き様の指針になっていくと思います。

あなたの魂が作ったであろう、生き様と愛の作品は、

最高の作品でありました。

あなたの作品が、またどこかで展示されて、

その作品に出会うことができたら嬉しいと思います。

これからのご活躍をお祈りしております。

ありがとうございました。


芸術作品に感動したとある市民より

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