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23通目 いつも馬鹿話をする親友に宛てて

親愛なる友へ


書き出し真面目にしようとしたら、すっげぇ柄にもないのでやめた。

親愛なる友なんて柄じゃないし、

いっつも馬鹿話してつるんでいるダチと言えばダチ。

友達や友人と言うより、

なんと言うか、親友ってやつだと俺は思ってる。

マブダチって死語かな。最近それほど聞かない気がすんだけど。

まぁ、俺はおまえを親友だと思ってる。

おまえもそう思っていてくれたらいいなと思ってる。

俺とおまえは、ずっと一緒につるんできたけどさ、

結局のところ、頭は別々じゃん。

考えていることがずっと一緒ってことはないじゃん。

たまたま、腹減ったとかが一緒のことはあるけどさ、

何もかも同じこと考えてるとは限らねぇじゃん。

だから、俺が親友と思ってても、

お前はそうではないかもしれねぇ。

でも、俺にとって、お前は親友だ。

信じられる、親愛なる友ってやつだ。

いっつも馬鹿話してるから、真面目に書くと変な感じだな。

たださ、俺たちそのうち学生終わるじゃんか。

つるんで馬鹿話していたことが、なくなるかもしれねぇじゃん。

おれは、馬鹿話しまくっていた日常が、楽しくて仕方なかった。

それを忘れたくねぇんだよ。

なんかさ、つまらねぇ大人になって、

仕事とかに追い掛け回されて、

お前のことを忘れるようなことになりたくねぇんだよ。

だから、こうして手紙書いてる。

少なくとも、手紙に書けば、言葉には残ってくれる。

俺の今の気持ちが、言葉になって、

お前のところには手紙として残る。

俺たちが学生やれるのもあと少しだ。

つるんでいられるのもそう長くないかもしれねぇ。

だから、お前に気持ちを書いとく。

親友への思い出と感謝を書いとく。


俺たちはガキの頃からつるんでた。

いわゆる悪ガキってやつで、

あぶねぇことをしては大人に怒られてきた。

俺とおまえはいつもセットで、

小さな町を走り回ってた。

小学校でもいつも一緒、もち上がりの中学でもつるんでて、

高校進学を決めるときには、

お互い頭の程度が同じくらいだからと、

結局同じ高校に行って、毎日げらげら笑いながら過ごしてた。

でもさ、俺は知ってる。

おまえ、本当はもっと頭いいんだよな。

こんな高校で収まらないくらい、頭いいんだよな。

多分さ、俺に合わせて高校選んでくれたんだよな。

俺、それがわかるのが遅れてさ、

しばらく、俺たちは同じようなこと考えてんだなって思ってた。

でも多分違う。

おまえは、もっと先のことを見ているし、考えてる。

おまえは、これから先の進学でも、

もしかしたら俺に合わせようって思うかもしれない。

お前頭いいのに、とことんまで優しいからさ、

俺を支えるんだって思うかもしれない。

俺から言っとく、俺たちはそろそろ別々の道を歩むべきだって。

おまえには、俺よりももっとすごい未来がある。

俺のそばでくすぶっているべきじゃねぇ。

もっと、花火上げるように駆けあがっていっていいんだ。

人生一発、でかい花火ぶちかましてやれよ。

おまえにはその可能性があるんだ。

俺はその足枷にはなりたくない。

ここで、そろそろつるむのは終わりにしようって話だ。


俺には、夢があるんだ。

俺とおまえが駆け抜けていったような、

町を作りたいって夢があるんだ。

悪ガキどもがつるんで走り回れるような、

記憶に残り続けるような町。

だから俺は、建築の方に進む。

未来の悪ガキどもが、親友と一緒に走り回る町ってのを、

俺は作りたいと思うんだ。

多分おまえとは別々の道を行くと思う。

お前頭いいから、大学とか、もっとすごい研究とかもできると思う。

そんなおまえがどこかの町に行ったとき、

悪ガキどもが楽しく走り回っている町を見たら、

ああ、俺がなんか作ったんだなと思ってくれ。


俺の記憶の中で、お前はいつも笑ってた。

俺のことを常に信じてくれたし、

俺ならできるって、いつも言ってくれた。

馬鹿話をいつもしながら、お前は俺を否定しなかった。

長い間、そばにいてくれて、ありがとな。

お前がいたから、俺の学生生活はすっげぇ輝いてた。

俺たちはなにより輝く一番星だ。

おまえの話はいつも楽しかったなぁ。

くだらない話ばっかりだったかもしれないけどさ、

おまえとの馬鹿話や、つるんでいた日常は、

俺にとっての宝物だよ。

これから、それぞれの夢に向かっていくとき、

互いのいない日常で、宝物の記憶を忘れそうになるかもしれない。

つまらない仕事の日々で、輝きが曇るかもしれない。

おまえが、しんどいなって思ったら、

俺を思い出してくれ。

記憶の俺はあいかわらずバカやってるはずだ。

少しは笑わせてくれるだろうよ。

俺がしんどいなって思ったら、

おまえを思い出す。

おまえはきっと、必ずできると励ましてくれるだろう。

残り少ない学生生活だ。

つるめる時間もあとわずかだ。

馬鹿話の他に、夢を語り合って学生生活を終わらせよう。

最後まで笑って、俺たちは大人になろう。

今までありがとな。

おまえは最高の親友だ。


おまえがガキの頃からの親友より

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