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第178話 切り札は自分の中

どんなに不利な状況でも、

私の中に切り札はある。


これはバトル。

オンラインの仮想空間、広がる世界で行われるバトル。

バトルをすることで名声が上がったりもするけれど、

基本はバトルをしたい者だけがバトルをしていくだけの、

バトルジャンキーのたまり場だ。

仮想空間のバトルは配信されていて、

バトルで勝ち続けているランキング上位同士のバトルなどは、

たくさんの視聴者がついたりもする。

そこに合わせて広告などもうたれて、

配信の広告収入がすごいとかどうとか。

バトルジャンキーはそんなことまでは考えないけれど、

仮想空間でバトルが続けられるのであれば、

広告だろうが配信だろうが勝手にやれというスタンスだ。

仮想空間のバトルジャンキーたちは、

ひりつくような戦いを望んでいる。


仮想空間のバトルにおいて、ある程度ルールがある。

ひとつは、装備のポイント制。

バトルとして作ったキャラクターの、

種族や年齢や筋力などに応じて、

装備できるものが違ったり限られたりしてくる。

装備するものは手持ちキャラクターの持ちポイントに合わせなければならない。

種族に合う装備であればポイントは少なく済む。

また、種族に合わない装備や、特別な効果のある装備はポイントを多く使う。

年齢が上に設定されているキャラクターは、

筋力を使う装備のポイントがあまり多くないので、重装備が持てない。

その分、特殊効果のある装備についてはポイントが少なく装備できるので、

技で戦うことが可能である。

また、魔法というシステムもあり、

これも魔法を装備するという形になる。

魔法のポイント内に魔法をおさめると、

火力の高い魔法などはたくさん入れられないことが多い。

それから、魔法の持ちポイントの高いキャラクターは、

防御のための装備や、武器などの装備にポイントが回しづらい特性もある。

バトルジャンキーたちは、自分だけのキャラクターを作り、育て、

仮想空間の世界で戦っている。

負けても失うものはないし、

勝ってもランキングが上がるだけだ。

損得なくただ戦いたいもの。

純粋な戦いを、みんなが待ち望んでいる。


私は軽装のアサシンを使っている。

装備は薄く、機動に特化している。

武器は苦無。投げるのでなく、とどめを刺すためのものだ。

私は最低限の装備だけで戦いに挑む。

装備にかけるポイントは少ない。

キャラクターの性能を育ててあげていき、

機動力に全振りして育て、

ポイントは切り札にほとんどすべてをかけている。


今回の相手は、魔術師だ。

おそらく魔法にポイントを使っている。

アサシンの機動で逃げ回っても、

広範囲の魔法を放たれ、それが着弾したら、

薄い防御のこの身体は持たないかもしれない。

ただ、広範囲の魔法というものは、大体隙間があるものだ。

追尾系の魔法はポイントを使うが、

あまりにも対象が早いと追尾しきれない。

私は魔法の傾向はそのあたりであろうと絞った。

おそらく直線の魔法は使ってこない。

囲み込む魔法は発動前に機動で逃げられると踏んでいる。

魔法で仕留められなかったら、距離を詰められて仕留められる。

ならば魔術師はどうするか。

魔術師は魔法の銃弾の攻撃を雨あられと降らせる。

魔術師に距離を置かせる作戦だ。

魔法の銃弾自体は大きくポイントを使わない、

発動までに間が少なく、一度発動すると銃弾の魔法が消えるまで降らせ続ける。

魔法の銃弾は地面に着弾して、砂埃を舞わせる。

魔法の銃弾の威力は低いが、

防御にポイントを回していないアサシンは近づけない。

威力がなくても致命傷だ。

多分距離を置いているその間に、機動でも避けられない魔法を撃ってくる。

この魔術師が魔法のポイントを使って持っているのはそれだ。

魔法の銃弾の砂ぼこりが落ち着きそうになって、

避けられないほどの魔法が出来上がったその瞬間、

私は切り札を発動させた。

装備のポイントをほとんど使って持っている特殊装備のスキル。

バトルの一度だけどんな技もキャンセルして無効にするスキルだ。

これが私の切り札だ。


魔術師の必殺の魔法はキャンセルされ、

私はアサシンの機動で魔術師の急所を苦無で攻撃する。

一撃必殺。

私はバトルに勝った。


仮想空間の世界は、バトルだけでなく、

さまざまの装備や魔法などを探すクエストもある。

無数のそれらを組み合わせて、バトルジャンキーはランキングトップを目指す。

私は私の切り札を見る。

とあるダンジョンで見つけたものだ。

道化師が笑っているその特殊装備は、ジョーカーという。

私はジョーカーと相性がいいようだ。


今日も仮想空間にはバトルジャンキーが集う。

私は切り札を携えて、バトルに挑む。

さて、今度はどんな相手だろうか。

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