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第184話 守銭奴と呼ばれても

守銭奴と呼ばれてかなり長いこと経つ。

あいつは守銭奴だからと、

嫌な意味で言われるようになっていた。

あいつは金を出すのを嫌がるから、とか。

あいつは金にならないことはしない、とか。

あいつは金のことにしか興味がない、とか。

言われ続けて長いことが過ぎた。


私は金を貯めている。

どれだけ貯めても足りない。

金は極限まで使わない。

金は貯めなければ意味がない。

金にならないことはしない、当然だ。

ただ働きはそれだけで損だ。

感情で動くことは美徳なのだろうが、

美徳は金にならない。

とにかく金を貯めなければいけない。

そのためには何もかもが二の次だ。


皆と優先順位が違うだけなのだろうと思う。

皆は、人生を楽しむために金を稼いで金を使う。

金を使うことで楽しみを買う。

食事も金があってこそだし、

趣味も金があってこそだ。

金は人生を豊かにしてくれる。

言い換えれば、豊かにしてくれるものを金で買うわけだ。

そこを削れるだけ削れば、金は貯まる。

豊かな人生を過ごす皆からすれば、

そんな人生を生きて金を貯めてどうするんだと言われる。

金はあの世に持って行けないと言われる。

生きているうちに使ってこそだと言われる。

最終的には守銭奴と言われる。

守銭奴かもしれない。

そう呼ばれるのも当然かもしれない。

しかし、優先順位が違うんだ。


守銭奴と言われて長いこと経って、

私には友人が一人もいなくなった。

金のことしか興味のない私から、

みんな離れていった。

私から金を借りたい誰かが来たことがあったけれど、

そいつは追い返した。

あいつは情がないと言われた。

困っている誰かを助けないやつだと言われた。

そう言っている誰かは、私のことを助けてくれなかった。

頼るものは何一つなく、

私はただただ金を貯める。


私は、とうとう病に侵された。

金を集めることで健康に気をつかっていなかったから、

私の健康が尽きたのだろうと思った。

この時が来たと私は思った。

病に侵されては、これ以上金を集めることはできない。

金を集めるのは健康な時だけ、そう決めていた。

私は今まで集めてきた膨大な金を、

難病患者への治療に寄付した。

病で震える手で、端末を見て、

世界中の難病患者の助けを求める声を探す。

そのすべてを助けると決めていた。

金ならばいくらでもある。

そのために集めてきたんだ。

私の命のリミットが切れるときに、

全部使いきって、

難病で苦しむ患者をみんな救うと決めていたんだ。

一人の患者が救えれば、その手段を用いて他の患者が救えるかもしれない。

命がつながっていくはずだ。

苦しむ人を減らすんだ。

私が一人で守銭奴などと呼ばれることは些細なことだ。

私が病でこれから死ぬことなど些細なことだ。

集めたこの金で、すべての苦しむ人を救う。

難病の寄付でも使いきれなかったら、

孤児のために使おう。

それでも使いきれなかったら、

平和のために使おう。

子どもが笑える世界はいいものだ。

何の心配もなく、子どもが笑える世界がいい。

病気のことも心配せずに、

キラキラ笑える子どもが普通にいる世界がいい。

私の金は今この瞬間使うために貯めていた。


私の全財産は端末を介してすべて寄付された。

視界もぼやけてきて、

指も動かなくなってきた。

私の家は小さな部屋しかない。

家にあるものも必要最低限しかない。

家族もいない。

友人もいない。

知り合いなんてほとんどいない。

この家に訪れる人などいない。

私がここで死んでも、見つからないかもしれない。

白骨になってから身元不明として処理されるかもしれない。

今、私の肉体は限界かもしれない。

それでも私は希望を持っている。

私の寄付した金で、未来がよくなるという希望だ。

この時のために私は金を貯めていた。

希望を持って死ぬために貯めていた。

ああ、すべて使い切った。

金も、命も。

子どもたちの笑い声が聞こえるような気がする。

天使が笑っているようだと思う。

そんな未来に投資できたのならば、

私の人生も悪くないと思う。


私は、満足した。

素晴らしい人生だった。

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