どんなに不利な状況でも、
私の中に切り札はある。
これはバトル。
オンラインの仮想空間、広がる世界で行われるバトル。
バトルをすることで名声が上がったりもするけれど、
基本はバトルをしたい者だけがバトルをしていくだけの、
バトルジャンキーのたまり場だ。
仮想空間のバトルは配信されていて、
バトルで勝ち続けているランキング上位同士のバトルなどは、
たくさんの視聴者がついたりもする。
そこに合わせて広告などもうたれて、
配信の広告収入がすごいとかどうとか。
バトルジャンキーはそんなことまでは考えないけれど、
仮想空間でバトルが続けられるのであれば、
広告だろうが配信だろうが勝手にやれというスタンスだ。
仮想空間のバトルジャンキーたちは、
ひりつくような戦いを望んでいる。
仮想空間のバトルにおいて、ある程度ルールがある。
ひとつは、装備のポイント制。
バトルとして作ったキャラクターの、
種族や年齢や筋力などに応じて、
装備できるものが違ったり限られたりしてくる。
装備するものは手持ちキャラクターの持ちポイントに合わせなければならない。
種族に合う装備であればポイントは少なく済む。
また、種族に合わない装備や、特別な効果のある装備はポイントを多く使う。
年齢が上に設定されているキャラクターは、
筋力を使う装備のポイントがあまり多くないので、重装備が持てない。
その分、特殊効果のある装備についてはポイントが少なく装備できるので、
技で戦うことが可能である。
また、魔法というシステムもあり、
これも魔法を装備するという形になる。
魔法のポイント内に魔法をおさめると、
火力の高い魔法などはたくさん入れられないことが多い。
それから、魔法の持ちポイントの高いキャラクターは、
防御のための装備や、武器などの装備にポイントが回しづらい特性もある。
バトルジャンキーたちは、自分だけのキャラクターを作り、育て、
仮想空間の世界で戦っている。
負けても失うものはないし、
勝ってもランキングが上がるだけだ。
損得なくただ戦いたいもの。
純粋な戦いを、みんなが待ち望んでいる。
私は軽装のアサシンを使っている。
装備は薄く、機動に特化している。
武器は苦無。投げるのでなく、とどめを刺すためのものだ。
私は最低限の装備だけで戦いに挑む。
装備にかけるポイントは少ない。
キャラクターの性能を育ててあげていき、
機動力に全振りして育て、
ポイントは切り札にほとんどすべてをかけている。
今回の相手は、魔術師だ。
おそらく魔法にポイントを使っている。
アサシンの機動で逃げ回っても、
広範囲の魔法を放たれ、それが着弾したら、
薄い防御のこの身体は持たないかもしれない。
ただ、広範囲の魔法というものは、大体隙間があるものだ。
追尾系の魔法はポイントを使うが、
あまりにも対象が早いと追尾しきれない。
私は魔法の傾向はそのあたりであろうと絞った。
おそらく直線の魔法は使ってこない。
囲み込む魔法は発動前に機動で逃げられると踏んでいる。
魔法で仕留められなかったら、距離を詰められて仕留められる。
ならば魔術師はどうするか。
魔術師は魔法の銃弾の攻撃を雨あられと降らせる。
魔術師に距離を置かせる作戦だ。
魔法の銃弾自体は大きくポイントを使わない、
発動までに間が少なく、一度発動すると銃弾の魔法が消えるまで降らせ続ける。
魔法の銃弾は地面に着弾して、砂埃を舞わせる。
魔法の銃弾の威力は低いが、
防御にポイントを回していないアサシンは近づけない。
威力がなくても致命傷だ。
多分距離を置いているその間に、機動でも避けられない魔法を撃ってくる。
この魔術師が魔法のポイントを使って持っているのはそれだ。
魔法の銃弾の砂ぼこりが落ち着きそうになって、
避けられないほどの魔法が出来上がったその瞬間、
私は切り札を発動させた。
装備のポイントをほとんど使って持っている特殊装備のスキル。
バトルの一度だけどんな技もキャンセルして無効にするスキルだ。
これが私の切り札だ。
魔術師の必殺の魔法はキャンセルされ、
私はアサシンの機動で魔術師の急所を苦無で攻撃する。
一撃必殺。
私はバトルに勝った。
仮想空間の世界は、バトルだけでなく、
さまざまの装備や魔法などを探すクエストもある。
無数のそれらを組み合わせて、バトルジャンキーはランキングトップを目指す。
私は私の切り札を見る。
とあるダンジョンで見つけたものだ。
道化師が笑っているその特殊装備は、ジョーカーという。
私はジョーカーと相性がいいようだ。
今日も仮想空間にはバトルジャンキーが集う。
私は切り札を携えて、バトルに挑む。
さて、今度はどんな相手だろうか。