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第179話 琴線はいい音がする

楽器を演奏できるほどの腕はないけれど、

楽器に触れる機会があったので、

試しに琴の弦をはじいてみた。

響くその音はとてもいい音で、

なるほど琴線というものは触れるだけで、こんなにいい音がするのだと、

言葉が体感として理解できたのを覚えている。


楽器の演奏は敷居が高いけれど、

楽器店に行って、ちょっとお試しで音を出してみたりする。

アンプの必要ないギターなども、

弦をはじいたらいい音がした。

音階を変えるところのおさえ方もわからないし、

複数の弦をどう奏でるかもわからない。

ただ、はじくといい音がする。

エレキの方のギターは、アンプをつなぐので音が大きい。

いろいろな機材を使って音を変えることができるらしい。

試しに音を出してみた。

いろいろな種類の音が出て、

あ、これは音色が変わったんだと感じた。

音の色で音色。

機材を使うと音の色が変わる。

音には色がある。

これもまた、音を出してみて体感できた。


木管楽器や金管楽器などは、

ものすごく練習しないと、そもそも音が出ないように感じるので、

お試しで音は出せない。

ドラムを試しに叩いてみたら、

軽く叩いたのに大きな音がした。

まるで爆発したようだとすら感じた。

よくよく考えたら、

他の楽器に負けないように、

多分アンプなどを使わないのだろうから、

音を大きくするのかもしれないと思う。

大きなホールのライブなどでは音を大きくするとしても、

小さなライブハウスにおいては、

ドラムはそのものの音で勝負しているのかもしれない。

それは、大きな音が出るはずだと思う。

ただ、楽器や演奏のことは全くわからないから、

見当違いのことを考えているかもしれない。

とにかくドラムは、軽く叩いても大きな音が出る。

演奏者の力一杯の演奏だったら、

どれだけの音が出るのか見当もつかない。


琴線をはじいてみたらいい音だと感じてから、

お試しで楽器をいろいろいじってみて、

ちょっと鳴らしてみては、なんかいいなと感じる。

また、小さな演奏会に行ってみては、

演奏というところまで行きついている人の生演奏を聴く。

なるほど、楽器は演奏というところまで行くと、

こんなにいい音になるのだなと思う。

チケットが楽に取れる程度のホールの演奏にも行ってみる。

たくさんの人を前にして堂々と演奏をするさまは、

ホールを支配するほどのプロであるなと思う。


琴線に触れるということは、いい音を鳴らすということ。

心地いい音色が生まれるということを転じて、

心地いい感覚を持つこと。

私はこれからどれほど琴線に触れるものを生み出せるだろうか。

楽器は元からダメではあるけれど、

琴線に触れるというのを身体で感じた。

あのような心地いい感覚を、楽器ではないところでも出したい。

演奏者が奏でるような自在な音色や、

ホールを支配するような堂々たる演奏。

演奏のプロと言えばそうなのだけど、

あんな風な、魂に響くような何かを作りたい。

身体の内側にある琴線に触れていい音を奏でるような、

そんな何かを作りたいと強く思う。


私は何で琴線に触れさせることができるだろうか。

初めて琴の弦に触れたときのような心地いい音を、

どうやったら誰かに感じてもらうことができるだろうか。

私の感動を感じて欲しい。

音色にたくさん触れてきて、たくさんいい音に触れて、

そのときに感じたような感動を与えるような存在になりたい。

私に何ができるだろうか。


ふと、私の中で琴の弦が鳴った気がした。

心地いい余韻を残す音は、

私の内側をどこまでも鳴り響いていく。

私は気が付く。

私の内側には広い世界がある。

琴の弦がどこまでも遠くまで鳴り響くほどの広い世界だ。

それは多分私自身の可能性だ。

私の中にはたくさんの可能性がある。

私は何でもできる。

私の外側の世界も広く、

私の内側の世界も同じくらい広い。

私はやろうと思えば何でもできる。

音色が響く感動を伝える術は、私がやろうと思えば何でもできる。


この広い世界に音楽は絶えない。

この感動をどうやって伝えよう。

何でもできる。どこにでも行ける。

私はだれかの琴線に触れるものを作りたい。

あの心地いい音を感じられるようなものを作りたい。


私は、あなたの琴線に触れたい。

そして、いい音を鳴らしたい。

私の感動を、あなたにも伝えたい。

あなたの世界にも、心地いい音を鳴らせるようなものを、

私は作りたい。

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