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第185話 私は主人公

主人公という言葉がどこからできたか思い出そうとする。

物語の主役という以前の意味として、

私の主人は私であるという意味だったと、

そんな意味のことをどこかで読んだ。

私の主人は私。

そのことをかみしめている。


私はとあるゲームの世界に転生した。

転生をつかさどる神様が気まぐれなのか、

私に何か役目があったのかはわからない。

転生はよくあることなのかもわからないし、

このゲームに転生している誰かがいるのかもよくわからない。

とにかくよくわからないなりに、

私はゲームの主人公に転生した。


ゲームは依頼などを達成しながら、

いろいろなキャラクターと交流を深めていって、

いろいろなイベントが起きていって、

良いエンディングを目指すものだ。

キャラクターと恋仲になるルートもあるし、

さまざまの良いエンディング、悪いエンディングがある。

私は転生する前にこのゲームを少しやった。

だいたいの流れは把握している。

ゲームとしての流れならば把握している。


私は、ゲームの主人公として転生した。

ゲームの攻略法を頭に入れた存在としてこの世界にいる。

ゲームの主人公だから、行動を起こせばフラグが立つ。

そのフラグも大体頭に入っている。

良いルートを行くのは問題がないように思われた。

けれど、それは違うと私は思った。

それはゲームの主人公が取る道であって、

私という意識が選ぶとは限らない。


その感覚は、生活をしていたらより強くなった。

ゲームの中に描かれていなかった、

みんなの生活がここにある。

キャラクターとされていた誰かも、

どこかで何かを食べているし、

ゲームには出てこなかった楽しみがあるし、

休む時はお気に入りの場所があるし、

一人になりたいときもある。

その、個人の日常と言うものが、

キャラクターごと、いや、すべての個人ごとにある。

ここはゲームの中かもしれないけれど、

すべての存在がそれぞれ生きている、ひとつの世界だ。

キャラクターとされてきた存在も、

一人の個人として生きている。

誰一人としてデータではない。

フラグをたてればそのようになるのかもしれないけれど、

そのフラグをたてることで起きるイベントには、

その個人がたくさん考えて判断した結果になる。

ここではみんなが生きている。

みんながみんなの人生の主人公だ。

私がゲームの攻略法などを持ち込むものではない。

私はこのゲームの主人公として転生したけれど、

そもそもこの世界では、みんながそれぞれの人生の主人公として精一杯生きている。

その生き様を尊重しなければいけない。

この世界は、この世界としてすでに成立していて、

決してデータではない。

私が主人公だからと荒らすものではない。


私は考えた。

この世界に転生した私は何をすべきだろうか。

主人公として転生してきたけれど、

主人公としては何をすべきか。

そもそも主人公とは何だろうか。

そんな時、ふと、私の主人は私だという言葉を思い出した。

誰に仕えるわけでもない。

私の主人は私。

私が思うことをするのが、私が主人であるということ。

ゲーム設定が私の主人であるわけではない。

ゲームの主人公だからと言って、

その設定が私の主人になるものでもない。

私は、私の人生の主人になる。

この世界でフラグとかルートとか関係なく、

みんなと心地いい世界を作りたい。

みんなそれぞれ物語を持っている。

ゲーム設定には出てこなかった、生きている彼らに触れられる。

この世界にともに生きるものとして、

力を合わせていい世界を作る。

それが私の選んだ道であり、

ゲームの主人公としてでなく、

私の主人として私が選んだ道だ。


私の主人は私。

その言葉をかみしめている。

フラグもルートもイベントもめちゃくちゃになった。

けれど、みんなそれぞれの人生を生きていて、

私もみんなと生きていてとても楽しい。

私はゲームに生かされているのではない。

私はこの世界でみんなと生きる道を選んだ。


私は主人公。

私の人生の主人公。

この世界でみんなと生きる、この人生の主人公だ。

ここはゲームではない。

私がやってきた新しい世界だ。


私はここで、私の人生の主人公として生きる。

それぞれの人生の主人公たちとともに。

この世界のみんなが主人公。

攻略法なんてないけれど、

本来人生とはこんなもの。

毎日が楽しい主人公の日常を生きている。

ゲームに転生した主人公も、生き方次第ではとても楽しいと感じている、

そんな今日この頃だ。

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