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名もなき愛の手紙集
七海トモマル
文芸・その他ノンジャンル
2024年09月30日
公開日
67,854文字
連載中
誰ともわからない誰かから、
誰ともわからない誰かへ向けて、
心に満ちた愛をつづった手紙をイメージして書いた手紙集です。
この手紙は誰がモチーフということはありません。
あくまで、誰でもない誰かの、愛の手紙。
いろいろな愛をつづった手紙になります。
名前もない誰かの、誰かかもしれない誰かの、
心を込めた愛の手紙です。

1通目 憧れの先輩に宛てて

先輩へ。


先輩のことが大好きです。

好きを自覚したのは最近ですけれど、

ずっと前から先輩のことを意識していました。

先輩は部活でとても活躍されています。

私は、その他大勢の後輩の一人でしかありません。

先輩は輝いています。いつでも。いつでも。

その輝きに魅了された一人だと思ってください。


先輩が活躍するたびに、嬉しくなりますし、

先輩が苦しんでいると、なんとかしてあげたいと思います。

その他大勢の私では何もできませんが、

なんとか先輩のサポートをすべく、

雑用も裏方もこなしています。

便利に扱われているのならばそれでもかまわないです。

先輩が活躍できればそれでいいのです。


一度、雑用をこなしている私に、

先輩が声をかけてくれました。

無理すんなよ、と。

ああ、先輩は私のことも見てくれていたのだと、

その瞬間に先輩が特別になりました。

その特別が恋心になるのに、時間はかかりませんでした。

先輩は部活で輝く存在です。

私は雑用をするその他大勢です。

交わることはありません。

それでも、先輩の活躍を同じ部員として見られるのは、

私にとって特等席で先輩を見られるようなものです。

他のレギュラーのみんなと比べると遠いかもしれませんが、

あまりに先輩に近づきすぎると、

輝きで目がくらんでしまうかもしれません。


この手紙をしたためますのは、

噂を聞いたからです。

先輩は進学を目指していて、

進学先では勉学に集中すると。

部活はそろそろ引退して終わらせると。

そういう噂を聞いたからです。

輝く先輩がいなくなるようで、いてもたってもいられず、

手紙をしたためています。

しかし、私に何ができましょうか。

すべては先輩が決めたことです。

私は先輩の人生に何のかかわりもありません。

先輩が今後部活をしないのも、先輩が決めたことです。

ただ、私は悔しいのです。

あれほど輝いていた先輩が、

その他大勢になってしまうのが悔しいのです。

その他大勢は私のようなものがなるものです。

先輩は輝いていてほしいのです。

先輩は私の太陽です。

唯一の輝きです。

どうか、どうか、

お願いです、部活を辞めましても、輝きを失わないでください。

私に無理するなと気遣ったような、笑顔を浮かべ続けていてください。

勉学に励んでも、どうか健康でいてください。

心を病むようなことはなさらないでください。

悪い誘惑に乗らないでください。

それからそれから、

部活の日々を少しでも覚えていてください。

その他大勢の私はこれくらいの願いしかできません。

この手紙は、

恋人になる要望の手紙ではありません。

ただ、その他大勢だった私が、

輝く先輩に輝き続けてほしい、

そして、輝く先輩が大好きな、そんな気持ちをつづった手紙です。


どうか、進学なされても、輝き続けてください。

先輩ならはきっとどこでも輝けると信じています。

私は輝く先輩の恋心を抱いて、

もう少し季節を過ごしていこうと思います。

私のことは特定しないでください。

輝く先輩が近くにいては、

目がくらんでしまいますから。

きっといつまでも先輩は私の青春です。

輝く季節の太陽です。

そんな先輩のことが、きっとずっと、私は大好きです。

先輩に出会えて幸せでした。

その他大勢の後輩から、

たくさんの、愛をこめて。


とある後輩より

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