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3通目 宇宙のどこかから誰かに宛てて

このシステムで僕の手紙を拾った誰かへ


懐かしいシステムを見つけたんで手紙を書くよ。

君はこのシステムのことをわかっているかはわかんないから、

とりあえずざっとシステムのこと。

君と僕が共有しているのは、

ボトルメールシステムっていう、古い時代のシステムだよ。

この、ボトルメールシステムは、

海というものに瓶に入れた手紙を流すように、

手紙がどこに届くかわからないシステムってわけ。

宇宙の果てから果てまで網羅していて、

広大な宇宙をボトルメールが流れていくってわけ。

君のところに海があればわかりやすいんだけど、

海がわからないと、説明するのも一苦労だね。

場合によっては水という概念から説明しないといけないし、

とにかく、この手紙が宇宙のどこかにいる君に届いて、

ボトルメールシステムで翻訳されて、

宇宙の果てにいる僕の言葉が届けばいいなと思うよ。


母星が大変なことになって、

移民がたくさん出て行って、

星で増えていったら、そこからまた移民が出て行って、

僕たちはこの広い宇宙でたくさんの植民地惑星で繁殖している。

コロニーなんかも開発されて、

宇宙船の技術は進化していって、

僕たちはどこにでも行けるようになった。

ボトルメールシステムは、その時代の遊びの名残。

たくさんの星にいる誰かとつながれるツールのシステムってわけ。

ただ、時々ボトルメールが宇宙を流れる際に、

時間軸が狂っちゃうこともあって、

多分データの長距離の転送が上手くいかないんだろうね。

それで、変な時代にボトルメールが飛んじゃうらしいけれど、

まぁ、解読できないならばそれでもいいし、

そもそも、大事な話にボトルメールは使わないよねってことで。


昔々、母星は大変だったと僕らは聞いている。

同じ星に生まれたのに憎しみ合っていたと聞いている。

僕も幼い頃はなんで同じ星でと思ったけれど、

今は星間戦争なんかがあると聞いているから、

移民になって歴史が経っても、

結局僕らの本質は変わらないのかもしれない。


ただね、僕は信じているんだ。

僕らの本質というものは、醜く汚いものだけじゃないって。

醜い側面だけを示して、

これが僕らの本質だという言葉を、

僕は信じていない。

誰かを思いやることも僕らの本質のうちのひとつだし、

誰かを大切に思ったり、愛したりすることもそうだと思う。

僕らという生き物は、たくさんの本質を抱えて、

複雑に絡み合いながら生きている。

一言で言い表されないもの、それが僕らの本質だろうと思う。

このボトルメールが届いた君がどう感じるかはわからないけれど、

もし、醜いものばかりが目に付くようならば、

僕のボトルメールを思い出して。

そして、宇宙の果てで、君のことを思っている僕のことを思い出して。

ボトルメールがどこに届くかはわからないけれど、

宇宙のどこかでこのボトルメールを読んでいる君に、

たくさんの幸せがあればいいなと思う。

夜という時間帯は、星がたくさん見えると聞くよ。

君がもし、夜という時間帯がある惑星の住人であったら、

たくさんの星を見上げてほしいな。

もしかしたら、その星の空のどこかに、

ボトルメールを流した僕の星があるかもしれない。

そして、その星から僕は君の幸せを願っている。

できれば、君の住んでいる場所に、

争いなんかが起きなくて、災害なんかも起きなくて、

平和に、ボトルメールのことを考えられればいいなと思うよ。


どこの誰とも知らない君へ。

もし、母星が穏やかになった情報が入ったら、

母星は今日も平和ですとボトルメールを流してもらえるかな。

そのボトルメールが移民星の誰かに届いたら、

きっとみんなが幸せになれるよ。

母星はね、地球って呼ばれているんだ。

僕たちは地球の子どもたち。

宇宙に散らばったたくさんの地球の子どもたち。

僕は、ボトルメールが届いた君も含めて、

すべての地球の子どもたちが幸せであることを祈っているよ。


さて、ボトルメールの容量的にはこんなものかな。

最後になるけれど、僕と君は永遠に会えないと思う。

もしかしたら、転送する際に時間軸もおかしくなっているかもしれないからね。

ただ、僕はボトルメールが誰かに届くことを信じているし、

このボトルメールにはたくさんの愛と祈りを詰めたつもりだよ。

君に幸せがあることを、僕は宇宙の果てから祈っているよ。

いっぱいの愛をこめて。


宇宙の果てのどこかの誰かより

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