感想をくれた君へ
心のこもった感想をありがとう。
まさか、手紙でくれるなんて思わなかったから、
思わず姿勢を正して読んだよ。
姿勢を正して読んで正解だった。
君の感想は、本当に的確で、
なおかつ、僕がそこを読んでほしいところをちゃんと読んでくれて、
最高の感想を一番最初にもらったなと思った。
そうなんだ、僕の小説は感想をもらったことがない。
書いてはいるんだけど、感想は何一つもらったことがなくて、
書けども書けども、虚空に投げかけているようだった。
なんだか、ブラックホールみたいなところに、
大事な作品を投げ入れている気分だった。
そこに、君の素晴らしい感想が来たんだ。
嬉しいどころの騒ぎでなく、
過剰表現でなく、僕は感涙した。
僕の作品は誰かに届いていて、
こんなに素晴らしい感想を書いてくれる読み手に届いていたんだなと、
僕は姿勢を正して君の感想を何度も読んだ。
それくらい嬉しかったんだよ。
君からの感想の端端に、
君がつらい思いをしているのがうかがえた。
今回書いた作品では、主人公がつらい目に遭って、
仲間たちと協力して乗り越える物語だったけれど、
どうやら感想を読む限り、君には仲間がいないようにうかがえた。
とにかく君を下に見る存在ばかり周りにいるようで、
君の自己肯定感はかなり低いように感じられた。
こんな感想迷惑でしょうかと書いていたけれど、
それは絶対違うと断言しておく。
君の感想は素晴らしいものだ。
その感想を的確に書ける君の読み込みも素晴らしいものだ。
君の読解力も相当なものだ。
まず、そこだけとっても君は下に見られる必要がない。
君の感想は迷惑なんかじゃない。
君の感想は、僕の力になっている。
生きる糧になっている。
君が何か感想を述べることは決して迷惑なんかじゃない。
君の周りが何か言うかもしれないけれど、
僕は君の感想で救われた。
僕の創作が届いたということで、
僕の生きる意味が生まれた。
君は僕を生かしてくれるんだよ。
小説家の僕から、君に恩返しがしたいと思う。
君をモデルにした小説を書きたいんだ。
今、君は孤独でつらい思いをしている。
これは感想の手紙から感じたことだ。
仲間が信じられる主人公がうらやましいと言っていたしね。
親が尊敬できる主人公がいいなと言っていたしね。
だから、君をモデルにした主人公の小説を書いて、
君がどれだけ幸せになるべきか、
君がどれだけ素晴らしい存在か、
僕の小説で訴えようと思う。
無論、固有名詞なんかは創作のものにするけれど、
僕は小説で、とことんまで君の幸せへの手立てを書き連ねるつもりだ。
どうか君に幸せになってほしい、
僕に初めての感想をくれた君に、なんとか幸せになってもらいたい、
君にたくさんの味方ができて、尊敬できる存在に囲まれて、
君自身も認められて、たくさんの手助けしてくれる存在が集まって、
そして、君はいつでも笑顔でいるべきだ。
美味しいものを食べて、自分の時間を持って、
お風呂はゆっくり入って、邪魔されず寝るべきだ。
そのことが侵害されているであろうことに、僕は怒りを覚える。
君は健やかに生きるべきだ。
なぜなら、君は僕に生きる意味をくれたからだ。
そして、なにより僕の読者だからだ。
僕の読者は幸せにならなくてはいけない。
僕がそう願うからだ。
君は一番最初に僕に感想をくれた読者だ。
だからこそ、誰よりも幸せな読者でなければいけない。
僕は君を幸せにする小説を書くと約束しよう。
君をモデルにした主人公が、
どんどん幸せになっていく物語を書いて、君にささげよう。
僕は売れない小説家だけど、
この幸せの小説が誰かの目に留まり、
主人公を読者の誰かが応援する時、
君のことも誰かが応援してくれていると思ってほしい。
君のことを応援する輪は、どんどん広がっていくはずだ。
僕はありったけの愛を注いで、
君をモデルとした小説を書こう。
君のつらい状況を変えてみせる。
言葉はなによりも強いと僕は感じている。
君のくれた感想が、それを証明してくれている。
虚空に投げ入れていた作品が、
君の感想で意味を持った感動を、僕は忘れない。
だから、今度書く物語は恩返しだ。
つらい思いをしてきた君に幸せを届けよう。
小説家の愛は、ちょっと重いんだよ。
まぁ、僕だけかもしれないけどね。
構想はすぐにでもできそうだ。
多分面白いほど筆が進むと思うよ。
少しだけ待っててほしいな。
最高の幸せをお届けすると約束しよう。
感想に舞い上がった売れない小説家より